27 パーティーでの担当は料理番!?

 まだ夜が明けて間もない時間、西門に独り立つ。


 あれ? 早く来過ぎたかな?


 時間は六時、約束の時間まで三十分ある。この三十分が早いか遅いかは、その人の価値観の違いだろう。


 以前、沖縄で仕事をした時、夜に歓迎会を開いてくれる事になり、とあるお店に七時集合ね、と言われたので、いつものように七時前に行って待っていたが誰も来ない。三十分経っても誰も来ないので、店を間違えたかと心配になりTLEすると



「えぇ~。もう着いたの早いさ~。待ってればそのうち来るさぁ~」



 みたいな事を言われた事がある。


 沖縄時間恐るべし!



 七時になろうかという時に向こうから荷馬車が近づいてきた。荷馬車の荷台に【優雅高妙】のメンバーが乗っている。



「おはようございます」


「おはよう。取り敢えず乗って頂戴」



 荷馬車に乗り込み御者さんが門に近づき衛兵さんと挨拶を交わしている。


 自分達も、もう一人の衛兵さんに許可証を見せる。



「デオン山の採石場に鉱石を取りに行く馬車を見つけてね。行きの護衛がてら乗せてくれないかと頼んだらOKがでたんだよ」



 この時間に出れば、空荷なので今日中に着くらしい。馬車で行けばモンスターにもほとんど遭遇しない。鉱石を運ぶ馬なので下手なモンスターより強いんだよ、と御者さんが教えてくれた。


 順調過ぎて何も起こらない。強面の馬にビビッてか、モンスターも寄って来ない。する事が無いのでお昼を食べた。パンに野菜とハムを挟んだだけのね。夕暮れ時にはデオン山の採石場の作業員の宿泊施設に着いた。馬車、楽過ぎ。


 プレイヤーが欲しがるのが良くわかる。でも、使い勝手がいまいちなのと、維持費が高い。町と町の移動は一度町に行きさえすれば転移ゲートが使えるし、迷宮などでは帰りは転移石で一気に町に戻るから微妙なんだよね。


 そうこうしてるうちに、御者さんが宿泊施設の方に話をしてくれて、空いてる部屋を貸してもらえる事になった。


 御者さん! 激写過激姉あられもねぇーです。いや、冗談抜きに感謝ですよ。タダ、た~だ~♪ なんと心地よい響きで、なんて素敵な言葉だろう。


 貸してもらった部屋は八人用の大部屋、食事は自炊できる様に台所と食堂が玄関近くにある。


 折角、料理スキルがあるので温かい食事を食べよう。


 備え付けの鍋でパスタを茹で、もう一つ小さい鍋で人参と玉ねぎを細切りにしてお湯に投入、火が通った頃にコンソメ、小さく切ったベーコンを投入。生野菜を食べやすい大きさに切り、マヨネーズとケチャップをまぜオーロラソースを作る。パスタが茹で上がったら湯切りして深皿に盛り先程作ったコンソメスープをかけ完成。


 うさ子にもサラダとソースをあげる。ソース食べるかな?


 頂きます! あのぅ、皆さん食べ辛いんですけど……【優雅高妙】の皆さんが周りを囲んでいる。



「料理スキル持ってたんだ……」


「自分だけずるくねー」


「うさこちゃん、おいしー?」


「これが女子力の差か……」


「ルーク……男同士仲良くしようぜ!」



 うざい、うざすぎる。それからプルミ、俺は女じゃないぞ!



「ハァ……食べたいんですか?」


「「「「「 食べたい 」」」」」


「冷めないうちにこれ誰か食べて」


「俺もらい!……(モグモグ)……マジうま!」



 それは良かった。面倒くさいが今度は五人分作る。食材が一気に減ってしまった。少し補充しよう。



「うさ子、うさ子の持ってる野菜少しくれ」



 少しくれと言っただけなのに、うさ子はこの世の終わりとでもいう顔になる。



「町に戻ったら、一杯買ってあげるからさぁ。そんな顔しないで」



 渋々、ウサギポケットから野菜を出してくれた。が、相当な量の野菜だ。これで少しなら、いったいどれだけウサギポケットに入ってるんだ?


 パスタが人数分無かったのでうさ子の野菜でかさ増しして何とかなった。


 食事も終わり部屋に戻ると、女性陣がお風呂に入りたいねなどとのたまっておいでだったので、こっちにお風呂文化ってあるの? と聞くとルグージュの町に公衆浴場があり、ある程度のランクの宿にはシャワー室があったりすると教えてくれた。


 気分だけでもと思い全員に浄化を掛けてあげたら喜ばれた。


 女性陣はおしゃべりをしていたけど、俺は明日も早い事から無視してさっさと寝た。



 翌朝はトーストに溶かしたチーズをのせただけのシンプルな朝食にした。起きてきたのがダイチだけだったのでもう一つ作ってやる。


 女性陣は? と聞くとギリギリまで寝ていると回答があった。ゲーム内だと言うのに……。


 出発時間になりやっと女性陣が起きて来た。出発しようとすると、昨日の御者さんも今から出発のようだったので、改めてお礼を言っておいた。


 さぁ出発だ。ここからは皆も未踏破の場所。基本街道を歩いていれば敵とエンカウントはしない。それでも、モンスター達も動き回っているので偶に戦闘になる。


 そこでわかった事がある。


 自分は攻撃に余り役に立たないと言う事に……。


 魔法(光)は通常のモンスターに大してダメージを与えられない。スキルレベルに自分のレベルも上がっているのだが、余りダメージを与えられていない……。


 じゃあ近接攻撃はどうかというと、憤怒の槍を装備しているので、相手の攻撃を受けないと攻撃力が上がらない。タンクとして前衛にいるが、攻撃力が上がる前に戦闘が終了している。


 魔法(光)にヒールがあるが専門の回復職がいるので、自分のヒールが必要になる事もほとんど無い。


 うさ子も卵を抱かせているので戦闘に参加させていない。


 つまり、役立たずなのである。


 スキルレベルを上げる為戦闘に参加しているが、いらない子である……。


 役立たずがやる事といえば雑用しかない。結局、目的地に着くまで料理を作るはめになった。



 デオン山から二日目の昼過ぎ目的地に到着した。


 どうして目的地がわかったかって? ルグージュの町と同じ様に大きな壁に囲まれており、でかい門があったからだ。


 これに今まで誰も気がつかないって……どんだけ、目が節穴なんだよ?


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