38 潜入そして救出
こんにちわルークです。現在、南地区十五番街に来ています。ってどこぞのリポーターか!
時間は夕方。スラムは街頭も無いし、家なども乱雑に建てられているので全体的に薄暗い。追ってがまかれた場所に来ているが全く手掛かり無し。じっちゃんの鼻に掛けて探偵か、見た目は大人、頭脳は子供探偵が居て欲しい。
困ったね。
「にーちゃん! 探しものか?」
どうやらスラムの子供の様だ。ふむ。その手があるな。
「君はこの辺りに詳しいかい?」
「あったりまえだろ。ここいらはおいら達の縄張りだぜ!」
「最近、この辺で普段見かけない奴らが居なかったか?」
「うーん? おいらは知らないけど仲間なら何か知ってるかも」
「調べてくれないか?」
「良いけど……さぁ」
「何が欲しい?」
良いね、目つきが変わったな。人を見てホーホケキョ……もとい、人を見て法を説けとは良く言ったものだな。
「食い物が欲しい!」
「良いぞ。良い情報なら多めにやるぞ」
「わかった。すぐ集めてくる」
そう言って走って行ってしまった。待つ間、する事も無いのでうさ子をブラッシングしたり、さくらとぺん太と戯れている。
三十分程経った頃、子供達の集団がやって来た。
「にーちゃん、集めてきたぞ!」
そう言う事らしい。集まって来た子供達にアメ玉を配り、最近のこの辺りの事を聞いてみる。やはり知らない男達が頻繁に出入りしている事が判明した。スラムは横の繋がりが強いのでそういう人間が来るとすぐにわかるらしい。
男達は壁際にある下水道に出入りしている事もわかった。今日も大きな袋を担いだ男達が下水道に入って行くのを目撃した子もいた。
ビンゴ! だな。
子供達にその下水道の入口まで案内してもらい、お礼に大量の野菜と果物にパンなどを渡した。
「毎度あり!」
子供達はホクホク顔で帰って行ったが、若干一名? 羽? 恨めしそうにこちらを見ている兎が居る。
「また買ってあげるから! そういう目をしない!」
下水道の入口付近に確かに複数の真新しい足跡がある。この足跡を辿って行くしかない様だ。中に入ると真っ暗の上、臭い。まあ、下水道だから仕方がない。
「ミャッ!」
「クエッ!」
さくらは俺のコートのフードに、ぺん太はうさ子のリュックの中に潜り込む。うさ子は必死に自分に向けゼスチャーをしている。
四角? 長い? 白い? 顔をゴシゴシ。うさ子タオルですか? 正解の様だ。
タオルを渡すと顔の前に持ってきて何やら必死に頭の後ろに手を回そうとしているが、いかせん手が短いので届かない。仕方が無いのでうさ子の後ろに周り、目から下をタオルで覆い後ろで結んであげた。見てて飽きないが、時間がもったいない。
「うさ子が前を頼む、ぺん太とリュックは俺が背うから」
「キュキュッ!」
怪しい人装備に変更し夕映えの杖を持つ。ライトを唱え視界を確保。うさ子の超感覚があれば自分の気配察知は必要ないだろ、迷わない様にマップの確認に重点をおいた。
途中何度か小物モンスターに遭遇したりしたが、うさ子の威圧で逃げて行く。一番困ったのが途中足跡が消えている所がありマップを頼りに探しまわった。何度か休憩を入れながら探索しているが、既に三時間近く経っている。
相手が用心深いのか、只単に迷ったのか知れないが、行ったり来たりとしている。が、間違いなく北の方貴族街に向かっている様だ。
それからさらに二時間歩きまわった……。
そして目の前に怪しいすぎる扉があり、足跡はここで消えている。ここで間違いないだろう。こう言う時スカウトがいないと不便だな。鍵掛っていて開かない。
「ミャー!」
ん? どうしたさくら? さくらがフードから出てきて扉の方に行きたがっている。爪でも研ぎたいのかな?
試しにさくらを扉に近づけるとガチャと音がした。マジっすか……。
「ミャミャ~!」
さくらがどや顔をしている。どや顔しても可愛いけどね。
扉をゆっくり開けてみる。開いた、猫魔法だろうか? こうやって猫は他人の家に入り込むんだな。謎が解けた。
中に入り少し進むと、通路の奥にまた扉がある。扉に耳を近ずけ、向こうの気配を探る。気配察知に微弱な反応がある。そーっと、扉を開け中を伺うと両サイドが牢屋になっていた。中に人がいる様だが、寝ているみたいだ。
気付かれない様に牢屋の中を確認しながら移動していく。残念ながらレイアリーサさんは居なかった。更に奥には上と下にいく階段があり、下にいく事にする。
下に降りると扉があり扉の向こうから何かを叩く音と声が聞こえてくる。
「お前が言う事を聞かないからこうなるんだ!」
ビシッ!
「……」
「こんなにお前を愛しているのに何故わからない!」
ビシッ!
「……」
嫌な予感しかしない……中の状況がわからないが、行かないと不味いと思う。うさ子に耳元で小さい声で打ち合わせをする。
「うさ子。中に突っ込むぞ。俺がフラッシュバーストで奴らの目を奪うからその後頼む」
うさ子はコクコクと頷いてくれた。
勢いを付けて扉を開け、中にいた奴らが一斉にこちらを見た瞬間。フラッシュバースト!
「「「「め、目が!」」」」
「畜生! 何が起こった!」
「何も見えね!」
など騒いでいたのは、ほんの数秒。
ドカッ、バキッ、ガツッ、グガッだの声や音が聞こえるが俺には何も見えない。どうやらあの光の中に飛び込んで攻撃してる様だ。うさ子、恐ろしい子。
光が収まるとそこには死屍累々。うさ子、《殺》やっちゃった?
そんな事はどうでも良い、壁に両手両足を縛られ張り付け状態のレイアリーサさんが居る。酷い状態だ……体中ムチで打たれたのであろう、皮膚が裂けている所が多数あり、あれだけ綺麗だった顔も殴られ腫れあがっている。
正直、生きてるのが不思議なくらいだ。
手足の拘束を解き毛布でくるみ横たえる。ポーションを飲ませようとしたが無理だったので、一度自分がポーションを煽り口移しで何とか飲ませた。さらにヒールも掛ける。さくらもレイアリーサさんの顔をペロペロしてくれている。優しい子だ。
何度かポーションとヒールを繰り返すとレイアリーサさんが気がついた様で、か細い消え入りそうな声で
「ここは……?」
「もう大丈夫。今は休みなさい」
「……(コクン)……」
そしてまた、目を閉じた。
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