→視点:※※※※
『ジョーンズ選手より
天河
なかでも場末のカジノやバーが密集する、昼間の暗がり。そこで。
「……風の
マリー・ピアは眼前に浮上する黒衣の仮面姿を
「……コー……ホー……」
先ほどまで激しいポイントの奪い合いをしていた相手は、最後に完全に自分を出しぬいた上でその戦果を放り
「《雷精》、《水精》……
仮面の顔がわずかに上がった。
「8年前、その動画に誰もが再認せざるを得なかった。アマカワの市場価値を。わずか五分半のフライボードの飛行軌道に世界中が
「だが名を上げたのはフライボードの研究チームのみ。実際はエンジンの付いたフリスビーも同然だったそれを奇跡のように制御してみせたテストパイロットの名はついぞ広まることはなく、いつしか報道関係者も実名ではなく二つ名でそれを呼ぶようになった」
フライボードがゆっくりと高度を下げる。地面のすぐ上まで。
「《
「…………」
彼女はフルフェイス型デバイスに手をかけるとそれを脱いだ。
「……………………あれは、」
波打つ黒髪をあふれさせ、その顔があらわになる。
「教授命令、だったんですよ。その日の朝に
眠たげな目を片眼鏡の隙間からこすり、アンジェは答える。
マリー・ピアはそれを真っ向から視線で射貫いた。
「その教授は最初から貴様をパイロットにすべきだったな。それで? ここで何をしている。貴様はヒューマノイドの引き渡しに関して消極的賛成を貫いていたように見えたが」
「……えぇ、まぁ……心境の変化というか、助言をもらいまして……」
◇
『――ハローニーハオ、アンジェ? 電話なんて珍しいじゃない。……は? 恋愛相談?』
『どうしようもないでしょそんなの。誰だか知らないけど機械じゃないんだから』
『運命に
◇
アンジェは遠く空を見上げてから、フライボードを降りる。
持ち上げたそれの陰に
「……あの、クビ、でしょうかやっぱり。できれば見逃していただけると。あ、でもそれならそれでストリートに第二の人生があるような……」
「
マリー・ピアは嘆息した。
「学校事業の人事など知らん。それにどんな
おもむろに取り出したタブレット端末を操作するアンジェ。
「……いえ、そういうことでしたら、次に連絡をしないといけないところが……私事で申し訳ないのですが」
「そうか。私は今、貴様がその齢で
マイペースさに眉を
ミラーグラス型デバイスを操作し、口端をわずかに上げる。
「ヒントが出たな。では、貴様自身が私を
言い捨て走り出した。足音はみるみる遠ざかり、やがて聞こえなくなる。
残されたアンジェは街の中心を見上げて
「そう……ワタシは
最後の方は消え入るように、しかし
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