→視点:Sunshine=Davis

 ギュル、ギュル、と熱く力強い拍動はくどうが鼓膜を揺すっている。

 頭はずきずき、身体はどんよりと重たくて、けれど不安ではなかった。


(大丈夫かな、また怪我とかしてない?)


 だから、自分よりも彼の安否が気にかかる。

 かすみがかった頭に喝をいれて、サンシャインはうっすらと目を開いた。


「――、」


 すごい速さで流れていく仰向けの景色。

 その中心で彼は怒っていた。

 たけっている、激している、――そう言い表すほかない形相ぎょうそうをしていた。

 どこかで見たようなジェットパックをなぜか背負って。進むたびに視界がカクンと上下するのは足を怪我しているからだろうか。


「……シノー」


 その輪郭がうるんでゆらぐ。今の彼の様子がどうしようもなく悲しくて。


「ごめんね。あなたを、シノーは、戦わなくていいなんて言っといて」


 結局はこうなっている。今の自分はまったく無力で、無防備で、無策だった。

 連れて行けると思ったのに。彼がいるべき場所へ。夢への一歩を踏み出せた自分なら、次の願いを叶えることくらいわけもないと思ったのに。


「…………」


 立ち止まった紫皇が首を振る。


「“俺はサニーのことが重大すぎて、お前なしでは駄目になってしまったかもしれない” 」

「そ、れって……」

「“もう安心して構わない”」


 いつかの言葉をそのままに、彼はサンシャインを床へ降ろした。


「“走れるか?”」

「嫌!」


 サンシャインはその足へしがみつく。


「行っちゃやだ、どうするの? 危ないことはしないで」


 胸騒ぎがした。もう二度と会えなくなってしまいそうな。

 紫皇は立ち上がって上を向くとサンシャインの髪をかきまぜた。


「“大丈夫だ”」

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