45 クラン【シャングリラ】
やって来ました。王都。
昨日の夜は暗くてわからなかったが遠くにお城が見える。あそこに城が見えるってどんだけ広いんだ。誰か観光案内所紹介してくれ。
取り敢えず、適当に歩いてみよう。ぐるっと見渡すと王都も転移広場は中心部にあるようだ。ルグージュもそうだが、北側が貴族街でその先にお城がある。
北側には全く興味が無いのでそれ以外に行こう。情報収集するのに大通りを目指すかな。
大通りはすぐ見つかった。王都の中心に十字に走っている。道幅はルグージュの倍近くあり、城壁の正門から丘の上にあるお城まで一直線に続いる。
いやー絶景かな絶景かな。VRならではのリアルより本物らしい景色。通りにはプレイヤーもちらほら見える。プレイヤーが少ないのではなく王都の住人が多いのだ。さくらにうさ子、背中のぺん太は人の多さに驚いている。
現在このサーバーには四万人近いプレイヤーが居る。特に今の時間帯が一番多いはず、少なくとも半分以上がログインしてるはずだ。
他の街に居る人、外で狩りをしている人もいるだろう。今この王都にどの位のプレイヤーが居るのだろうか? などと考えながら十字路の真ん中にある広場に着いた。
屋台が並んでいるので覗いて見る。サンドイッチに麺類に串焼きどれも美味しそう。揚げパンとスープに串焼きを買ってテーブルに座る。
うさ子にこないだ買った野菜を自分のストレージから、ウサギポケットに移してやる。うさ子の目が輝いている。早速ムシャムシャ食べ始めた。串焼きに付いたタレをスープで落としぺん太に与えると、毎度の如く丸呑みにする。味わって食えよ。
さくらにはペン太にあげたお肉の切れ端を、更に細かく切って皿にのせてあげた。美味しそうにハムハム食べてる。食べてる姿も可愛いなぁ。
自分はスープに揚げパンを浸して食べる。スープ本来の味に串焼きのタレも相成って良い味になっている。
「ねぇ、貴方ってテイマーなの?」
一人のプレイヤーが声を掛けてきた。
「正確には違いますよ」
「でもその子達テイムモンスターよね」
「そうですけど、テイマーって職には付いていないです」
「え? 三匹も連れてるのに違うの」
「違いますよ。鑑定持ってないですか」
「ごめん、持ってない」
この女性プレイヤーはパステルさんと言って、王都を拠点にしているクラン【シャングリラ】に所属しているテイマーだそうだ。
「時間があるならクランに来ない?」
「クランに入る気は無いですよ」
「
多少強引ではあったがついて行く事にする。クランの場所は東地区の端っこにあり、塀で覆われていて結構広い敷地の様だ。
「たっだいまー」
「「「おかえりー」」」
モフモフです。モフモフ王国ですよ!
犬、狼、猫、兎、狐、大きいネズミ? 子グマ? 白い狸? 色々居る。
「そっちの子、勧誘してきたの?」
「違うの。たまたま、広場で見つけて声掛けた」
「逆ナン?」
「違うから」
「それより見てこの子達、凄いチャーミングなの」
またこのパターンですか……どうぞ好きにして下さい。うさ子任せたぞ。一歩後ろにさがり、身構えてるさくらを守る態勢をとる。
あっという間に、うさ子とペン太は波に攫われて行った……。
「すまないねぇ。うちのメンバーが」
おっ!? 全く気付かなかった。見知らぬ女性プレイヤーが横に居る。気配遮断の高レベルか上位か? 鑑定でステータスも見れない。隠蔽系もかなりの高レベルのようだ。
「その子も凄く可愛いね。抱かしてもらえないかな?」
「さくらどう?」
「ミャー」
良い様なので目の前の女性プレイヤーにさくらを渡す。
「君はほんとに可愛いな。ラブリーキティか何の幼生体なんだろうな」
魔王ですよ。ラブリーキティがわかったと言う事は鑑定持ちでもあるらしい。
「自己紹介がまだだったね。私はシャングリラのクランマスターをしている
「ルークって言います。その子はさくら、向こうにいるのがうさ子とペン太です」
「さくらとぺん太はどうやってテイムしたのか聞いても良いかい」
「構いませんよ。ぺん太はボスの初回撃破報酬で貰ったモンスターの卵から産まれました。さくらはクエストの途中で自分の所に来ました」
「成程、ボスの初回撃破報酬とクエスト絡みか……どこかな」
「まぁ、教えても良いですけどね。ルグージュの墓地のボスと迷宮死者の都ですよ」
「どちらも行った事がないな」
「どちらもアンデットだし、死者の都は最近開放されたばかりですから」
折角なので更紗さんに対しても広報活動をしておいた。
「良い話を聞かせてもらった。こちらも何かお礼がしたいんだが」
「なら、スキル屋って知ってます?」
「ほう。それを知ってるという事は資格を持ってるという事かな」
「えぇまぁ。そういう事です」
「うちのクランでも資格持ちは少ないんだがな……どこでと聞くのは流石にマナー違反かな」
更紗さんは流石クランマスター。花も実もある、話の持っていき方が上手い。別に隠す事でもないので教える事にする。
「死者の都のボス討伐報酬ですよ」
「と、言う事は既に討伐済みなのだね」
「ソロじゃないですよ。知り合いのパーティーと一緒でした」
「ふむ。……西地区の商店街から一本入った裏道にある」
「えっ」
「だが、高いぞ。正直スキルを買う位なら装備を整えた方が効果的だ。シャングリラに入れば、効果的なスキル修得法も教える事ができるしな」
「パステルさんにも言いましたが、今の所クランに入る気は無いです」
「それは残念だ。しかし、たまにここに遊びに来るのは構わないだろ? 今は居いが男性プレイヤーも結構いるんだぞ」
「お邪魔じゃなければ」
「テイマーは大歓迎だよ」
この後は更紗さんとモフモフ談義に花を咲かせ、途中でうさ子とぺん太が逃亡して来た時に逃げる様にお暇した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます