白銀のコンキスタドーレス

七四六明

明星スターダスト

侵略の始まり

 私は、私が嫌いだ。


 勉強はまぁまぁ。運動も、普通にやればそこそこ。つまりは平均だ。今年高校生にもなるが、しかし私は私の得意分野を見つけられずにいた。

 この歳になると、人間は頭のリミッターを外されて異能の力を使えるようになるけれど、しかし私の能力はなんというか地味と言うか、それで一体なんの役に立つのかというもので、結局私は期待を裏切られたわけだ。

 何より私は、私の名前が嫌いだった。


 雨野馳六華あめのちりっか


 雨なんて、みんなの嫌われ者だ。遠足や修学旅行に雨が降れば、何の非もない私が責められる。それが冗談半分だとわかっているけれど――いや、わかっているからこそイヤだった。

 冗談半分だから、余計質が悪い。

 だから私は中学の頃は、よくそういうイベントを休んだ。でもだから私は付き合いの悪い女って扱いになって、ついに私は学校から除け者にされた。

 だから結局私は不登校になって、中学に行ったのはたった一年ぽっちだった。

 親は私のことにまるで無関心で、私が不登校になっても何も言ってこなかった。まぁ時々、二人であいつは現実が見えてないだの、まだまだガキだのと散々言っているのは知っているのだが。

 そんな親のことが嫌いで、そんな親に縋って生きるしかない私が嫌いで、私は高校に行くとなったとき家を出た。

 学校は行っていないけど、勉強してないとは言ってない。それでも他の人と勉学で競えるほど、上達もしていない。先に言った通り、勉強はまぁまぁのままだ。

 だから合格した学校は、勉学に関してはまぁまぁのところだ。選んだ理由としては自分でも行ける学力しか求めてなかったことと、全寮制だったから。

 特に何かに特化しているわけでもなかったし、何より元の中学からずっと遠かったから、私としては最良だった。

 

 そんなわけで私はここ、明星みょうじょう高校に無事に入学。入学式もHRも終わって、さて寮に帰ろうかとしたそのときだった。


「ちょっと待て! 待て待て待て待て待て待て待て待て! 待て!」


(そこまで言われなくても、待つのだけれど……)

 そんな私の気分なんて知らないのだろう彼は、ぜぇぜぇと息を切らしていた。大声を出しながら階段を駆け上がったのだから、まぁ当然と言えば当然なのでしょうけれど。

 

「なぁおまえ、コンキスタに興味ねぇ?」

「は……?」


 その後のことを知る私が、当時のことを語るのならこの一言に尽きる。

 

 それが私――雨野馳六華の今後を変える、転機だった。

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