10 うさ子って誰よ?

 聞けば聞くほど魔王ラヴィーちゃんの存在が疎ましくなってくる。


 実はチュートリアルもあったらしく、近接戦闘、遠距離攻撃、魔法の使い方などを教わり、最後に試験的なボス戦を行って終わるそうだ。


 その時点でプレイヤーはレベル5になっていて、運が良いとスキル珠という宝玉をドロップするらしい。スキル珠は使用するとランクはランダムだが、必ずスキルが手に入るアイテムだ。


 マジかぁ、の一言しか出てこない。


 そう。あれだけ苦労したのに自分はやっとビギナーと同じ立ち位置にいるのだ。


 強制縛りプレイなのか懸賞に応募した時に何か条件でもあったのだろうか? 記憶に無いのでどうしようもないな。GMコールで聞いてみるか?


 辞めよう……過ぎた事だ。ちょっとした、リアルロールプレイしたと思えば笑いの許容範囲だ。待てば海路の日和ありってね。



 それより親切にここまで教えて貰ったのだから此方も何かお礼をしたいな。本来、情報はお金で遣り取りするのが基本だが、お金は大して持っていない。


 ならば体を使ってお礼するしかないな。性行為は規制が掛かってできないが、マッサージぐらいなら……ぐふふふふ。えっ? なんですかその目は、遠慮するの? 俺のゴールドフィンガーが光るの見たくないの? 残念でござる……。


 となると、情報には情報だろう。売れそうで確実な情報は一つしかない。



「皆さん、詐欺師ってJob知ってます?」


「「「「知らなーい。なにそれ」」」」



 おっ、良い食いつきだ。情報ギルドの情報に上げないことを条件に、経緯と取得条件を教えた。



「それって嘘がばれたらさ信用度ダダ落ちじゃん。原子力発電所じゃねぇ?」



 コッコさん? 原子力発電所とはなんぞや?



「コッコー。その隠語難しいよー」


「そっか? あたし、地元福島なんだ。諸刃の剣って事」



 成程、歴史で習った。大地震で原発の安全神話が崩れたやつだな。旨いこと言うね。



「なる! 俺も仙台だから共感できるよ」


「お隣さんじゃん。握手握手」


「でもなぁ……福島の人って福島は北関東で東北じゃないって顔するからなぁ」


「ぐっ! 痛いとこ突いてくるじゃん」


「はははっ。小さなプライドってやつだな」


「なに笑ってるのさ、プルミ。新潟だって半分東北みたいなもんじゃない!」



 プルミさんは新潟出身なのか。



「なに言ってる。関東甲信越だ」


「青森はー、北海道の友達だよー」


「うちより田舎じゃん」


「なんだとー!」


「ちょっと落ち着いてよ。私は下町生まれ……」



 ん? なにげに北国裏切り発言と、さりげなく東京出身なので田舎者じゃない発言が聞こえた様な。


 ここは振ったのは自分ですが聞かぬ振りをしよう。店員さーん! エールのおかわりおねがいしまーす。


 あれからどの位経ったのかな? 女性陣は疲れ果てた様子を見せている。自分はエール三杯目突入。いやぁ、リアルより旨いよこれ。


 女性陣、どうやら不毛な話だと気付いた様だ。同じ穴の狢と言うところだな。



「ひどいよ、ルーク。自分で振っといて傍観なんて」


「仙台人はcoolなんですよ」


「なにそれ。意味わかんない」


「あー。モフモフ成分がたりないよー」



 モフモフ成分ってなによ? それ美味しいの?



「あれー、この子眠そうだよー」



 うさ公を見るとお腹一杯食べて満足したのか、テーブルに顔だけ載せて大人しくしている為、眠たそうに見えなくもない。



「この子って今まで見た事ないモンスターだけど、どこでテイムしたの?」



 ぐぬっ。そこ聞きますか、ひなさん。テイムなんてしてナイヨーなんて言えるわけもなく……場所と経緯だけ説明した。



「うーん。おそらくレアだな」


「「「レアだね」」」


「いいなーモフモフほしいなぁー」



 そんなにほしいもんかね?



「ほしいならあげ……ぐがっ」



 残像が見えるかという程の動きで俺の懐に入り込み。カエルパンチ……もとい、ウサギパンチそれもコークスクリューブローが顎に吸い込まれ俺の体は宙に舞う。


 薄れゆく意識の中。



『うさ子が貴方のパーティーに強制参加しました』



 と天の声が聞こえた。うさ子? うさ子って誰よ? と思った所で意識が途切れるのであった……。


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