→ついて行く
「ねえ、今って何時かな?」
数歩先をキープしていたサンシャインがしばらくぶりに話しかけてきた。
「6時45分だな」
「わ、便利。時計いらずね」
歩調をゆるめ、紫皇の隣を歩く。
時間を教えると機嫌を直すらしい。と推測して紫皇は
「時計を忘れたのか?」
「いやあるけど。楽じゃない。楽なのはいいことよ、うん。シノーがいるといいことがたくさんね」
分からないがその笑顔と言葉を受けると数値が安定していく。分からないこともひとまず保留でいいかという気になってくる。
「サニーは、クラブかボランティアをしているのか?」
かわりに訊ねてみた。
現時刻は一般的な学校の始業時間から考えて一時間以上早い。
「陸上部よ、ハードル走。CAG関連の部活はないから、基礎トレーニングを一緒にさせてもらってる感じね」
なるほど、とうなずいた紫皇にある
「それはあのヤンスってのと一緒にか?」
「冗っ談! あいつはアメフトよ。いかにもって感じでしょ?」
「そうか」
懸念が解消され表情から険がとれた。
「ひょっとして、あたしのこと心配した?」
「ああ」
肯定を返すとサンシャインはにぃーっと口端をつりあげた。
「そっか。んっふふ」
目を細めたネコのように笑った後、前を向いて歩きながら話す。
「ねえシノー。あなたは確かにロボットだけど、もっと新しい何かになれるってあたしは思うの。なんていったって宇宙人が作ったロボなんだから」
「宇宙人が作ったとは限らないが」
あくまで可能性のひとつだ。それもかなり低い。
「でも、スペシャルだわ。あなたと同じ考えのロボットはもう世界中を探したって絶対にいない。それってすごく、人間みたいだと思わない?」
確かにそういう意味での希少性はあるかもしれないと紫皇は考えた。
「だからねシノー。ロボットは命令に従わなきゃ意味がないなんて、決めつけなくていいと思う。それは人間が造った人間のためのロボットにだけ言えることで、あなたはそうじゃないかもしれないんだから」
「それは……」
一理ある、のかもしれない。
紫皇がこれまで収集したロボット
「もちろん、あなたがそうしたいって思うぶんには止めないけどね。つまり、んーっと、そう!
びしっと昇りかけの太陽を指さしてサンシャインは締めくくった。
“――指ばかり見て
人に危害を加えないに始まる4つの大ルール。
そしてブラック・スペースに存在すると予想される何らかの《法則》。
それらは一体、誰のどんな目的のために定められたのかということ。
「…………俺は、何をするために造られたんだ?」
「決まってるわ!」
くるりと体ごと振り返り、指先を紫皇につきつけてサンシャインは断言する。
「幸せになるためよ! だって、あたしたちの知るロボットは悩んだり嫌がったりなんかしない。あなたはそれをする、なぜ? 幸せな状態を目指すためよ! 違う?」
「……ぉ、おお!」
その言葉は鮮烈な影響を紫皇におよぼした。
不安定で存在する意味が分からなかった《感情値》が独立した
それを基準に過去に記録された感情値の乱れが評価しなおされ、その制御に有効な行動が次々とピックアップされた。
ともなって、目の前のサンシャインが特別な対象として提起され――。
「……サニー、お前は。……実はかしこい、のか?」
「馬鹿だと思ってたなあっ!? 遠回しにそう言ったなあっ! ウソつき! 知らない!」
ぐわん、と外から衝撃を受けたかのごとき数値の乱れが紫皇を駆け抜けた。
「っ……な、っ!?」
一瞬バランサーの制御がフリーズし、膝から崩れそうになる。
たった今理解した。自分はサンシャインに拒絶されることを《ショック》と感じるらしい。
だがこの噴出した値の大きさはどうしたことか。先の変化で自分は何か重大な
「サニー!」
「何よ!?」
遠ざかりつつあった背中を呼び留める。
とはいえ正確なところは分からず、ややあいまいな
「俺は、サニーのことが重大すぎて、お前なしでは駄目になってしまったかもしれない!」
「へっ!? ~~っ」
ざっざっざっざっ、はしっ
目を丸くしたサンシャインはうつむき、早足で戻ってくると紫皇の手を掴んだ。
「
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