帰宅!です!

 美雨ったら、いったいどこに行ったのかしら……札幌で迷子になったらそれなりに人もたくさんいるし探しにくいってのに……しかしとりあえず電話をしておけばなんとかなるだろうと電話をかける。


「あれ、出ない……」

「もしかしたら~美雨ちゃん電車で長い時間スマホゲームしてたから~……」


 あのバカチン!スマホゲームするなら充電くらい見なさいよね!しかしそうなるとどこにいるのか、皆目見当かいもくけんとうつかない。


「まぁ遠くには行ってないだろうし、駅内を探しますか」

「そうだねー!というか、まだ改札も出てないんじゃない?」

「あ、そういえばそうですね、とりあえず私トイレ見れ来ますね、お二人は改札から出ないで、五分後にまたここに集合で」


 トイレ我慢していて駆け込んだっきりとかだと困るし、ここで他に行くとこって言ったら、一個だけある飲食店しかない。そうでもなきゃATMの前で並んでいるか、それくらいだろう。


「ん~いないなぁ……」


 しかしトイレにもATMにもいない。改札付近にもいないし、自販機の近くにもいない。もしかしたら本当に飲食店の中にいるのかも……でもあのお店って大人っぽい雰囲気全開で入りにくいと思うんだけど……


「すみません、ここに私と同じくらいの女の子来ませんでしたか?」

「お、葵ちゃーん、こっちこっちー」

「アンタねぇ……待ってなさい、今先輩達連れてくるから」


 私を出迎えたのは、店の入り口付近でジュースを飲んでいる美雨だった。のんきに声をかけてきたあたり、後で説教してやらないと。とか考えながらお店を一旦出て先輩二人と合流する。


「先輩達、どこ調べてたんですか?」

「私はね、売店の裏!」

「私は~スタッフルームの中を~……」

「何やってんですか!?」


 まったく岸辺先輩は怖いもの知らずだな……しかしよく怒られなかったものだ。とか考えつつ美雨のいた店に戻る。席に着く前に注文を済ませて、カウンターのような席に四人並んで座る。


「ごめんなさい、人に流されて、その上スマホの充電切れたから動かないでいようと思いまして……」

「ま、それはいいわ、すれ違いになっていたらもっと大変だったしね……にしてもここの枝豆おいしいわね」


 いつもいた札幌だけれど、こんなお店に寄ったのは初めてだし、やはりお酒を取り扱っているお店のおつまみはおいしいものなのか。鳥のから揚げも頼んで来よ……


「それで~葵ちゃんのおうちは~ここからどれくらいなの~?」

「電車でニ十分乗って、歩いて五分くらいですね」

「おっけー!じゃああおっちのお家に突撃だー!」


 はぁ、もう覚悟は決めましたよ……どうぞ好きにしてください……三人で別のホームで普通の列車に乗り、到着した駅から五分歩くと古臭いお店に到着する。一応帰ることは両親に伝えてはいるけれど、きっと昼の時間帯は忙しいだろうし、静かに帰りたい、裏口から帰ろう……


「ん?なにこの張り紙……」


 お店の入り口に張られた紙には、急用につきお昼の営業を休ませていただきます。というものだ。いったいどういうことなのか、私は案の定鍵のかかっていないその扉を開ける。


「ちょっとお父さんお母さん!休みってどういう……」

「「おかえりー!葵ー!」」


 ぎゃあああああああ!!!!待ち伏せされてたああああああああああああ!!

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