巨大スクリーンが映し出すのは
@blanetnoir
山手線のドア付近に立ち、窓の外を眺めるのが好き。
特に夕方の薄暗がりの時間帯につき始めた街のライトが、グレーの街並みにシャンパンゴールドの輝きを足すようで、途端に華やいで感じられる。
ただこの街は、電車が駅に近づけば巨大なスクリーンが必ず見えてきて、ビビッドなライトの中で様々な有名人がセールスしている。
トレンドをアピールするモデル、最新アイテムを身につけた人気俳優、歌い踊るティーンのアイドル‥‥
あの頃。
私が、あのアイドルたちの年齢だった頃、こういう世界に憧れた時期があった。少なくとも、関心があった。この世界の上位存在だと、思っていた。
そんな時代をふと、思い出す。
今は。
大写しに見せられた彼らの姿は、彼ら自身も商品の一つでしかないのではないのかと、感じている。
仕事に就いて、お金を稼ぐようになって。
夢や目標なんて言葉で語ることもなかった職業だけど、悪くない世界に身を置き、あの頃と全く違う世界を見ている。同じ街で暮らしているけれど、見える社会の姿が別世界のように、変わった。
もしこの瞬間に、あの頃の私とすれ違うことがあったら。
私と同じ顔で、私がなくした輝く瞳をした少女は、
きっと私には気づかない。
巨大スクリーンが映し出すのは @blanetnoir
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