なんて日だ!……です!

「はぁぁ~~……」


 教室に着いて椅子に座るなり、自分でも自覚できるほどとてつもなく大きなため息をついてしまう。昨日の夜、なぜか突然決まった私の実家訪問。私としてはかなり恥ずかしいというか、実家の料理が食べたいなら私がほとんど再現できるのに……


「ずいぶん大きなため息だね、どうしたの?」

「あ~蘭……実はね……」


 浅田蘭に事の次第を説明すると、両腕を組んでう~ん……とうなる。蘭は懐から小さく細い白の筒を口にくわえたのを見て、焦った私はそれをひったくるように彼女の口から取り上げた。


「ちょっ!女子高生がタバコなんてダメだよ!」

「え?ああこれココアシガレットだよ?」

「え……?あらら?」


 ものすごく顔が熱くなったけれど、とりあえず目を逸らしながら白い筒ことココアシガレットを返す。しかしなんでまたこんなややこしいものを学校で食べようと思うのだろうか。


「で、実家に来られるのが嫌なんだよね?」

「ああそうだった、そうなんだよ~」

「唯一の味方だったはずの美雨にも裏切られたと……諦めなよ」


 はい、試合終了。諦めるしかないのかぁ……脱力した私は再び頭を机に打ち付けるように突っ伏した。ゴツンッといういい音がしたが、かなり痛い。でももう痛いという気力も湧いてこない。結局あの親に会わせるのか……


「なら今は何も考えずに遊ぶことにしよう!」

「遊ぶ?」

「そう!部活の休みもらって、一緒に遊びに行こうよ!」


 つまり、とりあえず楽しいことして一旦忘れることにしようかな……でも昨日も街に繰り出したんだよなぁ。どこに遊びに行くかな。と頭を伏せたまま考えていると、肩を指でつつかれる。頭だけ動かして隣を見るとスマホの画面があった。


「……なにこれ?」

「近くの温泉、日帰り風呂で700円なんだ、放課後一緒に行かない?」

「おお~いいね~」


 と、言ったところで始業のチャイム。全員が席についたところで私も体を勢いよく起き上げる。その時に「ぬぅん!」という変な声が出て前の席の男子がビックリしてこちらを振り返ってお互い超赤面……学校で変な事するのはもうやめよう……


「澄川さん!今日は日直ですよね?なぜ職員室に日誌を取りに来なかったんですか?」

「ひぃぃ!ごめんなさぁい!!」


 今日はなんだか、嫌な予感がするな……なんだか悪寒が……そしてその悪い予感は、見事に的中するのであった。


「ぎゃあ!黒板消しクリーナー落としたぁ!!」


「ゲッ!シャーペンの芯切れてる……!?」


「お弁当……忘れた……」

「なんだか今日は大変だね」

「美雨……アンタが味方なら、まだ心強かったのに……」

「ええ!?一応味方だよ!」


 一応ってのが、完全に本音ね……だってあの場で反対しなかったし……いつか覚えてなさいよ……そう思いながら私は教室から飛び出してアパートにダッシュで帰る。確かキッチンに置きっぱなしにしていたはずだから五分で帰ってこれるはず……三分で部屋に戻ってキッチンに置いた弁当箱を開けたとき、私は再び絶望した。


「な、中身が……ない……!?」


 作り忘れていたのか!?そう思った私はとにかく腹に何か入れようと冷蔵庫を開いて、再び目を疑った。


「そうだ……思い出した……」


 私は昨日の夜に冷蔵庫の中身が無いことに気付いて、今日は購買のパンを買う予定だったんだ……なのに私の実家に行くことを聞いた途端全部吹っ飛んだんだ……今から購買に行ってごはんがあるだろうか……学食のごはんも人気のメニューはきっと売り切れている……おそらく生姜焼き定食くらいしか残ってない……


「ああああ!!もうなんて日だぁ!!」

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