12 露天街で装備を買う

 宿のご主人の名前はマクモンさん女将さんはナフシーさんと言う事を教えてもらった。


 帰ってきたら一緒に飲みに行く事を約束し、ついでに露店街の場所を聞いて宿を出た。露店街は噴水広場の近くで、まだ朝早くだというのに多くの街の人々やプレイヤーで賑わっていた。


 既にプレイヤーの第一、二陣勢は他の街に拠点を移しており第三陣勢も半分以上のプレイヤーは移動しているらしい。ここで露店を開いているプレイヤーは殆どが俺と同じ第四陣勢となる。


 露店を覗き商品を見るがパッとした物がない。うさ子とはぐれない様に手をつないでぶらぶら歩いていると、露店から声を掛けられた。



「そこの可愛いお嬢さんと手をつないだ、らぶらぶなおにーさん! ちびっと見ていかへん?」


「らぶらぶって? ぶらぶらしてるだけですけど?」


「おぉー、上手い事ゆうやない」



 いや、上手くもなんとも無いからね。どこから出したか知らないけど座布団もいらないからね。


 座布団には笑・って書いてあった……山田くん持って行きなさい! それではshow店本日お開きで。ってちゃうわい!!


 な、何もしてないけど疲れた……。


「パトうさ子……疲れたろ。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……パトうさ子……」



 ラッシュラビットだけに…ぷっぷっ。



「良いい話やわー」



 ハンカチで目元をおさえてる女性プレイヤー。どこの似非関西人や?



「それでは用事があるので失礼します」


「そかーおおきになぁ。って、なんでやねん!」



 こっちが聞きたいです。



「で、なんです?」


「なんでって、なんか買っていかへん? まけたるでぇ」



 ここで会ったが何とやら。しょうがないので商品を見せてもらう。物は今まで見てきた物より数段良い品だ。話を聞いたら第二陣プレイヤーで今日でこの街を出るそうだ。


 確かに物は良いけど値段も良い。元手がほとんど無い事とドロップアイテムは結構ある事を言うと買い取ってくれると言うので全て渡した。



「なんやこの数は多すぎるやろ。ちょっと待ってや、確認するさかい」



 確認してもらってる間、品物を見ていると大きい首輪が目に入ったので手に取ってみる。



「それはなテイムモンスター用の首輪やねん。気にいった?」



 うさ子に試しに着けてみる。嫌がってはいないが嬉しそうでもない。



「名前も入れたるでぇ。こないなもんかなぁ? せやなぁおおまけしてこの皮鎧とその首輪でぇどないや!」



 渡してきたのはオブシディアンリザードの皮鎧というもので、黒に近いガンメタ色でどこかの野菜人が着ていそうな鎧だった。


 実際に着てみた感じも軽くて動きを阻害しないうえ、防御力もそこそこあり気にいった。



「本当に良いのですか?」


「かまへん、かまへん。ついでにこれはサービスや」



 と言って渡してきたのは盾? だった。細長い楕円の上下のとんがり部分を切り取って、その片方の下側に二つの爪の様なものが付いている。



「これはシールドですか?」


「そうや。シールドとなトンフー組合せた、守って、殴って、突いて全て良しの試作シールド一号くんや!」


「ネタ防具ですね……」


「だぁー、ネタやない! 正真正銘ほんまもんのシールドや」



 そう言って俺に無理やり装着させてくる。


 基本は二の腕だけで取り回しをして必要に応じてシールドの内側にある取っ手を握る事によりより自由に動かせる。



「意外と取り回ししやすいですね。握り部分も良いです。俺的にはパイルバンカーでも仕込みたいところですね」


「おぉー、パイルバンカーかぁ、夢やなぁ」


「それより、サービスってなんか裏ありません?」


「なあんも裏なんてありへんよ。あんなぁ、使った感想がほしいねん」


「成程、そう言う事ですか。了解です」



 お互いフレンド申請を交わす。名前は舞姫さんですか。舞姫さんはその場でうさ子の首輪にUSAKOと刻印もしてくれ、うさ子に装着させてくれた。うさ子はどうでも良いような顔をしている。



「まいどおおきにー」



 良い取引だった。さらに怪しい格好になったけどな……。



 さらに露店街をぶらぶら見て回る。


 途中、野菜を売っていたおばちゃんにうさ子が捕まってモフモフされたが、お礼に新鮮な野菜を沢山貰った。うさ子がね。うさ子は貰った野菜を自分のウサギポケットに仕舞ったようだ。俺のストレージと同じような機能なんだろう。大量のドロップアイテムを寄こしたのもこれがあったからだろう。


 露店街も終わりに差し掛かった頃、これといって何かを探していた訳では無いが、ふと目に付いた槍があった。


 武器を売っている露店前の籠に、十把一絡げで入れてある。



「その籠の中の武器はどれでも大銀貨1枚だ。どれか買うかい?」



 先程、目に付いた槍を取り出し店主に大銀貨1枚を渡した。



「言っとくが、返品無しだからな」



 店主はホクホク顔で言ってきた。売れると思ってなかったのだろう。露店街を出て、先程買った槍を確認する。


 憤怒の槍 片手槍 攻撃力1と鑑定されている。普通なら使い物にならない、店主が売れてホクホク顔になるのもわかる。


 しかし、鑑定結果に続きがあった。


 憤怒の槍 片手槍 攻撃力1


 以下空白。

 ・・・・・・・・

 ・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 この槍を装備した状態で攻撃を受ける毎Strに+10補正が入る。最大+2000。


 って裏サイトの入口かっ!


 ぶっ壊れ武器ってやつだな。しかし最大値まで上げるのに200回攻撃を受けるって、どんな鬼畜仕様だよ……。


 だが、ある事に気付いてしまったのだ。どこにもダメージを受けると書いていない。攻撃を受けるとしか書いてないのだ。ダメージを受ける必要がないのだ、鉄壁防御スキルなり受け流しスキルなりで受ければ良いのだ。


 これすごくねぇ。



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