30 降魔神殿での大召喚魔法

 神殿の中に入り、下へと続く通路を歩いている。


 神殿は中南米のマヤ文明等のピラミッド型、上に続く階段と内部に続く入口があった。上は無いだろうと言う意見多数で、神殿内部に行くことに決まった。一本道で罠一つ無ければ部屋等も何も無い下り坂。


 そう言えば、生まれたペンギンはぺん太と名付けた。


 安易な名だとの意見もあったが、気にしない。本ペンギン? も気に入った様だからな。鑑定で見ても種族名ペグミン ♂ としか出ず、レベルもステータスも不明。


 えっ? ぺん太はどこに居るかって? うさ子の背中のリュックに顔だけ出した状態でいる。リュックはひなさんに貰った。エサはどうすれば良いかな? ペンギンのエサといったら魚だよな?



「ぺん太美味しいー?」


「クェー!」



 なぬぅ? まりゅりゅさん、あんた今何喰わせた? 干し肉って……食うんかい! ぺん太雑食……?それから勝手に餌付けしない様に、イエローカードだぞ。自分でテイムモンスター見つけてからやってください。どうやら、まりゅりゅは出発の前の日にうさ子と同じモンスターを探したらしいが、見つからなかったらしい。が、ん、ば、れ。


 三百メートル位歩いたところで扉が見えてきた。コッコが罠が無いか調べ中。罠は無かったようで、扉をそっと開けて中を確認している。戻って来たコッコは中に天使が二人いると言っている。天使?


 自分が鑑定してみる事にした。


〈べリアル 第六十八の霊 王 Lvxxx 召喚中〉


 やばい、レベルが見えない。


 それに、天使じゃなくて悪魔だ。ゴエティアの七十二の霊より、ソロモンの七十二柱の悪魔と言ったほうがわかるかな?


 撤収! 無理げーでしょう!



「「逃げる必要はありませんよ。お入りなさい」」



 バレてる……。


 皆に簡単に説明する。しかし、余り理解してない様なので、絶対に戦闘はしない事だけを約束させた。


 扉を開けて中に入る。



「「珍しいですね。この場所は人間が来る場所ではないのですが」」


「……」


「「怖がらなくても良いのですよ。私も所詮、神に造られしもの」」


「……」


「「フフフ……私の前に立てば致し方ないのかもしれませんね」」


「貴方は何故、ここにいるのですか?」


「「ほう、言葉を発する事ができましたか。成程、君からはあの者の気配を感じます。良いでしょう特別に対価無しでお答えしましょう。この先に誰も通さぬよう召喚されたのですよ」」


「通してはもらえませんか?」


「「君は私の事を知っているのだろ? ならばわかるはず」」



 やはりそう来ましたか。


 ストレージからアイテムを一つ出して差し出す。



「これで通して頂けませんか?」


「「ほう。それが何を意味するかわかった上での対価かな?」」


「はい」


「「良かろう。ここに契約はなった。私は強大で強力な八十の軍団を指揮する王、第六十八の霊、べリアル!」」



 そう言うと一枚の紙をこちらに寄こした。



「「それは私の紋章。何かの役に立つかもしれない、持って行くが良いでしょう」」



 べリアルの足元に魔法陣が浮かびそして消えていった……。正直駄目なら、一寸の虫にも五分の魂って覚悟してた。単に運が良かっただけだったと思う……。



「どうなったの? 話が見えないんだけど」


「何を渡したんだ?」


「ちびるかと思った」


「私もー」


「……」



 べリアルに渡したのは、ガチャで手に入れたポーションセットに入っていたソーマ。因みにソーマとは神々の飲み物と言われており、ゲーム内ではHP/MP完全回復である。



「レアポーションだな」


「後でちゃんと補填するから」


「正直あれで済んで、ほっとしてます」



 あれだけの悪魔が道を塞いでいた儀式ってなんだろ?


 まぁ行けばわかるか。


 一息入れ、コッコが奥の扉開けて確認する。吹き抜けの二階で、一階部分でローブを着た者達が六人て魔法陣を囲んでいるらしい。


 また、自分が鑑定してみる。



「リッチです。それも一体リッチロードがいます」



 リッチはレベル五十台、リッチロードは七十台。このゲーム、どんだけ無理ゲーなのよ……。



「リッチか……無理だな」


「リッチロードまでいるんでしょう?」


「レイド案件でしょう」


「無理ー?」


「だな」



 長男去って次次男……もとい、一難去ってまた一難だな。しかし、今から他のパーティー呼んで来ても時間切れじゃねぇ。


 なんか最終段階に入ったぽっいのですけど……。



「これって儀式を妨害するのが目的なんですよね」


「何が言いたい?」


「倒す必要はないんじゃ無いですか?」


「倒さず邪魔だけするって事?」


「こんなの倒すって無理げーでしょう?」


「だよねー」


「ならどうする?」


「結界術で土、地面を封じます」


「ボス戦でやったやつね」


「急に変な事言い出したからびっくりしたぞ」



 プルミ、過去の傷口をえぐるな……。



 それでは【優雅高妙】の皆さんでリッチ達の気を引いてもらい、その間に魔法陣に細工しよう。


『やーい。お前の母ちゃん出べそ! 出べそって言った方が出べそだ! の間に事を成す。一撃離脱作戦』


 開始です。


 気配遮断で気付かれない様に魔法陣のある階に移動する。ハンドサインで準備OKの合図を出した。


 ファイアジャベリンが飛んで行くが、何かに阻まれたようだ。続けざまに矢が飛んで行く。



「ネズミが入り込んだか! べリアルの奴め何をしておる! 役立たずめが!」


「「「「「 オール様! 如何致します?」」」」」


「我らが宿願、ここで辞めるわけにはいかぬ! お前達はこのまま続行せよ!」


「「「「「 はっ! 」」」」」



 リッチロードが魔法陣から離れる。今だな。


 魔法陣に向かって健脚を使い全速力疾走。魔法陣内に入り結界術を使おうとしたが、体が痺れ頭に激痛が走る。


 結界術を唱えられない。意識がフェードアウトしていく。


 あれ? 俺死んだ? これが初の死に戻りかぁ……皆悪りぃ。


 すぐに町の教会前に行くかと思ったら、何故か小さい頃の思い出が浮かんでくる。これが走馬灯ってやつか? って、ゲーム内だぞ?



 そう、それは自分が死という事を初めて実感した時の事のようだ。


 またなんてものを思い出させるんだよ……。


 幼稚園から小学校に上がったばかりの時、うちの祖母の家の猫が子供を産んだと言うので見に行った。


 子猫は五匹いて生まれて二週間程になったばかりの可愛い盛り。その中の一匹、白い子猫と目があった瞬間びびっときたのを覚えている。すぐに家に連れて行き親を説得した。


 何とか祖母の口添えもあり飼う事が許され、それからは何時でもどこでも一緒だった。学校に連れて行って怒られた事もしばしばあったな。


 でも、そんな楽しい時間は二年しか続かなかった……。


 ある時から白猫は食事の量が減り痩せていった。近くの動物病院に行ったが、体調不良だろと言われたが納得できなかったので、遠くの大きな動物病院にまで行ってみてもらった。


 結果は末期の癌だった……。


 手術してと頼んだが、末期の上、手術場所が難しい場所にあり無理だと言われた。ショックだった……。


 それからは前以上に一緒に居たが、一ヶ月位経ったところでとうとう立てなくなった。その日から学校に行くのをやめた……少しでも一緒にいてあげたいと言う思いだった。


 両親も何も言わなかった。ほとんど寝ずに看病したが、所詮は子供。三日経った時ウトウトしてしまった。


 はっ! と起きた時には白猫は息を引き取った後だった。


 白猫は苦しんだ様子は無く、安らかに眠っているような顔だった……。


 最後の最後に看取ってやれなかった悔しさから、ワンワン泣いた。



『魔法(時空)、テイム保持の為、条件を満たしています。召喚術式に干渉できます』



 あの子は鼻から地肌までピンク色で白毛だが、傍から見ると淡いピンク色に見えた。



『干渉します・・・干渉に成功しました』


『ブラフマーの介入により、アカシックレコードの改変がおこなわれます・・・完了しました』


『アカシックレコードの改変により再構成されます・・・完了しました』


『これより肉体の構成に入ります・・・』



 桜色だからサクラ


 会いたいなぁ……。



『・・・肉体の構成が完了しました』



「ミャッ!」



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