54 秘奥義 獣王転生
叫び声が聞こえたと同時にさくらが掛けた魅了が解かれた。
そして、それは姿を現す。サハギンジェネラルの優に二倍はあろうかというサハギンだった。サハギンキングLv88、ステータスは見えない。来なくて良いのに本命登場という所か、予定が狂ったな。
「やってくれたな。人魚どもめ、こざかしい。黙って従えば良いものを」
「お前がこの豚供の親玉か」
「フンッ、ヒューマン風情が何故ここに居る。ゴミめ」
「ハハハッ。そのゴミにやられた豚共の親分は塵って所か」
「驕るなよ。ゴミがー!」
がっ……心臓が絞めつけられる様な感覚が体を襲っている。威圧か何かのスキルだろう。他の奴らは大丈夫か周りを見た。後ろに居る人魚は駄目だな、うちのメンバーはぺん太以外ケロっとしている。
さくらが顔をペロペロしてくれてるお陰で、気分が落ち着いてきた。流石にこのレベル差はきつい。
ここまでの相手になるとリアルスキル舌先三寸は通用しないと思う。不味いな。
まだ、脚がガクガク、気合で平然としてる様に見せているが、先程の威圧をもう一度使われたら確実に心が折れると思う。折られる前に何とかせねば。
ふと、うさ子と目があった。うさ子に目であいつを
うさ子姐さんハンパねぇっす。任せて良いかと目で訴えると、コクコクしてきた。それではお言葉に甘え、
穏便に済ませたかったのだがしょうがない。ただ向こうの魔王に宣戦布告みたいになるのだよなぁ。一番望まない展開になってしまった……まぁ予定は未定と言うからな。
「おい、塵野郎。お前、誰に喧嘩売ってんのか分わかってのか」
「ゴミが何を言った所で何も変わらぬわ」
「まあ聞け、ここの人魚族は既に第十三魔王様の傘下に入った。他の勢力もこれから我らの傘下になるだろう。そしてお前の行為はクラークとか言う魔王が第十三魔王様への宣戦布告とみなす」
「ば、バカな。何故ここで第十三魔王が出てくる……」
サハギン軍団に動揺が走っている。後はこいつを始末して敗走させれば噂が広がるだろう。そうすれば他の勢力とも話易くなる。
なので、最終兵器投入。満を持して登場して頂こう。
「お前の様な塵野郎を
うさ子は無造作にテクテク歩いて行く。オイオイ大丈夫か? うさ子さん。いつもと同じ自然体。良く言えば全く気負った様子が無い。ですがうさ子なので何も考えていない様で不安。
「ガハハ! 笑わせるな。兎に何ができる!」
「キュッ!」
のひと声の後、うさ子の姿が消えた。
「ガハッ……」
「キュキュッ!」
うさ子の拳がサハギンキングの腹にめり込む。
「おのれ……兎ごときに本気を出さねばならぬとは」
「キュ?」
サハギンキングの周りに何かが集まっていく。
「うさ子! そいつに時間を与えてやる必要はない
「ぐっ、戦の流儀も知らぬ。愚か者が!」
「戦の流儀なんて言ってる自体、そのルールでしか戦えない雑魚なんだよ!」
「言わせておけば!」
どうやら奴の周り集まっているのは水の様だ。全部で十個の塊が奴の周りに浮き上がる。
うさ子もひとつギアを上げて攻撃してるが余りダメージを与えているようにみえない。良く見ると水の塊がうさ子の攻撃を防ぎ、他の塊が攻撃に転じている様だ。攻撃防御一体型の様だな。後は全自動かと言うところ。全自動なら男の浪漫だな。魔法かなそれともスキル?
「お嬢様の
アルファには何か見えてるのですかね。自分にはさっぱり。
「キュッ! キュッキュッ!」
おっ、うさ子が何かやる様だ。
「ほう。貴様も本気を出すだと、ほざけ!」
うさ子が一旦距離を取り短い手を必死に上に上げている。ラブリーです。段々うさ子の周りが揺らいできている。揺らぎは段々人の様な姿を取り初め、数はこちらも十程だ。
「こ、これは。ま、まさかラッシュラビット族に伝わる獣王光炎拳の秘奥義、獣王転生では! よもや使える者がいようとは……」
「ルーク様、獣王転生とは如何なるものでございましょうか? 不詳このアルファお嬢様の事であるにもかかわらず、今まで存じ上げておりませんでした」
「だろうね。今、俺が作った」
「……」
「なんかナレーションでも入れた方が盛り上がんね? って、ノリだよノリ。……アルファさんその剣仕舞おうね。ね?」
本当に、冗談のわからん奴だな、アルファは困ったさんだな。
そんな遣り取りの間にうさ子の周りに十体? 十人が姿を現す。
ムキムキマッチョ、イケメン野郎、渋メンがふたりずつにうさ子と同じ姿の兎が三体、ビキニアーマーのお姉さんが一人、って、ビ、ビキニアーマー! お友達になりたい!
しかし全員、うさミミ、うさ尻尾付きなんだが……。マッチョがうさミミ……尻にうさ尻尾……これ自主規制じゃね。ん? うさ尻尾。ビキニアーマーの下はハイレグorティーバック? にうさ尻尾どうなってるのかな。す、凄く興味がありまする。じゅるり。
あっ、ビキニアーマーお姉さんがお尻を手で隠した。何故だ? ん?どうしたイケメン、サムズアップして。ま、まさかやってくれるのか。ニヤリと笑うと歯がキラリンと光る。お、お前こそ真の勇者だ!
などとやってるうちに他の英霊? がハサギンキングに攻撃を加えていく。マッチョが攻撃、水の塊が防御に入る。しかしマッチョは気にせず黄金色のパンチを繰り出して水の塊を突き破り、サハギンキングの顔を粉砕し血しぶきが上がったかの様に見えたが、既の所で躱された様だ。
サハギンキングの右耳が無くなっているじゃないか。当たっていればKOだったんじゃねぇ? 惜しかったな。マッチョなウサギミミはニカッと笑いながらサムズアップして消えていった。どうやら必殺技みたいなのを使うと帰還のようだ。今度は渋メンとウサギ姿が攻撃に入るようだ。
そういや、勇者はどうなった……ビキニアーマーお姉さんに追いかけ回されている。お姉さんの鞘に入ったままの大剣で勇者の頭にクリーンヒット! あっ、勇者がウサギの姿に戻って
普通ならあれで即死ものじゃないか? しかし流石、勇者やられた振りをしていたのか、あるいは肉を切らせて骨を断ったのか知らないが、ビキニアーマーお姉さんが後ろを向いた瞬間、お姉さんのウサ尻尾を鷲摑みにした! そう、したんだよ……。
お姉さんが鞘から大剣を抜いたな……何をするつもりでしょうか? いや、まあ、わかるけどな……剣の周りに紫色の靄がまとわりつき始める。ま、まさかここで使う気ですか。勇者逃げてー!
轟音を上げたフルスイング。剣の腹で殴ったのは同族の情けか……勇者は遥か遠い彼方に光となって飛んで行いった。なむ、でも俺には満足そうな表情に見えたけどな。
結局、尻尾の所はどうなってたんだ、今度会ったら聞いてみよう。ビキニアーマーお姉さんが怖い目つきでこちらを睨みながら消えていった。
できれば、必殺技はサハギンキングに使ってもらいたかったな。
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