kaksi
その後
その山にある一つ一つは形も
私がここを訪れた当初、たゑさんが作ってくれたじゃがいもの煮っ転がしを食べて、あまりの美味しさに感動した事があった。
確かに味付けが上手だったのは認めよう。でもそれ以上に、じゃがいも本来のうまみが圧倒的に市販のそれとは違った。
驚いている私にたゑさんが言った言葉を私は一生忘れないだろう。
「売り物のじゃがいもが
たゑさんは、そう私に言ったのだった。
そんな事を思い出し
その玉ねぎやじゃがいも一つ一つの歪さがそれぞれ特徴的で私は微笑む。
あるものはじゃがいもとは思えない様に長細くなっていて、さながらきゅうりの様に見えるし、また別の玉ねぎは丸々と太っているわりには頭の出っ張りの部分が小さく、ころっとしたフォルムがかわいらしい。
そんな玉ねぎとじゃがいもが愛おしく見える様になるなんて、
今たゑさんと会話を続けて、目の前に無造作に置かれた玉ねぎとじゃがいもを愛おしく感じているこの時間は、神戸にいた時に感じていた幸福とは
何て事のない会話を続けていると、部屋の中でも比較的目立つところに置かれた古く大きな柱時計がごぉうおーんごぉうおーんとけたたましく、しかし間延びした様に鳴り響き、私とたゑさんだけの
その音を聞いて「もうこんな時間か。はよ帰らんとじいさんに怒られるわ」と言って、たゑさんは大量の玉ねぎとじゃがいもが入った籠を持った。
そして、さらさらと水が低い方低い方に流れていく様な滑らかさと柔軟さをもって
その一連の
気付くとたゑさんはもう家を出て行った後だった。
さっきのたゑさんの流麗な動きを思い出すと、この世界に亀裂でも入ったのか、
今晩は、妙に底冷えする。
私は浴室に移動して、いつもより熱めにお湯を張った。
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