16 四バカ怪獣アングロドン

 暗愚魯鈍にかけてこいつらを四バカ怪獣アングロドンと呼ぶ事にしよう。四バカ怪獣アングロドンがまだ大笑いを続けているのを見て、イラッときてしぃまう。



「どーせPKなんだろ? ウゼーんだよ。汚ねぇー面したゴミ虫が、捻りも何んもねーんだよ。失せろクズ!」



 おっといけません。疲れていたせいか汚い言葉使いになってしまいました。気をつけましょう。



「なんだと! ゴラッ!」


「てめーぜってー殺す!」


「……殺っ……」


「粋がってじゃねーぞ! ぶっ殺す!」



 あーやだやだ、どーしてこう言う人達って言う事同じなんだろう? 余りにもボキャブラリー少なくない? まぁ知能が低いからこういう事やってるのだろうけどね。


 逃がしてくれそうに無いし、やるしかないか……。


 さぁ、うさ子さん今度こそ貴方の力を見せると……ってええぇ! どこ行った! うさ子!


 いつの間にか道の端でニンジン? を食べている。


 またですか。そうですか。独りで戦えと……。



「おう! 余裕じゃねか。テイムモンスター無しで俺達とやろってか」


「舐められたもんだぜ」


「……キッ……」


「クックックッ……後悔すんなよ」



 あら? この人達マジモードになってない? 違うよ。違うからね? うさ子は勝手に……って、戦闘態勢に入ってるな。



 前方、バーバリアンは斧、レイダーは弓、ローグは小剣の二刀流、後方のサヴィジは剣と盾持ち。専門の魔法使いやヒーラーがいないのがせめてもの救いか。


 こちらが動かず構えていると、レイダーが矢を射ってきたので盾で受ける。と、同時にバーバリアンとローグが自分との距離を詰めてきた。チラッと後ろを確認、サヴィジに動きがないので取り敢えず前の二人を対処しよう。


 盾を構え攻撃を受ける態勢を取ったその時、サヴィジから何か声が掛かる。見るつもりは全く無かったのに意識がサヴィジに向いてしまう。


 あれ!? と思った時に体に痛みが走る。バーバリアンとローグに攻撃されたらしい。何とか意識を前に戻すと既に距離を取られている。


 一体何が起こった?



「こいつ硬てーぞ! ダメージが通り難い!」


「あの仮面、おそらくレア装備だ! お前もアーツ(技)使っていけ!」



 お前も? 成程、後ろのサヴィジに敵愾心ヘイト上昇系のアーツを使われた様だ。面倒な。


 前衛の二人がまた距離を詰めてきた。一応サヴィジに注意はしておく。ローグが仕掛けてきたが何か違和感を感じる。おそらくアーツを使うのだろう黙って受ける思っているのだろうか? バックステップで躱す。


 隙ができたのでローグに攻撃しようとしたが、俺の攻撃の間に割り込むようにバーバリアンも違和感ありありの攻撃を仕掛けてきた。難なくバックステップで躱す。先程までいた場所に巨大な陥没ができている。


 なんてパワーでしょう。当たったら死んじゃね?



「こ、こいつアーツを躱しやがった!」


「……」


「そいつおそらく回避系スキル持ちだ。よく狙っていけ!」



 ローグがリーダーだと思っていたけどレイダーが実質のリーダーの様だな。判断が的確です。


 サヴィジは動いていない、おそらくクールタイム中なのだろう。仕掛けてくるのは次の攻撃かな?


 レイダーから矢が飛んでくる。槍で叩き落とすが右肩に痛みが、アーツの様だ。また前衛の二人が距離を詰めてくる。そして予想通りサヴィジが動いた。何度も引っ掛かると思うなよ。ヘイトを稼ぎたいなら稼がせてやる。


 前衛の二人に対処すると見せかけ、バックステップの後、体の向きを変えサヴィジとの距離をダッシュで詰めて槍で突く。サヴィジはアーツを使った後の一瞬の硬直時間で動けず、攻撃を受けてのけ反った。チャンスなので追撃を加える。


 ダメージは二割ちょいというとこか? すぐに前衛側に対応しようと向きを変えるが既に後ろまで迫っていた。


 またあの違和感がある動きする。アーツが来るのだろう。


 くっ! バックステップが間に合わない。唯、攻撃を受けるくらいならと闇雲に突いた槍がローグが放とうとしていたその瞬間に小剣にぶつかる。


 キーンという音と共にローグがのけ反った。



「キャ、キャンセルしやがった!」



 ほう。キャンセルねぇ。そんな事できるんだ。



「偶然だ。気にせず畳み掛けろ!」



 うむ。的確な判断だ。本当にやり難い。しかしこいつ等さっきから自分にヒントくれてる事に気づいていないのかね? 口は禍の元だぞ。


 奴らのアーツを見ていて段々と違和感が何かに気付いてきた。動きが洗練されているのだ。


 アーツを使わない攻撃はチャンバラ剣術なのに対して、アーツを使う時の動きは何年も修行して身につけた剣術といった感じになる。余りにも動きに差があり過ぎて違和感を感じていたのだ。


 バーバリアンがアーツを使うのがわかる。同じ動き、同じ構え、同じタイミング、奴がアーツを放つタイミングに合わせて攻撃。


 キーンと音がしのけ反りる。喰らえ! なんちゃってアーツ二段突き! バーバリアンが吹っ飛んでいく。完璧!



「やっぱり、キャンセル技使ってやがんぞ!」


「くっ! 仕方がないアーツは捨てろ。こっちは四人だ手数で攻めろ!」



 んー、レイダーくん君達悪役なんだから正攻法でくるなよ……。


 案の定、前衛が三人になり連携された上、矢も飛んでくる。捌ききれなくなってきた。ライトヒールも追いつかない、守るのが精一杯で攻撃の手が出せません。ジリ貧だ。



 困ったなぁ。こうなったら切り札を切るしかないな。成功するかは未知数、成功すると信じたい。


 HPが三割を切った。もう待ったなしだ。



「うさ子ぇもん! たすけてー!?」



 あらん限りの声で叫び、うさ子を見る。


 うさ子はピクっとし唐突に両手を肩の辺りまで上げ、首を振る。やれやれだぜ……って感じですか?


 グッジョブといい、一体、どこでそのリアクション覚えたんだ? スキル【リアクション】ってあるのか?


 などと思っていると、うさ子さんの様子が……。


 あ・あれはそう、初めてうさ子に会った時の様子に……。


 うさ子さんのいつもなら愛らしいお目々が血の色に……そこに立っているのは鬼、いや、女性だから鬼バァ……ゾクッ……姫騎士様ではありませんか!


 今、俺も敵とみなそうとしたよね? うさ姫騎士様……。


 四バカもどうやら異変に気付いたようだ。が結果遅かった。ほんの一瞬。何とか目で追えた位だ。


 目の前のバーバリアンが宙を舞ってる。デ、デジャヴュかな?



「なっ! ぐふっ」



 ローグが腹にキックを受けて吹っ飛んでいく。サヴィジが目の前の光景に呆然としている。この機を逃すバカはいない。


 なんちゃってアーツ、シールドバーッシュ! 相手の盾を跳ね上げる。そこにはがら空きの体がある。更になんちゃってアーツ、強撃突きー。サヴィジは何が起きたかわからないといった顔と共に光と消えた。


 先ずは邪魔なレイダーを潰そう。そう思いレイダーがいた方を見ると……うさ姫騎士様に首をねじ切られたとこでした。余りのグロさに嘔吐感が……なんとか飲みこんだぜ。


 吹っ飛んだ二人はどうなったか探したが見当たらない。どうやらあの一撃で逝ったみたいだ。


 うさ姫騎士様。どんだけ強いんですか? バーバリアンに一撃入れてた時、うさ姫騎士様のお手々が真っ赤に燃えていたし、ローグに蹴りを入れた時もピカッーっと光ってたよね?


 どうやら、殺りくぅ……ぶ、無事に討伐完了のようだ。


 あぁ、良かった。本当に良かったよ。あの時うさ子に見捨てられたら立ち直れなかったと思うぞ。



「うさ子ぇもん! ありがとー!」



 うさ子をギュッと抱きしめモフモフした。


 うさ子は我関せずとばかりウサギポケットからトウモロコシを出してムシャムシャ食べ始める。


 うさ子はツンデレだなぁ。


 それから、食べカスを俺に落とさないでくれるかな……。


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