11 穴熊親父の山小屋にて

 知らない天井だ。って当たり前だろ! 逆に自分の部屋以外の天井知ってたら怖いわ!


 ひとりボケツッコミをしてみた。


 起き上がり状況を確認してみる。どうやら食堂の端っこで寝ていたようだ。



「あっ、起きました?」



 店員さんが此方に気付き声を掛けてきた。


 あの後どうなったか聞くと。宙を舞った俺を近くに座っていたべアール(熊獣人)のお客さんが受け止めてくれ、そのまま先程の場所に運んで寝かせてくれたらしい。


【優雅高妙】の皆さんはあの後1時間程、興奮していたらしいうさ公を宥める為? モフモフして帰ったそうだ。どうやら支払いも済ませてくれたらしい。フレンド登録しておくんだったな。お礼をしたかったけどべアールのお客さんも帰ってしまった後だった。


 うさ公は俺の足元で丸くなって寝ている。


 取り敢えず、店の迷惑になるので、うさ公を起こし店員さんにお礼を言って店を出た。



 外に出ると既に真っ暗だった。


 一旦、宿にでも入って情報整理と明日からの事を考えようと思う。


 ちょうど目に留まった『穴熊親父の山小屋』という宿に入りうさ公と一緒に泊まれるか確認した所、問題ないとの事なので素泊まり一泊を頼む。


 宿の名前とは裏腹に小綺麗で受付も普通の女性だった。


 鍵を受け取り部屋に入るとうさ公がすぐにベッドに飛び乗り寝てしまった。


 お前は何様だよ。なんて言ったらまたコークスクリューが飛んでくるかもしれないので何も言わない。何度もやられてなるものか。


 自分もベッドの端に座りステータスメニューを開く。フレンド申請が4つきている。


【優雅高妙】の四人からだ、勿論、承諾した。確認すると既にログアウトしているのでメールでお礼を書いて送っておく。厚顔無恥にはなりたくないからね。



 そうだ天の声も確認しよう。パーティーメンバーにうさ子とある。隣の兎をみる〈うさ子 ♀ Lv12〉と鑑定されている。 そうじゃないかとは思ってはいた。ずっとうさ公と呼んでいたし、ご本人様は一応女性だし、うさ公…うさこう…うさこ…うさ子となったんだろう。ダジャレか!


 一応、パーティーメンバーから、うさ公改めうさ子を確認してみる。うげっ!



 うさ子

 strain ラッシュラビット Lv12

 HP/MP 1680/220

 Str 34

 Vit 42

 Int 11

 Dex 16

 Agi 44

 Luk 22


 skill 格闘Lv5 パンチLv7 キックLv8 身体強化Lv6


 固有skill 嗅覚感知 聴覚感知 夜目 脚力強化 ウサギポケット


 称号 ルーク《ヘタレ》の友



 何じゃこれ……兎Tueeee!


 それからちょっと称号のちみー、なに? 喧嘩売ってんの? 誰がヘタレじゃー! 上等! 表に出ろや。


 ハァ……ハァ……ハァ……脳内格闘場で仮想称号君とバトルした。VRだけに……ぷっぷっ。誰か突っ込めー、おっちゃんは寂しいぞ。


 それはさておき、予想していた通りうさ子は近接特化型。


 うさ子が前衛、自分が後衛、索敵系スキルはどちらも持っているから不意討ちせれる可能性は低いな。明日はなかなか良い感じで戦えるのではないかな。当分ソロでやらないといけないと思っていたので良い意味で予定が狂った。


 午前中はアイテムを売って装備を整えたり、ギルドに行ったりしてみて午後からレベル上げだな。


 装備はレア装備のお陰でこの辺のモンスター相手ならダメージはほとんど無いが、装備がコートだけって見た目的に違和感があるから、カンの良い人や鑑定持ちならレア装備を持っている事に気付きPKしてくる可能性も無きにしも非ず。


 PKとかって面倒くさくて嫌なんだよねぇ。


 やること決まったから俺も寝よー。うーん、うさ子が邪魔だ……。




 翌朝、うさ子がベッドで暴れ始めたので目が覚めた。


 結局、昨日はベッドが狭かったのでうさ子を抱き枕にして寝た。暑苦しかったが、モフモフ感は最高だった。


 宿の受付に鍵を返しに行ったら、うちは朝食が評判良いんですよと昨日の受付の女性、女将さんかな? に言われたのでせっかくなのでうさ子の生野菜も一緒に頼んだ。


 食堂で朝食を待っていると、エプロン姿のガチムチのべアールが朝食を運んできた。



「おっ。なんだ昨日のにーちゃんじゃないか?」



 ん? 誰でしょう? 昨日どこかでお会いしましたかね? べアール?



「もしかして昨日、自分をキャッチしてくれた方ですか?」


「おお。ものの見事に飛んでたな」


「起きた時にはもう帰られた後っだったので、お礼を言えませんでした。改めてありがとうございました」


「気にすんな。俺も店抜け出して飲んでたからよ、長居するとかーちゃんに殺されっから。ガハハハ」



 たしか夕飯時だったよな、忙しい時間帯に抜け出したのか……そりゃあ女将さんも怒ると思う。



「何かお礼がしたいんですが、今手持ちが少なくて……」


「だから気にすんなって。そーだなどーしてもっていうなら昨日の六三亭で一杯奢ってくれや。ガハハハ」



 どーやら『穴熊親父の山小屋』は当分、定宿になりそうだ。女将さんには気をつけよう。共謀罪で殺されたくない。


 さて、お礼もできたし、定宿も決まった。今日はなんか幸先良い様な気がしてきたな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る