viisi
世界に亀裂が入った、
そしてここに訪れる観光客が動かす経済への影響もあったのだろう。町はダム建設を中止した。
夏になっても人は途切れることなく訪れ続け、もう一度秋になり、自然界のパズルを多くの人の目に焼き付ける事が出来た。
私の努力は報われた様に思えた。
しかし、実際は違った。
観光客が増えると、施設が多く必要になる。
この集落には元々個人の家しかなかったので、近くのこの集落よりはまだ利便のいいところにコンビニエンスストアや簡易的ではあるが宿泊施設などがいくらか作られた。それが、集落とここの樹木や葉、この山に住む動物達の運命を大きく変えた。
まず人が多く訪れた事によってごみの投棄が問題になった。ペットボトルやビニール袋などは自然に帰るものもいくつかはあったが、全てがそうとは限らない。
自然の循環のシステム外に位置するそれらの物質は、取り除けど取り除けど、数は増えていく一方で、結局山の中に堂々たる顔をして居座り続ける事になった。
そして施設が出来るという事は多少ではあっても、山を整備する必要があって、その際には当然樹木は伐採され、動物達の縄張りは侵されていった。
その被害は
問題はそれだけに留まらなかった。
煙草の問題と言うのも浮上した。この一年の間で火の不始末によるボヤ騒ぎが四度も発生していたのだ。
そして、遂にそれは起きてしまった。
その頃私は
私は丁度神戸での一週間を終えて、集落へと車を走らせているところだった。何度も何度もスマートフォンに着信がかかってきていたが高速道路を車で飛ばしている最中だったので、その着信に出る事が出来ないでいた。
そして休憩をしようとパーキングエリアに入った際に画面を確認すると着信は大樹からだった。
「おい、
「大樹、落ち着いて、何が燃えてるの?」
大樹は落ち着きを取り戻す事なく、
「
私は高速道路のパーキングエリアで
大樹が突き立てた言葉は、私もその場に突き立てた。しかし私は向かわなければならない。集落へ。
足をどうにか前へ前へ、重たい
ヘッドライトを付けるのを忘れていたので、ライトスイッチを奥に
急いで集落に向かう。車を飛ばす。飛ばす。
田舎を通る高速道路の暗さには光量が足りていないし、本数も少ない左右の外灯が視界の前から後ろに光線の様に長く伸びて流れていく。
月光の光が
体制を立て直そうとハンドルを反対に切る。しかし、それは誤った判断だった。
向かう先に見える
視界の先で炎が、見えた気がした。
身体が宙に舞う感覚は一瞬の事で、直後に身体に衝撃が走る。その衝撃は脳を揺らし骨を
私は目を開いたまま、二つ並んだ光量の弱い月を見て、集落に思いを
後部座席の方から声がした。
「気分はどう?」
私は振り返った。視界はぼやけ、骨は
しかし、そこに彼女がいる事は分かっていた。
「喋れないのね。いいわ、見せてあげる」
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