28 速やかに死者の都を攻略せよ

 門の前にはプレイヤーの幾つかのパーティーかが屯している。


 ひなさんとダイチが挨拶という名の情報収集に行ってくれた。


 残りの自分達は野営の準備。ありがたい事に門の近くがセーフティーエリアになっている。まあ、毎度の如く、料理担当だけどな。


 しかし、あれだけ買った食材がほとんど無い。皆から……うさ子含め食材を集めないと、後一日しか持たない計算だ。


 料理を作っているとひなさん達が戻って来た。


 話を聞いた所、日中でもアンデットが徘徊しているそうだ。昼でも夜でも強さは変わらず、夜は明かりが必要な分面倒だという。その分、プレイヤーが少ないのでやり易いみたいだ。



「私達はどうする?」


「無難に日中で良いんじゃないか?」


「食材がありません。補充下ください」


「え? ないの?」


「ないのって、あれだけ食べれば無くなるでしょう。自分で持参するって事だったし」


「……」


「ほとんどない」


「右に同じー」


「保存食なら少しはある」


「何で無いんですか!」


「なんでって、ルークが持ってると思って食べちゃった。てへペロ☆」


「てへペロ☆、じゃねょ! いつ食ったんだよ! って言うか飯食ってたろ」


「お菓子は別腹ー?」


「あーもう良い……ある分全部出せ!」



 結局、俺の分も合わせ四食分、来る途中に食べれるアイテムを落とすモンスターでもいれば良かったのだが。あいにく、虫系のモンスターばかりだったので食材はなし。


 こうなると、可愛そうなのでうさ子からは取り難い。


 必然的に攻略は今日の夜、寝ないで明日一日しかないと言う事になる……。


「野営撤収! さっさと食って攻略行くぞ!」


「「「「「 ……はい……」」」」」



 ゆとりを持って来たはずなのに結局、強行軍になってしまった。食事中一言も会話が無いまま進み、食事が終わった頃には辺りは真っ暗になっていた。


 装備を整え、Jobを陰陽師に変え死者の都の門の前に行く。ライトと唱え明かりを確保、中に入れば敵が寄って来るが仕方がない。


 基本戦術は無理せずライトエリアで引き寄せ、自滅及び攻撃して殲滅。安全確保してから探索とした。


『Gホイホイ免れた奴はペーパーバットでクラッシュ作戦』始動。


 門を潜り抜けると広い通りになっていて、こちらの明かりに反応してそこら一帯からワラワラ集まって来る。ゾンビが……。



「多いな……」


「気持ち悪りー」


「あれと戦うのか……」


「燃やしますよー」


「やるしか無いのね……」



 皆引いてが。諦めなさい。ライトエリア発動。更にゾンビが寄ってくる。目の前がゾンビだらけで、少し臭い。いや、だいぶ臭い。


 まりゅりゅの魔法(火)が飛んで行き、ゾンビ松明が出来上がる。隣に居るゾンビ達に燃え移って周りが明るくなった。おかげで更にゾンビが寄ってくる。


 さて、まりゅりゅばかりに活躍させる訳にはいかない。この間、手に入れたスキル【地形操作】のお披露目。できる事は今の所二つ、浅く広くと深く狭く穴を作る事。200✕200✕20と100 ✕100✕500(cm)の穴を作る事ができる。


 浅く広く発動!


 ゾンビ達の先頭の足元に穴を作った。先頭のゾンビがコケて転倒し、後続のゾンビが将棋倒し状態になる。



「うける~♪ はっ、腹痛てぇー」


「「「「「 …… 」」」」」



 将棋倒し状態なので起き上がる事ができず、ジタバタしている。今がチャンスとばかりに、後方の転倒しているゾンビにライトエリアを展開する。何もしないで見てるだけでゾンビが消滅していく。笑いが止まらない。


 一体抜け出したゾンビがいたので深く狭くで足元に穴を作った瞬間、視界から消える



「……ぷぷっ」



 とつい、吹き出してしまった。まりゅりゅがさらに追い打ちをかけて、穴に火を放つとキャンプファイア状態になり、二人で大笑い。


 面白い! 面白すぎる。


 落とし穴最強とは良く言ったものだ。




「「「「 …… 」」」」



 まりゅりゅ以外はノリが悪いな。さほど時間もかからずゾンビ達が見えなくなった。



「俺達、もしかしていらない子?」


「もしかしなくてもね。兄貴」



 そうなのだ、まりゅりゅと俺以外は何もしていない。わかって頂けたかな、その辛さ。明日から飯作れよ。


 その後もアンデットを倒しながら、オートマッピングを利用してマップを埋めていく。


 途中、何度か宝箱を発見するが、コッコ曰く難易度が高いらしく何度か失敗してる。まあ、大事には至っていないし、中身は確保しているので問題無いそうだ。逆に考えればそれだけ中身に期待できるって事。分配は後でする事にして楽しみにしておく。


 奥に進む程、敵も強くなってくる。今いる辺りだとスケルトンウォリアーが多く、偶にアーチャーやソーサラーが混じっている。先程までの様に簡単には行かないが、ライトエリアと地形操作は鉄板だ。スケルトンが転倒して慌てるさまは、見ていて癒される。



「向こうに見える神殿がこの迷宮のメインエリアだろう」


「ボスがいるって事かしら」


「かもしれないし、地下迷宮なんかがあるかもしれない」


「簡単すぎねぇー?」


「もう終わりー?」


「迷宮ってこんなものなのか?」


「嫌々、違うからね! 君たち! 普通こんなにサクサク進まないからね!」



 実際進んでいるのだから別に良いと思うんだけど、何か不満なのだろうか? ダイチ君。今の自分達は飛ぶ鳥を落とす勢いなのだから、ガンガン行こうぜ。



 目的地近くに来ると敵が相当に強くなってきた。グールや物理ダメージの効かなスペクターなどが出てきて、一筋縄ではいかなくなってくる。


 ですが、自分もスキルが上がり幾つか魔法を覚えた。


 グールが一塊になっている所があったので、新しい魔法フラッシュバーストを使ってみる。見た感じライトバレットと同じ様に飛んで行き、敵の真ん中辺りに届いた瞬間、強烈な閃光が走り気付けばグールが居ない。


 広域魔法ゲットだぜ。


 ダイチとひなさんにライトウェポンを掛ける。ライトウェポンは装備している武器に光属性を付与する魔法なので、物理ダメージ無効のモンスターにもダメージを与えられる。



 周りの敵を一掃して、神殿前に着くとそこにはぽつんと影が浮き上がている。なんでしょうか?



「闇の住人シェイドだ! 気を付けろ!」



〈シェイドマスター Boss Lv48〉


 強敵の予感……。


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