ボウリング!です!

 今日は四人でボウリングに来ている。そういえばボウリングは山頂学園付近にはなかったし、私以外はやったこと無いらしいし、スコアも低くて不服そうだ。雪野先輩を除いて……


「う~ん、私が見たアニメではこのフォームで絶対ストライクなのに……」

「いや、それ上に投げちゃってるから……前に転がさなきゃ」

「そうそー!こうバーン!ってやれば良いんだよ!」


 この人はなんで何をやらせても人並み以上に出来るのだろうか。ちゃんと真面目に何かに打ち込んだら国体とか狙えるんじゃない?


「華ちゃんすごいわ~私なんて五連続ガーターよ~」

「いや、先輩胸張って言う事じゃないです!」

「そうね~このままじゃ最下位だわ~」


 その後も岸辺先輩はガーター続く。ちなみにこのボーリングで負けた人は、アイスクリームを全員に奢ることになっている。言い出したのは雪野先輩だけど、どう考えても自分が負けない前提だ。他の二人もなぜか賛同しちゃって……


「ここで何本か倒して、岸辺先輩に差をつけます」

「美雨ちゃ~んやめて~!」


 美雨はアニメを参考にしたらしいのだけど色々なフォームで投げていく。すると、メチャクチャにくるりと一回転しながら投げると偶然ストライクになる。


「お?おー!?み、見たか!これが私のトルネードスピンスローよ!」

「自分でも驚いてるじゃない、ケガしないでよー?」

「うん!ボウリングって楽しいね!」

「ぅぅ~美雨ちゃ~ん……」


 岸辺先輩がガックリとうなだれる。そろそろ奢りの罰ゲームは撤回しておこうかな……さっきまで死にそうな顔をしていた美雨は、とても清々しい表情だ。あんなフォームでやってたら普通はガーターコースまっしぐらなのに……あ、ビギナーズラックか。


「みうっち!私のも見て見て!ソフトボール投げ!」

「あ、先輩待った!」

「へっ?おわっ!ぐぉぉ……肩がぁぁ……!」


 この先輩はどこまでバカなのだろうか。ボーリングの球を片手で振り回すなんて常識知らずもいいとこだ。右肩を押さえてうずくまっている。駆け寄ってみると雪野先輩は涙目でこちらを見上げてきた。


「あおっち~~痛い~~!」

「だから言ったのに……ほら、ちょっといいですか?」


 雪野先輩の肩を少し動かしてみるけど、特に外れてもいない。それどころか軽く回したのに反応が変わらない。もしかしてむちうちにもなってない?超人かこの人は……


「とりあえず、ケガした直後で動かしても痛み変わらない可能性もあるので、先輩は棄権負けってことで」

「えー!まだまだできるよー!!」

「あら~ってことは~私は最下位脱出ってことかしら~?」

「えぇぇぇえ!?」


 セコイ勝負を持ち掛けた罰だ。やっぱり罰ゲームありってことのままにしよう。スコア的に私が一位は確定ね。ソフトクリーム、何味にしようかな?確かぶどう味があったわね……


「雪野先輩、ゴチでーす」

「そんなぁーー!!」


 ボウリングが終わった後で近くの売店でソフトクリームを買って、食べながら帰る。雪野先輩の財布の中身、ちょっと寂しかったな……あとでなんかジュースでも買ってあげよ……ん?これ先輩のやることじゃ……?まぁ細かいことはいいや。


「よーし!まだまだ遊ぶぞー!」

「うわっ!復活した!?」

「華ちゃ~ん、今日は帰るわよ~」

「え~なんでー!?」


 この人、自分がなんで負けたのかをもう忘れたのかな?私たち三人は暴れる先輩を取り押さえて私の家まで連行した。大丈夫、ゴールデンウィークはまだ終わってない、明日も来ればいいんだからね。

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