閑話
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「これが約二十年前に
先輩はそう言って写真を三枚、机の上に放り投げる。
養父町で行方不明になった人物は、資料で見た年齢に比べると大人びた表情をしている。そして、長い上の睫毛が重力に逆らうように綺麗な放物線を天に向けて、二重瞼でぱっちりと開いた目が特徴的だ。
「綺麗な人ですね」
「そんな事はどうでもいいんだよ」
頭をがりがりと
俺は先輩に尋ねる。
「これが今回の事件と、どう関係があるんですか?」
もう何度も目を通しているが、もう一度、この辺りで連続で起きた行方不明事件の二人の写真を見る。
一人は大学一年生の女の子で、もう一人はデザイナーの男性。
今のところ、この二人の足取りは全く掴めていない。
「正直、関係なんてない」
「えっ?」
俺は先輩の言っている意味が全く分からない。
「ただ最近、この養父町の女が夢に出てくるんだ。何度も何度も。それでな、言うんだよ俺に」先輩は言った。
「今の生活に満足しているかって聞いてくるんだ」
俺はどう反応していいか分からなかった。
先輩はふざけた事を言う人じゃない。
仕事の時なら尚更だ。
「疲れてるんじゃないですか?」
「そうなのかもな」
先輩はその数日後、休暇を取ると姿を消した。
先輩のデスクを整理していると走り書きが残された一枚のメモを見付けた。
「出発点も終着点も繋がっている」
そしてその横には円が描かれていた。
俺は今も、そのメモを大事に持っている。
意味は分からないが、大事な何かだと信じて。
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