第2話

そんな簡単なつもりはなかったけど、りんは塾講師である大林に初めて会った時から何かを感じていた。


塾選びなんて口コミから実際の進学率、費用、子供のレベル…。

色々な事で親たちは進学塾を選択する。

ベットタウンであるこの町で、ランキング毎年1位を誇ってきた進学塾。その塾長を10年以上前から任されている、大林はスーパー講師だ。年齢は40歳すぎで話術もさることながら、子供達の能力を最大限に発揮させる力を持っていた。周りの講師からも一目置かれている。他の塾から移ることをりんに何度も説得してきたのも、大林だった。


仕事ができる、外見は気取らず、誠実さを醸し出している時代遅れな風貌は、どことなくりんの心をくすぐった。

タイプなんだろう、きっと。

強気に生きる、生きてる人を見ると惹かれる。

こうなんだ、って言い切る人には惹かれる。

世の女性たちは皆、そうかもしれないと、りんは考えていた。

一般的、平均的なことなのかもしれない。

でもまあ、外見的にも、既婚者であるということも考慮すると、常識のある人なら惹かれないだろう。


彼女は夢見る少女から抜け出せずにいた。

結局のところ経験不足からなのだろう。そして貪欲、わがまま、正直であるということも。

よく言えば真っ直ぐ。真っ直ぐ過ぎた。

思わせぶりな言動があるが、大林は一線を越えることはなかった。

彼は最終的にりんに隙を与えなかった。

そのことが余計りんの気持ちを燃え上がらせた。必要にされたいと。

特に突き放すような言い方をする。

でも突き放されるなら誰でもいいというわけではない。

彼はふと優しい言葉をかけてくれる、りんを想っているからという様な…。

これがいわゆるツンデレ、ってやつなのか。

バカだ。かないっこないってわかっている。

でももしかしたら、隙があるのでは?私のこと好きなのでは?と思ったりして。

会いたい、話したい、眼鏡を外してみたい。そんなことばかり考えていた、気がつけば。頭の中は大林のことでいっぱいだった。

でももし直接会って長々と話をしたら、できたなら、逆に気持ちも覚めてしまうかもしれない。

実際にはそんなシュチュエーションもないまま、妄想し、りんは突っ走っていた。


夢見る少女から抜け出せないじゃないか。

直接会えばいいのか。会えないだろう、今更。

告ってる場合じゃない?

いや、簡単なことだ。スッキリしたい、告って散って諦めよう、さっぱりと。

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