05 job取得

 確認はこんなものだろう。次の行動順位を考えよう。余りにも情報が無いので手探り状態だ。


 そもそも、『infinity world』に説明書や解説書は付いてきていない、VR機器の接続やゲーム開始までの流れが記載してあった冊子、利用規約の写しと大きな赤文字で『a point to notice』と書かれた表題の紙しか付属されていなかった。


 赤文字の紙には利用規約から抜粋された重要規約が記載され注意する様に書いてあった。内容は『infinity world』内で取得した情報の外部への掲載禁止、それに伴い掲示板、Wiki等のコミュニケーションツールの禁止(ボイスチャットは除く)が利用規約に記載されておりそれを受諾した人がプレイヤーとなれる。先程の規約に違反した者はアカウント削除の上、損害賠償責任を科せられると言った厳しい内容だった。


『infinity world』は取得した情報は全て『infinity world』内で取引される仕組みになっている。記載しなければ良いので実際に会って話す事は問題ないが、『infinity world』ではボイスチャットが同セーフティーエリア内でしか使用できない。


 要するに街中でしか使えない、遠い場所にいるフレンドとの遣り取りはメールのみ、ここでお気付きだと思うが記載は禁止事項である。情報をフレンドから得る場合は直接会うしかなのである。街に転移ゲートがあるとはいえ時間と場所を決めて会うなど余程親しい間柄でないと難しいであろう。中々良くできたシステムだ。プレイヤーとしては非常にうざいシステムであるが……。


 したがって、この状況下で出来る事は少ない。情報を得るにも元手が無い。課金も考えたが、先ずは行動して課金が必要か適宜考えようと思う。


 となるとやる事は決まっている。レベル上げと金策だな。生産系スキルは無いが、戦闘系補助スキルはそこそこある。これだけでも本来のビギナーに比べたら雲泥の差だろう。


 やはり課金はズルだな。本音を言えば課金プレイは好きではない。今回は当分の間ソロプレイになると思われたので不利を補う為、課金する事にしたまでだ。


 理由は、今回懸賞で当たった『infinity world』は第四陣プレイヤー用であったが自分に届くまでに二ヶ月が過ぎている。次の第五陣プレイヤー用はさらに二ヶ月後になる。


 中途半端なのだ。二ヶ月もあればビギナーから卒業して固定パーティーを組終えてる頃だ。リアルフレンドがいない、いや、いるかもしれないがこの歳になってやってる奴は少ないだろうし、知る術もない。


 以下理由で、ある程度力が付くまではソロでいくしかないのである。


 コミュ障だからじゃないからな。


 と、兎も角、町の外に行こう。西が国境みたいだから行くなら東だな。


 噴水広場から東側の門まで20分程で着いた。門をくぐり外に出ようとした時、門近くいた衛兵に呼び止められる。



「おい、お前。外に出るつもりか? 出るなら通行許可証を掲示しろ」


「はぁ? 通行許可証ってなによ?」



 突然の事で思いっ切り素で言ってしまった。



「な、なにって……じゃどうやって街に入ったんだよ」



 良く見れば、まだ20代前くらいのあんちゃんだ。先程の素で言った事で俺が怒っていると勘違いしている様だ。



「あっ、いや、ちょっと気が立っててね。すまなかった」


「い、いえ。此方も仕事とはいえ急に呼び留めてしまって申し訳ないです」



 なんかこいつ良い奴っぽい。



「それで、通行許可証って? 田舎から出てきたばかりなんだよ。来た時は知り合いに連れてこられたし、街の大きさに圧倒されちゃって門を通ったことさえ覚えてなくてね」



 巧言令色鮮し仁ってやつだな。まあ、ゲームだし気にしない。ロープレだって同じようなものだ。



『テッテテー! 条件をクリアしましたのでJob【詐欺師】を取得しました』


「……」



 き、聞こえなかった事にしよう……。



「成程、そう言う事ですか。お連れの人は商人だった様ですね。理解しました」



 衛兵さん、うんうん、言いながらなんか勝手に納得したみたいだ。ラッキーだな。



「それでは仕方ないですね、ご説明します」



 要約すると、街の出入りには許可証と言う名の人頭税が取られる。商業ギルド等入っていれば売上等から天引きされるのでギルド証を見せれば良く、ギルドによっては丁稚二人まで免除される。住民は税を払っているので同領主の異なる街や村に住む人は住民票でよいので、問題はそれ以外の人になる。旅人等は一度でも街に入る時に一月分の人頭税を支払い、許可証を発行してもらわなければならない。



「どうします? ハンターギルドに入ると言うのが一番手っ取り早いと思います。依頼も受けれてランクが上がれば特典もありますから」



 定番だな。定番すぎて、おへそでオチャーアチャー玄米茶ーって奴だ。



「いえ。自分は悠久の旅人。許可証の発行をお願いします」


「そうですかぁ。あなたが納得していれば問題はありません。発行に大銀貨五枚掛かります」



 なんですとー! 全財産だ……むむぅ。


 しかし、男には負けるとわかっていても戦わなければならない時がある。それが、今なのかも知れない。



「お、お願いします……」



『テッテテー! 条件をクリアしましたのでJob【旅人】を取得しました』


「……」



 全財産が無くなったが、jobを手に入れた。


 これはラッキーなのか?



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