閑話休題
nula
俺はJR
二年前に止めた煙草を久し振りに吸うと、俺は一度だけ
時刻は九時五十五分。
約束の時間まで、あと五分。
十時三十分。
俺は苛々としながらも、斉賀朗数を待っていた。
果たして本当にやってくるのだろうか。腕時計をもう一度見る。時刻は相変わらず十時三十分のままだ。
来るのが面倒になったのかもしれない。
警察だと聞き取りをする際にどうしても時間の都合が合わないからと、後日に聞き取りを行う事もあるのだが、
俺は溜息を一つ
「今の生活に満足している?」
喫煙所の
「満足かって言われると正直満足ではないよね。バイトもキツいしそれに……」
俺は過敏になりすぎていたのかもしれないと思いながら、硬直していた身体を
今時のお洒落な服装に身を包んだ若い女の子が二人、俺の視線に気付く事もなく、生活への不満を口にしていた。
流れでその周囲にも目をやる。そこにはスーツのジャケットの腹の部分が張って
現代社会の中で悩みが無い人間なんていないのだろう。
俺はそんな当たり前の事を考えて、もう一度腕時計を見た。
時刻はもう少しで十一時になろうとしていた。
今日は諦めて帰ろうかと思った時、ジャケットのポケットに入れていたスマートフォンが震えた。俺はスマートフォンを取り出すと、画面を確認する。斉賀朗数からのメールだ。メール画面を開いて内容を確認する。
もう少しで着くらしい。
俺は寒さを我慢しながら胸ポケットに入れた煙草を一本取り出して火を点ける。息を吸い込むと、冬の冷気が嘘の様に、温かい、そして不純物の多い煙が体内に溶け込んでいく、そんな錯覚を覚えながら、雲の多い空を見る。
斉賀朗数は女だった。そして斉賀朗数と名乗る本人が、
俺は最初警戒して話を聞いていたのだが、この目の前にいる女は自分が連続行方不明事件の犯人であるとすぐに自白した。
なんだか拍子抜けした気分になりながらも、逃げる気配が
本来であれば署に戻り話を聞くべきなのだろうが、俺は警察官としてではなく、
「先輩を、
彼女は言った。
「私は確かに犯人ですが、犯行は私が行った訳ではないので分からないんです」
俺は彼女を睨みつける。
「なにふざけた事いってるんだ?」俺は感情が
「まあいい。それなら誰がやったって言うんだ?」
彼女は重力に逆らうように綺麗な放物線を天に向ける長い上の睫毛をこちらに向けて、二重瞼でぱっちり開いているからなのか目力がある瞳で俺を射抜いて言った。
「私じゃない私がいるのです。私の中に」
彼女は真剣そのものだったが、俺はそんな彼女の発言を認める事を拒んだ。。
「多重人格とか言って言い逃れでもしようとしてるのか? 無駄だぞ」
彼女は小さく首を振ってから言った。
「あなたの持っているその本」彼女は俺が鞄の中に入れている本の事を指摘してから言う。
「それはこの世界のものじゃないのですよ。きっと
彼女がそこまで言った時、彼女の瞳から
「まあこんな話は余計だったかしら? 余計ついでにもう一つ教えといてあげる。何故わたしが
彼女は光が消えていたその瞳に、いつの間にか先程とは違う別の光を
身体から力が抜けていく気がした。
先輩もこの化け物と対峙したのだろうか。
視界がぐにゃりと
ぐにゃりと
「わたしは神の世界へ向かいたいだけ。その為に少しの
俺は彼女のシニカルな表情を見て、自らの行く末を悟った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます