第3話

そう考えたりんは告白していた。

貴方が好きだと、何気ない会話の中で。

その後は空回りばかり…。


私なんて所詮大したことない女。

魅力?色気?半人前くらいか、それ以下か。

誰か、私の肩を叩いて、この勢いを止めて欲しい。

優しく、わかりやすく。心が折れない程度に。


いい結果を聞けることもなく、やんわりと断られていた。この先どうなるかは分からないという含みを持たせて。


諦めればいい。既婚者であり、いきなり告白されても応えることなんて出来るはずもない。先に進めば傷つくし、カッコ悪いし、いい結果なんて生まれてこない。誰も幸せにはならない。

でも、もしかしたら、と淡い期待を抱いていた…。そんなこと起こるはずもないのに。


私だって、彼のこと、そこまで好きじゃないかもしれない。

ただ、思い通りにならないから、私のことを好きになってくれないから、必死になっているだけなのか。たかが塾講師だと思いたかった。

という私の方なんて、ほんと大したことない歯科医。

ただ毎日外来を診察、簡単な手術するだけの、ただの歯科医。

誠意はあるけれども。何万と私の代わりなんている。

冴えない女子。

ここで踏みとどまるなんてできないと叫んでいるりんの心。

でも踏みとどまるしかないんだよ、と言い聞かせてみる。

はっきり言って迷惑なんだよ、あんたって女は。

ちょっと相手にしたら、本気になって、バッカじゃないの?


メールの返事がこないとりんの心は張り裂けそうになる。

もしかしたらコンビニに行っているから、返信できない?

タバコを吸っているから?仕事に集中しているから?

もしかして見て見ぬふりしてる?

毎日一喜一憂して、心の中は大騒ぎ。上がったり、下がったり。


仮に、うまくいったとして、その先は?

何もいいことなんて待っていないよ。多分。

大して好きじゃないって、その人のこと。

ただ盛り上がって、恋に恋して、楽しくしたいだけだろう?

と、自問自答を繰り返す。


でも彼から発する言葉はりんの心を奥の奥まで癒してくれる。

優しい言葉で次の日も、その次の日も幸せな気持ちになれる。

話したい、もっと興味持って話して欲しい。

要求されたい、愛されたい、触れられたい、くっついてみたい。

ただの欲求不満なんかじゃない。誰でもいい訳ではない。

彼の言葉は私にとっては魔法の言葉なんだ。


その後、大林から話しかけて来ることはほぼなかった、りんから話しかけることはあっても。

でも話すと、それはとてもとても楽しい時間だった。背景はピンク色の世界。

もっともっと話していたい。

そして眼鏡の奥のその瞳をたった一瞬でいいから、独り占めして見つめてみたい、眼鏡を外して。


そんな夢のような時間はやって来ることはなかった。

彼のことで頭がいっぱいだった。考えないようにしても、いつの間にか彼のことばかり考えていた。

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