02 案内人ラヴィー

「知らない天井だ」



 昔見た、平成の時代のアニメのセリフだ。何度観ても理解できなっかたのを覚えている。



「ここに天井は無いし、使徒もいないでございまーす」



 む、む。こ奴何者だ? できる! 拙者のダダ漏れの妄想にツッコミを入れるなど、只者ではないな。



「すいませ~ん。戻ってきてくださ~い。説明始めま~す。でございまーす」



「これは大変失礼致しました。わたくし株式会社フロンティアオメガの冴木と申します。申し訳ありませんが、只今名刺を切らしてしまい、後日改めましてご挨拶に伺わせて頂きたいと思いますが、ご都合は如何でしょうか?」



「こ、これはご丁寧なご挨拶痛み入りますでございまーす」



 ペッコと頭を下げてくれたのは青い服、青い帽子のデーパートガールさんだった。白い手袋もしてるな。


 そのデパガールさんは、何かに気付いたらしくハッと顔を上げ俺に言い放ってきた。



「だっー! 違いますでございまーす!」



 何が違うのか知らないがプンプンと怒っている様だ。カルシウム不足してない? いいサプリ紹介しようか?



「で、なんでしょう?」



 あ、膝から崩れ落ち首を垂れている。こんな時はどうすれば良いんだ? 相手はおそらくこのゲームのAIだろう? バグったか?



「すいませ~ん。戻ってきてくださ~い。説明お願いしま~す」



 やっと立ちあがったデパガールさんがジト目でこちらを見ながら、AIとは思えぬ言葉を発する。



「死にやがれ。でございまーす」



 このゲームは18禁の仕様でもあるので、このような汚い言葉も許容されている。



「で、復活しました?」



「ぐぬぬぅ。 はぁ……進めます…でございまーす」



 そうそう、ちゃっちゃと進めましょう。やる事が多いのですからね。



「それでは、先程までのやり取りは次元の彼方にポイッとしまして。改めまして『infinity world』へようこそ! でございまーす!」



 これでもかと言いう程の笑顔で次元の彼方にポイッされてしまった……。



「どうかされましたか? 冴木様? でございまーす?」


「い、いえ、すいません。先続けてください」


「はい。では…私は『infinity world』の案内人ラヴィーです。短い間ではありますが、親しみを込めてラヴィーちゃんとお呼びくださいでございまーす」



 デパガールさんは期待を込めた眼差しをこちらに向けている。



「ラヴィーさん」


「……」


「ラヴィー様」


「……」



 くっ、逃げ出した……しかし回り込まれてしまった、の状況だなこれ……言わねば先に進めないトラップか……。



「ラヴィーちゃん……」



 デパガールさんは満面の笑みを浮かべている。ま、負けたぜ……。



「ありがとうございます。それではご説明いたします。『infinity world』は自由そして無限です! 説明終わりでございまーす」



「はぁ? それだけですか?」



 新喜劇並にズッコケました、さそれは。いやぁ、あるでしょ普通それ説明って言わないからね。



「何かご不満でも? ご質問があればお答え出来る範囲でお答え致しますでございまーす」



 言いたいことは多々あるが……まあいいさ……聞くは一時の恥、聞かぬは一生の意地。ゲーム関連の事は意地でも聞かぬ。では、せっかくなのでどうでもいい事を……。




「一つ良いでありますか? ラヴィーちゃん」



「許可します。ですがスリーサイズと体重、年齢はお答え出来かねますでございまーす」



 こ、こ奴はやはり只者ではない……実はGMなのか? まさか本当にAIってことはないよな? な、ないでしょう? これはあれだ絶対に敵に回してはいけない奴だ。ボスより強いNPCって奴だ。焼売定食……焼肉定食じゃない弱肉強食の世界だ。お、俺に今できること……。



「師匠と呼ばせてください!」



「うむ。よきにはからえ、でございまーす」




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