第2話
_______機械音が部屋に響く。
まだぼんやりとした頭でその機械音、目覚まし時計を止める。今となっては使う者は少ないであろう。
だんだんと意識がはっきりとし、目がさめる。
また、あの時の夢を見た。
いや、また「体験」したのだ。
体は冷え切り風呂にも入っていないのに、濡れている。塩の匂いも鼻につく。
嗚呼、また布団を洗わねば。もう日課と呼べるほどの頻度で布団を洗い、干す。
もう10年以上前の事を夢で体験する。夢であって夢でない。不思議な事もあるものだ。起きてみると自分は布団で寝ているのに、体には水を被ったように濡れているのだ。
しかし、自分は、俺は、この事を気味が悪いとは思わない。驚きこそはしたがこれを体験すると、とても満たされるのだ。
俺とあの琥珀色は確かに会っていたのだと、そう思えるからだ。
あの時、俺が子供の頃__といっても、もう高校生にはなっていたが、俺は小さな島に来ていた。住んでいる人々は皆 年寄りばかりで俺と近い年の子供などいなかった。
まぁ、なぜそんな所に来たかというと俺があまりにも病弱だったためである。
どこの病院に行っても健康そのものだと言われ、たらい回しにされた。1世代前ならばよくあることだが、今では珍しいことだ。
両親はどうにかして俺を助けようとしたが日に日に弱っていく俺を見て、両親は憔悴していった。
もう、病院にも行かなくなり、藁にもすがる思いで神頼みをし始めた両親は調べに調べた末に小さな島に辿り着いた。
その島に住んでいる人々は生まれてから1度も病気になったことがない。ましてや風邪すらもなったことがないらしい。
実際に、島の人々は口を揃えて言うのだ、「この島に住む人は死ぬまで健康である」と。
俺と両親は1ヶ月間島に滞在した。
俺はだんだんと元気になり、島中を駆け巡った。
久しぶりに自分で歩き、走る。疲れはしたが、これ程まで嬉しいと感じたのは生まれて初めてだったかもしれない。両親も大層喜んでいた。
しかし、島を出る時のことだ。
船に乗り、甲板に出て海を見ていた俺は、大きな揺れとともに簡単に放り出されてしまったのだ。
海の表面に叩きつけられた。今まで泳ぐことなどしたことがない俺はどんどん沈んでいった。
_______そして俺はあの「琥珀色」に出会う。
気づいたら俺は島の砂浜に打ち上げられていた。
助かったことに安堵を覚えつつ、あの出来事はなんだったのだろうと疑問にも思った。
両親に聞いても、それはきっと幻覚だよと言われたがそうとは思えなかった。
すると次の日の朝、俺はあの夢を、体験したのだ。
両親は怯えたが、島の人々は「神に魅入られた、君を救ったのはこの島の守神だ」と皆言った。
両親は気味が悪く感じたのだろうか、すぐに俺を島から連れ出し、家に帰ったのだ。
しかし、あの夢はどこにいても俺を逃しはしなかった、いや、俺はそれを望んでいたのだ。
島の人々は神に魅入られたと言ったが、俺があの琥珀色に惹き込まれたのだ。
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