32 12の魔王と私怨

 さくらが腕の中ですやすや眠っている。可愛いなぁ。


 今は神殿の部屋の一つに【優雅高妙】皆さんと一緒に居る。あの後、イベント終了と皆に伝えた時、頭に?マークが出ていた。取り敢えず、説明するので場所を変えましょうと言ってオールにこの部屋を借りた次第だ。


 先程の出来事を大まかに説明し、自分も詳しい話はこれから説明を受けると伝えた。



「それじゃあ、その子猫が第13魔王って事なんだな?」


「でもなんで、エマージェンシーコールが流れたのかしら?」


「よくあるイベントを盛り上げるやつじゃん」


「ルークだけず~る~い~。私も欲しー」


「それにしてもその子猫、可愛いなぁ……ハァ……」



 もしかしてプルミは猫好きかな? さくらは可愛いよ。



「しかし、グランドクエストは12の魔王なのにその子は13番目、なんかあるのか?」


「それより魔王をテイムって有りなの?」


「魔王たってモンスターの一種じゃん。有りじゃねぇ」


「私もするー!」


「ハァ……可愛いなぁ」



 なんか変なのが増えてる様な気がしないでもない? そして、ひなさんの言う通り俺はさくらをテイムしている。魔王をテイムって……。



「それでうさ子ちゃんはさくらちゃんの配下? なの?」


「キュッ!」


「配下っていえばあのオールとかいうリッチもだろ?」


「ぺん太はどうなってんの?」



 ぺん太はうさ子の背中のリュックでぐーすか寝ている。


 まるで母一人子一人みたい……痛いです。うさ子さん、足踏まないで……。



「ぺん太は違うみたいですね」


「まだ小さいからじゃないー」


「……(ワキワキ さわりたいぃ)……」



 プルミが身悶えしている。何かの禁断症状か? それともトイレ?



「わからない事だらけだな。そもそもこれイベントなのか?」


「イベントじゃ無かったらなんなのさ? 兄貴」


「わからん。イベントにしろクエストにしろ特殊すぎるだろ?」


「確かに終了のインフォが流れないわね」


「だろ? シェイドを倒した時点で【死者の都】はクリアしているんだよ」


「「「 …… 」」」


「うさ子ちゃん毛が艶々になったね。羨ましいー」


「キュキュッ」


「駄目だ……もう我慢できない!」



 だろ? さっさと用をたしてこい。ここセーフティーエリアみたいだし。



「ルーク!」


「はひっ?」



 なんだ!? 何かしたか俺? 流石にトイレの場所は知らんぞ。



「抱きたい! 抱かせてくれ!」


「キャー! プロポーズ!?」


「プルミ! だいたんー」



『infinity world』では結婚ができる。


 プレイヤー同士、或いはNPCとも可能である。因みに子供も作れる。が、SEXはできない、まぁ当り前だな。なので、そういう意味でない事はすぐわかると思うのだが……。 何故、世の女性とはそういう事にすぐ反応するのだろうか? 良く話を聞けば、さくらを抱っこしたいだけだったよ。でしょー。寝ているさくらを起こさない様にそっとプルミに抱かせた。



「ふにゃふにゃして、なんてかわゆいでちゅかー」



 いつもキリッとしているプルミが、見る影もなくだらしない顔をしている。ダイチが顔を引きつらせて見てる。ダイチくんここは見なかった事にしといてやるのが、男ってもんだよ。



 扉を叩く音がしてオールが入ってきた。



「そろそろ良いであろうか?」


「えぇ、構いませんよ」



 オールは空いている椅子に腰を降ろし話始めた。



「どこから話せば良いであろうな……魔王が12いる事は知っておろうか?」



 この世界に12の魔王がいて、その魔王は邪神が召喚した。


 自称魔王と名乗っていろ者もいるが、真の魔王は邪神が召喚した12の魔王のみ。邪神以外が魔王を召喚するのは古来より禁忌とされている。理由は知らないとの事。


 12の魔王は世界中に散らばっていて、その強大な力をもってその地を治め、魔王同士で争い勝ち残った者が大魔王となりこの世を治める権利が与えられる。


 それは邪神が決めた事でその争いで世が乱れる事が目的とか、単なる暇つぶしや思い付きと推測されているらしい。要するに、邪神の目的は何一つわかっていないと言う事だ。だが、魔王同士で戦うと言う事は決定事項らしい。


 しかし、事は邪神の目論見通り進んでおらず、一部の魔王が暴れているだけで他の魔王は世界征服どころか、贅沢な生活を楽しんでいたり、引き籠っている魔王もいる。要するに好き勝手してるのだな。


 なら何故、オールは禁忌を冒してまで新たな魔王を召喚しようとしたのか?


 知性あるモンスターは魔王が召喚された際、自分達を配下にしてもらおうと売り込みに行ったらしい。オール達もそれにこぼれず魔王達の元に行ったが、殴り合いができない、汚い、面倒くさい、などと言う理由から追い返されたそうだ。


 その上、同じアンデット系であるヴァンパイア族はすぐに臣下として魔王に徴用され、会うたびにバカにされているのが許せないらしく、二百年を掛けて今回の暴挙にでた。



「「「「「 …… 」」」」」



 誰も声が出ない。


 オール《こいつ》……バカだろ。そうに違いない。アンデットだから脳みそ腐ってんじゃねーの! 愛想も小想も尽き果てたよ。もともと無いけどな。



 というか、この世界の魔王ってなんなの? 普通一般的なファンタジーなら世界征服や人間を皆殺しするぞ的なのに。


 グランドクエスト【12の魔王】って結局なんなのさ?


 運営さん説明を要求する!




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