44 規格外の報酬

 只今、六三亭に居る。目の前にはマクモンさんとガレディアがエールを煽っている姿がある。


 毎度の事ながらうさ子は拉致され、目下強制アルバイ中。ぺん太も一緒にちやほやせれてご機嫌だ。さくらも拉致されそうになったが、人見知りな子なのでと死守した。六三亭の女将さんは油断も隙もありゃしない。



「それでどうなったんですか」


「決着はつけたさ」


「どんな風にですか」


「ウルガの息のかかった奴らの一掃だな」



 ギルドが一枚岩じゃ無いとか言ってた件だな、自分には関係ない。



「他には」


「領主様からふんだくったさ」



 という事は公認って事だ。



「報酬は」


「ギルドに来な、それよりそっちは問題無いんだろうね」


「生きる屍状態ですよ。マッドサイエンティストの実験台になってます」


「そうかい……死んじゃいないんだね」


「本人は殺してくれって神に祈ってるでしょうね」


「おいおい、それってどんなんだよ!」


「マクモンさん……世の中にはね、知らない方が良い事もあるんですよ。それでも知りたいですか」


「え、遠慮しとくぜ……」



 それから、他愛もない話をしていたら、隣の席の話し声が耳に入る。



「ねぇ聞いた。なんか新しい迷宮凄いらしーよ」


「聞いた聞いた。うちの男連中が行こうって煩いのよねぇ」


「今まであんなにアンデットは儲からないとか言ってたくせに」


「「「怪し過ぎる」」」



 フッフッフ……狙い通り。人の口には戸が立てられぬ。人間の心理を突いた見事な計略。その調子でどんどん広めるのだ。どんな事にせよ、関心を持ってもらえればこっちのものだ。



「どうした?」


「いえね、新しい迷宮の話知ってます?」


「そういえば帰り際にそんな話聞いたねぇ、どこからともなく急に広まったって」


「ほう。真偽の方はどうなんだ」


「まだ何とも言えないね。その迷宮から帰って来たってパーティーが見つからないらしいんだ。ハンターギルドでも情報集めに必死みたいだねぇ」



 思った以上に波紋が広がっているみたいだな。クックックッ……。


 結局、二人とは閉店時間まで飲んでいた。今回はセーブして飲んだので、酔ってはいるが問題ない。



「ウイックッ。うさこーかえるぞ~ヒック」



 大丈夫……大丈夫なはずだ。紆余曲折しながらも、何とか降魔神殿に帰り着いた。




「お帰りなさいませ。お嬢さま」



 あれれ、アルファが怖い顔をしていますよ。



「ルーク様には後ほどお話があります」



 目下、正座中。お嬢さま達をこんな時間まで連れまわすとは何事かって説教されている。何故に?



あるじ殿、そろそろ良いかの」



 救いの手が差し伸べられた。初めてオールを褒めてやりたいと思った。実際には褒めないけどな。



「それでは行きますかのう」



 と言った時には風景が変わっていた。暗いので良くわからないが転移広場の近くの様で、転移ゲートが五つ見える。早速ゲートに登録しておく。



「この後はどうしますかのう」



 他にも行ける所がないか聞いてみたが、ほとんどが滅んだか名前が変わったかして転移できないそうだ。港街イーリルには行けるみたいなので同じ様に連れて行ってもらった。


 観光は明日だな。帰って寝よう。さくらの部屋のベッドで皆一緒に寝た。


 朝起きると、アルファがまた怖い顔をしてる。お、俺何かしたか? どうやらさくら達のベットで寝たのが気にいらないみたいだ。


 後で自分用のベットを入れるからと言ったら、部屋も別にしろと言ってきた。流石にこれにはさくらが難色を示したので、渋々認めてくれたようだ。なんか、アルファにとっての俺の立場が解せぬな。



 朝食後にルグージュの街にみんなで移動。


 こんちゃんに今から行くと連絡を入れてから、お店の方に行く。今日は狸親父はいないなっと、嫌いな訳ではないが苦手意識を持ってしまったのはしょうがないと思う……。



「いらっしゃいませー」


「ミャー」


「キュッ」


「クェッ」


「こんちはー」



 皆、常連客気分。


 こんちゃんが皆とスキンシップを取ってる間、【優雅高妙】の皆が王都に向かった話す。



「ルークくんはどうして一緒に行かなかったの?」


「まだ、始めたばかりですからね。王都はまだ早いですよ」


「私は修行が終われば行きたいなぁ」


「やっぱりお店を持つなら王都ですか?」


「うーん。どうかな。まだこれから解放される街もあるしね」


「ひなさん達がクランを創りたいのは、知ってるんですよね?」


「それも含めてかな」



 スキンシップに満足したみたいで精算してくれる。


 こないだ話したアクセサリーは、さくらにピンクのリボン 魅了(微)、うさ子には淡いピンクレース地のショールで花びら舞のショール 回避率上昇(微)、ぺん太にはうさ子の赤いリボンをその場で加工してくれて赤い蝶ネクタイ 火耐性(中)にしてくれた。


 皆、似合ってるよ。親バカではないぞ。事実だ。


 お金は精算の時に引いてると言って受け取ってくれなかった。何かお礼を考えないといけないな。皆でお礼を言ってお店を出た。



 このメンバーで情報ギルドに行くか迷ったが、一抹の不安を抱えたまま結局来てしまった。こちらに気付いた受付嬢さんがどこかに走って行き、その後すぐ秘書のレミカさんがやってきた。



「ルーク様、お待ちしていました。こちらへどうぞ」



 どこぞのVIPみたいでワル目立ち。人が少なくて良かったな。



「ギルマスは、只今外出中ですが話は伺っております」


「ギルマス?」


「聞いていませんか。ガレディア様がこの度、就任されました」


「捕り物をやったのは聞いてるよ」


「はい。私どもの上層部及びハンターギルドの方でも十名程、拘束しました」



 結構大きな捕り物だった様でこの後、領主が重い腰を上げて動きアジトの捜索を行ったらしい。地下牢に囚われてた人達はギルド職員の人質が多くで、何に使おうとしていたか知らないが重犯罪者も混じっていたそうだ。解放しなくて良かったな。


 多くの手下は捕まったが、主犯の息子が見つからなかった領主はウルガと見つかっていない手下に、法外な懸賞金を掛け追っているそうだ。まあ、見つかる事は絶対に無いがね。


 領主は火消し活動も相当おこなってる様で、今回の件に関しても全くノータッチと言う訳ではなさそうだ。良き領主にも裏の顔と言うところだろう。法外な懸賞金を掛けた事から、人には知られると不味い事でもやらせていたのかもしれない。オールに言って調べさせるか?



「こちらが今回の報酬になります」



 寄こしたのは金貨五十枚と土地購入権利書(辺境伯署名入り)レア。金貨五十枚は口止め料込だろう。



「土地購入権利書ってなんですか?」


「ギルマスが領主様にお願いして書いて頂いたそうです」


「ガレディアが?」


「はい。その権利書があれば、この王国内の商業ギルドで売り出している土地を購入する事ができます」



 ゲーム内で自分の土地を購入するには一定の条件をクリアしないと購入できない。この権利書を持っていると条件に関係ない上、制限も無いそうだ。買おうと思えばお城や砦迄買えると言う。



「その上、販売価格の十分の一の値段で購入可能です」



 どうやら差額はここの領主が払うみたいだ。何書かせてんのガレディア……。高かければ高い程領主の首が締まるって訳だ。ふむ、面白い。


 特に用件も無いので報酬を貰いお暇した。


 さぁ王都観光に出発だ。



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