03 師匠とアバター

「で、師匠次は何をすれば宜しいでしょうか?」


「うむ、弟子よそなたの分身を創るがよい。でございまーす」



 目の前に半透明の版にメニューが表示されたので、3Dスキャンデータを呼び出した。紛れもなくOYAJIな俺である。


 色々弄ってる内にやり方が分かってきたので、一度初期化して再度設定を開始する。


 性別は変えられない、まあ変えるつもりも無いけどね。年齢を若くしていくと昔の自分に近くなっていく。だが、今の自分が借金しているお肉の分、横幅が増えているので返済しておく。おぉー! 見紛う事なき若かりし日の自分だ。


 んーでも何かが違う、これではただの若い頃の自分だ。折角、新しい世界を冒険するのだから、多少は違う自分になりたいとは思う。極端な変身願望は無いがね。


 顔を弄るのはその手のリアルスキルがないと無理だろう。となると、肌の色か髪型や髪の色、目辺りかな。髪型をソフトモヒカン×ツーブロックにして色はグレーに変更、目の色をサファイアブルーにしてみる。


 もはや日本人じゃねぇよ……誰こいつって感じだな。チョイワイルド系で良い感じだ。肌の色も変えるか? 俺って日に焼けないで赤くなるだよなぁ。まぁこのままで良いか。



「師匠、終わりました」


「承知しました。それでは確認致しますでございまーす。ぷっ」



 あるぇ~? 口元抑えて笑いを堪えてらしゃいますよこの人。師匠とは言え、なんて失礼な。



「当法廷は被告人に対してギルティーを宣告します。…くっ…ぷぷっ」


「ちょ、ちょとまてーい! どこがギルティー? えっ? 全部? いやいやゲームなんだから若くしたっていいじゃん。えっカッコよすぎる? いやーそれ程でもー。詐欺? 詐欺でも偽証でもないから、プレイヤー万人に与えられた正当な権利ですからね!」



 この後アバターに関して師匠と長い時間バトルをする事となる……。



「ハァ…ハァ…仕方ありません被告人を冤罪と認めますでございまーす」


「ハァ…ハァ…と、当然です」



 何故に、アバター作成如きでここまで疲れなきゃならんのだ……。



「時間が押し迫ってきて要りますのでチャッチャッと完了させてくださいでございまーす」


「えっ? 制限時間あんの? 本気マジ?」


「わたくしこの後、でゅえーとなので急いでおりますでございまーす」


「師匠の都合かい!」



 カルシウム不足だ……誰か良いサプリ紹介してくれ。ん?


 この後、急いでどうでもいい服やら小物やらの設定をした。



「残りの設定は何ですか? と言うより、とっとと決めやがれ! でございまーす」


「種族を何にするかなぁ? っと」



『infinity world』においてもファンタジー定番の種族が有り好きに選べる。普人族以外の種族は何かしら一つの固有スキルを持っている。スキルはゲーム開始時にランダムで一つもらえ、ゲーム開始後は閃くか独学あるいは誰かに師事する事でスキルを増やしていく事ができる。だが、普人族は固有スキルを持っていない事から、他の種族より一歩出遅れる事になる。なので普人族以外で始めれば最初からスキルが二つの状態で始める事が出来る事から、普人族以外の種族で始める人が結構多いと聞いている。


 スキルは定番の課金ガチャでも手に入る。実際、自分は課金するつもりなので種族は何でも良いと思っている。



「とっとと普人族に決めやがれでございまーす」



 師匠もこう言ってる事だし普人族で良いか? ポチっと。じゃあ、残りはゲーム音楽の設定をして。



「終わりました」


「それでは、言い残す事は無いですね? でございまーす」


「あっ!」


「なんですか? でございまーす」


「課金ガチャはゲーム内で出来ますか?」


「ケッ……ヘタレ世間は金ばかり……でございまーす」



 ぶ、ぶれねぇなこの人……。




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