君の、本気をください。
らむね水
ねぇ、
君に、ふざけてキスをした。
まだ、小さい小さい頃。
保育園で流行っていた、ませた子供達の遊び。
スタートは多分リーダー気質な女の子の発言。
『わたし、きのうのドラマでみたのよ。好きなひとにはキスでキモチをつたえるの!』
ただのお遊び。
深い意味なんて無いし、そんな事、考えてもなかった。
ただただ、好きだと思った人にキスをするのが保育園という狭い空間の中での正解になった。
だから、君にキスをした。
何も知らない子供のキス。みんなやってる事。
くちびるとくちびるが触れるだけ。
でも、これが俺達の間違いの始まりだった。
保育園の卒園式。
看板の前で泣きじゃくる君に、桜の木の下で
キスをした。
小学校に入ってから。
クラスに馴染めず不安げな君に、校舎の陰で
キスをした。
中学校に入ってから。
受験の重圧に押しつぶされそうになっている君に、トイレの個室でキスをした。
高校に入ってから。
『ねぇ、やっぱり私達おかしいよ。』なんて言い出す君に、君の部屋でキスをした。
社会に出てから。
俺から離れて行こうとする君の腕を引いて、
ひとり暮らしになった俺の部屋でキスをした。
付き合ってなんかないよ。
告白なんてしてないよ。
キスしかしないこの関係が、おかしい事だなんてわかってるよ。
離れる事が正しいことなんて、わかってるよ。
でも、もうふざけてなんかないよ。
君と離れたくないから離れない。
君とキスをしたいからキスをする。
ふざけて、冗談で、からかってしてるキスなんかじゃないよ。
こんな関係、間違いだってわかってる。
でも。
ねぇ、君の、本気のキスを頂戴。
君の、本気をください。 らむね水 @ramune_sui97
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