31 魔王降臨

『エマージェンシー。本日、infinity world内において第13魔王を確認。グランドクエスト 12の魔王が解放されます』





 とある魔王城。



「13番目の魔王だと何者だ? 古来より魔王は12の決まり、邪神の介入か? いずれにせよ時が動くか……」



 とある森。



「ガハハハ! そうか13魔王か楽しくなってきたぜ。思いっきりりあえれば良いがな。ガハハハ!」



 とある湖にある洋館。



「どういう事なの! 誰か説明しなさい! わからない? この役立たず! 早く調べて説明なさい! わかるまで帰って来なくて良くてよ!」



 とある塔の上。



「13番目の魔王ですか面白い。他の魔王はどう動くでしょうかね? 接触だけでも試みましょうか。この詰まらない日々が終われば良いのですが……」



 こうして時が動き始め、それぞれの魔王の思惑が交差し始める。


 ルーク達の運命と交差するのは、まだ先の話。






 う~ん。死に戻ってない。まだ魔法陣の中に居る。


 そして倒れている自分の目の前に子猫がいる。


 生後一、二ヶ月位かな?


 凄く可愛い、あの子そっくりだ……ん?



「さくら……」


「ミャー」


「1+2は?」


「ミャ!」


「さくら!」



 起き上がって子猫を抱き上げる。見紛う事なき、さくらだ!


 あれ? 目に水が溜まって良く見えないや……そんな自分の顔を子猫はペロペロ舐めてくれている。



「本当にさくらなんだよね?」


「ミャー!」


「さくら! 最高にぷりちーだよ!」



『条件をクリアしましたので、第13魔王は魔王(笑)にクラスチェンジしました』



 運営さん……魔王(笑)て職業なのですか……?



 そういえば、皆はどうなった?


 さくらを抱いたまま周りを見渡すと、敵味方関係なく自分の方を凝視している。


 リッチロードが我にかえった様で、フラフラとこちらに歩いて来る。ローブを着た骸骨がフラフラと歩いてくる姿、怖いな。



「おぉ……わ、我らが宿願。ま、魔王様」



 周りにいたリッチ達は跪き、リッチロードは涙を流してこちらに歩いて来る。骸骨から涙って……マジ怖ぇ。


 さくらは気にした様子もなく、俺の顔を舐めるのを辞め、こんどは顔にスリスリしてくる。


 リッチロードは自分の前に跪き、しゃがれた声で話しかけてきた。俺というよりさくらにか?



「お初にお目にかかります。魔王様におかれましては…………」



 なんか言ってますよ? さくらさん。さくらは全く気付いて無い。哀れ骸骨。


 仕方がないのでさくらを背中の方からホールドして、リッチロードの方を向かせてやる。



「ミャッ! ミャミャミャー!」



 こら、さくら暴れ……目の前を眩しい光が通りすぎた。



「ぶへっらっ!?」



 見事なドロップキック。リッチロードが飛んで行く、首が変な方向を向きながら……。


 う、うさ子なにやってんの……かな?



「キュキュッ!」


「ミャッ! ミャー」


「ま、まてい! それはならん! 魔王様を召喚したのは我ぞ!……って、我で無ければ死んでるぞ……」



 いやいや、リッチロード。お前既に死んでるからね! アンデットなんだから!


 しかし、あの二言三言の間にどんな遣り取りがあったんだ? きゅとかみゃしか言ってないぞ?



「キュキュ。キュッ!」


「だからそれでは、道理が通らんでは無いか! それにおぬし、あの者にテイムお前されておるのであろう」



 ど、道理ってリッチロードのお前が言うか……不道理の塊のお前が……。



「キュッキュ?」


「便宜上そうなっておるだけじゃと? 本来は主従の関係ではなく逆に保護者とな。全く問題ないから道理的に言えば我より上じゃと申すか……」



 保護されてたんですね……。


 しかし、きゅっきゅの中にあれだけの意味が込められているとは。ファンタジーだな。



「……仕方がない。おぬしの言う通り魔王様に決めて頂こう」



 知らないうちに話が纏まっていた様だ。



「キュキュッ!」


「魔王様。お願い致します」


「ミャッ!」



 さくらが飛び出したと思ったら、うさ子の頭に肉球パンチをくらわせていた。



『条件をクリアしました。強制クラス進化します』



 おー! うさ子が光に包まれていく。


 光が収縮すると……うさ子? が居た。ふむ。少し毛艶が良くなったか?


 鑑定してみると、種族名がプラチナガントレットラビットと変化している。凶悪の一言。なので以下略。ガクブル……。これからはうさ子様いや、ザ・うさ子とお呼びしたほうが宜しいでしょうか?



 さくらはぴょんと飛んでリッチロードの頭に移り、また肉球パンチをくらわせた。



『条件をクリアしました。強制クラス進化します』


『死者の都が魔王(笑)の傘下に入りました』



 リッチロードがリッチキングになっている。



「むむぅ。魔王様がお決めになった事なれば致し方ない」



 リッチキングが再び目の前のさくらに跪き



「死者の都を治める。オールと申す。これより魔王様の二の臣として忠誠を誓いますれば、我ら一同如何様にもお使い下され」


「ミャミャ」


「ははっ……ありがたきお言葉、このオール粉骨砕身の思いでお仕え致しますぞ」



 ふ、粉骨砕身……骨だけにね……ぷぷっ。彼奴こやつ、できる! できるぞ! なんて恐ろしい奴だ。


 そのオールが自分の前に来た。


 なんだ、やろうってのか。こっちとら現役のOYAJIGGおやじギャグ使いだぜ、猫が寝込んだ! うむ。校長は絶好調! かかってきーや。



「貴殿が魔王様のあるじ殿か、宿願は叶ったが予想を大幅に狂わされてしまったのう。矛を下ろすが良い。魔王様のあるじ殿に向ける矛は我らには無い故」


「説明してもらえるのでしょうね?」


あるじ殿には聞く権利があるであろう」



 どうやら説明してくれるみたいだな。




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