39 クリスタル

 さて、こいつらはどうしようか? 処分するにしてもここでは不味いよな?


 んー? ここじゃなければどこが良い?


 色々考え取り敢えず、ここから移動させるかと思い転移魔法を使おうとすると転移場所が増えている。


 ぐっどたいみんぐぅ。



「ちょっとここ離れるけど、よろしくな」


「キュッ?」


「みゃ~?」


「ちょっと降魔神殿行ってくる」



 ぺん太の入ったリュックを置き、倒れてる連中を意識して転移すると一瞬で降魔神殿に到着。



「オール、いるかー」



 オールとイルカ……ぷぷっ。



「何事かなあるじ殿?」


「転移ゲートできたんだ」


「うむ。先程な」


「有言実行、流石二百年掛けて事を成しただけはある」


「そこまで言われると照れるのう」



 褒めてねーよ。皮肉だよ。



「そんなオールにお土産をやろうと思う」


「お土産とな?」


「そう。この転がってる奴ら好きにして良いぞ」


「ほう。如何様にしても良いと?」


「喰っても良し、実験台にしても良し、お好きにどうぞ」


「それは痛み入りますのう」


「じゃそう言う事で」



 今度は、転移ゲートを使いルグージュの街に戻った。


 情報ギルドに寄ると、真夜中だというのに待っていてくれた様だ。マクモンさんは一旦家に戻った様だが、ガレディアと秘書さんは残っていた。


 事情を説明してこれからどうするか指示を仰ぐ。


 やはり情報ギルドは手が出せないと言われ、牢屋にいる人もそのままにする事になった。仕方が無い、どこぞの誰とも知らない人の為に危ない橋は渡れない。場所が貴族街なだけに衛兵でも迂闊に調べる事ができないらし。


 取り敢えず、彼女を連れて来ると言って近場の下水道の入口から最短ルートで戻った。


 さっきと何も変わって無い。まだ、誰にも気付かれていないようだ。レイアリーサさんに、もう一度ポーション飲ませヒールを掛ける。余り効果が無い。早く連れて行った方が良さそうだ。


 このまま下水道を戻るより転移した方が早いし安全なのでMPポーションを飲み転移する。転移ゲート広場から彼女を抱え情報ギルドまで走る。


 情報ギルドの裏口でレイアリーサさんをガレディアに渡した。


 彼女を渡しその姿を見た時のガレディアは玉玉が縮みあがった程怖かった。


 秘書さんに命に別状が無い迄には回復させたが、これ以上は自分では無理と伝える。秘書さんは何度もお礼を言ってくれたが、レイアリーサさんの方を優先して下さいと言って自分達はこの場を去った。


 天の声インフォが聞こえた。



『クエスト情報ギルドの受付嬢レイアリーサを救えをクリアしました』



 あんな辛い思いさせる前に救出してあげたかった。傷跡残らないと良いけどなぁ。



 さぁそろそろ自分もログアウトしよう。


 ん? どうしたうさ子? 何か必死にゼスチャーをして訴えてる?



「キュキュッ! キュッキュ!」



 今回は全くわかりません。



「また今度な。うさ子」



 ログアウトしようとするとポカポカ叩いてくる。なんだろう? 言葉がわからないからどうしようもない。ん? 言葉がわからない?


 魔倉の指輪のMPを使い降魔神殿に転移する。



「また何かありましたかのう?」


「丁度良かった! うさ子の話を聞いてくれ」


「うさ子殿のですかのう?」


「キュッ!キュキュッ!キューキュ」


「フムフム。成程、それは困りましたのう」


「なんて言ってるんだ?」


あるじ殿が帰られると置いていかれるので、困ると言っておりますのう」


「どういう事だ? ログアウトすると一緒にデータ管理されるはずだろう?」


「キュキュッ、キュッ!」


「それは魔王様と会う前の話で、魔王様とうさ子殿は置いていかれると言っておるのう」


「マジすっか? 運営さん呼ぶか……」


「キュキュッ!」


「それはやめてほしいと言っとるのう」


「何ででしょう?」


「それは我でもわかるのう。運営さんというのが何者か知らんが、この世界の管理者関係の者であろう? 我らとは全く逆の存在じゃてのう、その者達に体だけでなく意識までもが管理されるのは如何なものかと」


「キュッ!」



 じゃあどうすれば良いんだ? うむ。



「ここに魔王様とうさ子殿の部屋を作れば良いと思うがのう?」



 転移ゲートを作った様に魔力を使って作れるらしい。



「そういえば、魔力ってさくらの魔力じゃ駄目なのか?」


「駄目ではないが還元率が10%じゃな。エナジーコアでも可能じゃのう」


「試しにやってみようぜ」



 さくらの魔力は無限、上手くいったら儲けものだ。



 部屋の中央に、クリスタルの様な物が浮かんだ場所に連れてこられた。



「そのクリスタルに触れて魔力を流せば吸収されるのう」


「さくらお願いできる?」


「ミャー」



 さくらをクリスタルに近づけると、さくらが前足をクリスタルに触れさせた……。



「みゃ? ミュミャ~」



 どうやら魔力を流してる様だ。



「ミャッ! ミャミャミャ! ミャー!」



 何か変だ。あれ? 前足が離れないのか?



「さくら、魔力を流すの止めるんだ!」


「ミャー! みゃ~」



 止められないみたいだ!?



「オール! どーすんだ! これ!」


「強引に外せば良いだけじゃのう」



 マジっすか? 何てアナログな方法。


 さくらの前足に自分の両手を添えて引っ張った。ポシュッと気の抜けた音がしてさくらの前足がクリスタルから外れる。



「みゃ~」



 さくらがぐったりとしている。ステータスに異常はないので精神的疲労なのかも知れない。頑張ったご褒美にイチゴをあげよう。



「流石魔王様ですのう、たった一度で五万も溜まりましたのう」



 さくらが疲れる訳だ。一度に五十万のMPを消費した事になる。


 ついでに、ガシャドクロとシェイドのエナジーコア三つをクリスタルに吸収させたが、合わせてハ百にしかならなかった。


 オールにクリスタルの使い方を教わり、さくらとうさ子の部屋を作ってみた。何も無いがらんとした空洞。これではさくらとうさ子が可哀そうなので、オールに家具がないか尋ねたが机や椅子くらいはあるがベッドなどは無いと言われた。


 まあ、アンデットは寝ないから仕方がないな。


 困っているとオールからそれらもクリスタルから出せば良いと言われる。そう言う事は早く言え!


 クリスタルをいじっていると色々な日用品の他、武器や防具、アイテムなどもクリスタルから出せる事がわかった。迷宮の宝箱の中身はここから供給されているとオールが言ってる。


 もっと良い物は出せないか聞くと、クリスタルは迷宮のランクによって変化するらしく迷宮のランクを上げるか、ランクをあげるアイテムを使うしかないそうだ。


 因みに死者の都はオールの暴挙実行の為に運営に力を入れてこなかった為、迷宮のランクは低いらしい……。


 オール、使えない子。


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