前のエピソード――03　師匠とアバター

　悪態をつかれながらもスキルガチャチケット30枚と、アイテムガチャチケット20枚を課金アイテムとして変換してもらった。運営側なら喜ぶ所じゃないのか？

「もう仕事したくないでござる。でございまーす。とっとと名前を決めて逝け。でございまーす」

「段々、扱いが雑になっているんですけど……名前入力っと」

「すべての設定が完了しました。でございまーす。変更は却下です。でございまーす。」

「そこは、再確認でしょう……」

「お黙り!でございまーす。貴方の『infinity world』での旅路に幸多からんことを。でございまーす」

　目の前が眩い光に包まれたが目を閉じたのは一瞬、目を開けると中世の西洋風なレンガや石作りの街並みが広がり人々が行き交っていた。

「すげぇの一言しか出てこないな……」

　俺のやっていたVRゲームは確かに綺麗だった。が、綺麗すぎて逆に違和感を感じたしNPCはマネキン人形に毛が生えた程度だった。

　今、目の前の光景は夢か幻かと思う程リアルだ。実はここは映画の撮影現場ですよと言われても、あっ、やっぱりそうでしょうと言ってしまう程、現実世界と区別がつかない。

　ぽかーん。と口を開けていたせいか、近くにいたおっちゃんが

「どうした、兄ちゃん固まって？スリにでもやられたか？」

「いえ。田舎から出てきたばかりで街並みと、人の多さに圧倒されちゃって」

　既に、ロールプレイモードに突入。空気読める出来た子なんで。

「ガハハハ! そうか田舎から出てきたのか。なら仕方ねぇな。この町はクルミナ聖王国の西の国境の砦の町だからな、デカくて当然よ! ようこそ! ルグージュの町へ若人よ」

　説明ありがとうございます。やっぱりお約束ですよねぇ。おっちゃんはまたガハハハと笑いながら人混みに消えていった。

　そう、突っ立ていてもしょうがない、行動順位を決めよう。社会人の鉄則だ。第一にやるべき事は……落ち着いて考えられる場所を探そうか……。

　改めて周りを確認するとここは教会の前。所謂（いわゆる）死に戻りの場所だな。教会の前では人の目もあるので移動しよう。

　土地勘なんて無いので、適当に街の中心部に歩いて行く。中心部はロータリー風になっていて中心が噴水広場になっている様だ。噴水広場のベンチに座り周りを確認する。

　目の前を行き交う人々、よく見なければプレイヤーとNPCの区別もつけ難い。プレイヤーは頭の上辺りに良く見ないと分からない程の半透明なマークが見える。デフォルトは黄色い星みたいだが違うマークのプレイヤーもいるので設定出来るのだろう。ちなみに自分の頭の上を見たが何も見えなかった。

「先ずは確認だな」

　ルーク・セブンスランク Lv1

　ヒューマン ♂

　Job 無

　HP/MP 320/160

　STR 8

　VIT 8

　INT 8

　DEX 8

　AGI 8

　LUK 8

　Stp 0

　skill　

　魔法(光)Lv1

　んー。レベル1だから強くないのは分かるが、基準が分からないから何とも言えない。考えてもしょうがないからガチャ引こ。

　スキルガチャチケット30枚とアイテムガチャチケット20枚がある。多い様に見えるが当確ガチャではないので全て当たる訳ではない。一枚引くとハズレ50%、ノーマル38%、レア10%、ユニーク2%の確率。10枚分を一回に纏める事ができ、その場合にはハズレ40%、ノーマル35%、レア20%、ユニーク5%の確率になる。

　勿論、狙うはユニークスキル、ユニークアイテム。

「乾坤一擲の大勝負だ!」

　と、思っていた時期ありました……。

　スキルガチャ10枚、一回目…ノーマル3個。二回目…ノーマル2個、レア１個。三回目…ノーマル1個、レア1個。

　アイテムガチャ10枚、一回目…ノーマル2個、レア１個。二回目…ノーマル1個、レア1個。

　あるぇ？　ユニークはドコイッタノカナ？　と言うより、どんだけリアル運、悪いのさ……。

　俺の栄光へと続く道に、早くも断崖絶壁が立ち塞がっているようだ。

　まあ仕方ない、スキルとアイテムの確認するか。

　ノーマルスキルが、鑑定、気配察知、気配遮断、健脚、魔法発動短縮、夜目。レアスキルが魔法(時空)、幸運。

　ノーマルアイテムが、ポーションセット、本(初級錬金術)、安全石10個。レアアイテムが、レンジャーコート、フールマスク。

　良く見ればスキルはまともじゃないかこれ？魔法特化の暗殺者って感じだな。攻撃手段が魔法(光)しかないのは辛いところだ。魔法(時空)はLv1で街への転移しか出来ない、今後に期待だな。幸運に至っては説明文すらない……。

　レンジャーコートは鎧系で防御力の数値は比較対象が無いので分からないが、認識阻害(小)が付与されている。フールマスクは兜系これも比較対象が無いので防御力が高いのか不明、MP回復速度上昇(大)が付与されている。見た目はまんま泣き笑いのピエロ。認識阻害のコートを着た気配遮断したピエロ……ただの不審者じゃねーか!

　運営は俺に何か含む所でもあるのだろうか？はたまた、ラヴィー師匠の呪いか……。