第3話
学内に入るとまず名前を確認され、事前に配布されていた学生証を提示すると学堂へと案内された。丁寧に生徒1人ずつの名前が彫られた椅子に座り入学式までの時間を何もする事なく過ごしていると、やがて堂内の照明が落ち中央にある壇上へとスポットライトが当てられた。
『これより第65期生入学式を行います。一同、中央に傾注。』
無機質なアナウンスが響く。その後、恒例の校長による有難くも長い話が始まった辺りでうとうとしつつ、何が言いたいのかいまいちよく分からない内容を聞き流していると漸く終わったのか、拍手と共にスポットライトが一度消える。
『新入生代表挨拶。第65期生代表前年度LoMU-15覇者。荒魂環。』
続いて、名前を呼ばれた環は快活な返事をした後壇上に登る。ちなみに代表挨拶がある為環は最前列となっていた。
「暖かな日差しが差し込む今日ー」
先程まで長々と言葉を並べていた校長に向かい事前に準備していた挨拶を読み上げる。なるべく感情を込めて読み上げる様両親が何故か環に土下座をしてまで頼みこんできた成果もあってか模範的な読み上げをすると卒業式でもないのに目の前の校長は何故か涙を流し一言一句に頷きながら聞いていた。
「ーここに、65期生はLoMU-18の舞台で天下を取りやがて戦う世界へ羽ばたく事を誓います。第65期生代表LoMU-159連覇王者荒魂環。」
最後は決めていた挨拶ではなくアドリブで名乗りを上げる。その言葉にアリシアを始めとした海外リーグ上位の留学組が反応し、環も見て分かる彼らに笑みを浮かべて返す。U-15の開会式の挨拶から続けている環なりの宣戦布告だった。
やがて入学式は恙無く終了し、壇上からホログラムで暫定のランキングが表示される。このランキングが所謂クラス分けとなっており40人区切りで一クラスが纏められている。参考となっているのは前年度までの公式記録らしく、環は堂々の1位。次いでアリシア達海外組やJPリーグ上位人が連なっていた。
『それではクラスへと案内しますので、上位の方から順に学堂を出てください。』
やがて、全ての新入生のランキングが表示された後に流れたアナウンスに従い、環は立ち上がり学堂を後にした。出入り口に着くとラディが待ちかまえており、彼がこのクラスの担任と言う事を聞いているといつの間にか40人揃っていた。そのまま皆緊張からか終始無言のままラディに着いていき教室に到着。窓際最前列からランキング順に座る様指示を受け言われた通りに全員が座ったところでラディは教壇に立ち見渡した。
「ふむふむ。粒揃いの良いクラスじゃないか。このまま来年度まで全員このクラスを維持できる様頑張るんだ。追われる立場と言うのは追う側より圧が大きい。…窓際の者達はよく知ってると思うがね。」
ちらりと窓際を見たラディの視線に対し微動だにしない窓際の生徒達。開催国は違えど其々が各リーグの覇者と言うだけあってその姿勢は堂々たるものだった。
「それではまずは自己紹介からいこうか。とりあえず俺から。ラディ・フィールマン。知っての通り元LoM10位だ。『解体屋』だの魔術師殺しの魔術師だの色々二つ名はあるけどまぁお前達も色々あるだろう。それじゃ次。上の君達はお楽しみって事で40位の君からいこうか。」
「は、はいっ‼︎えっと、
淡々と自己紹介を済ませたラディに指名された男子生徒が立ち上がり、名乗り上げた後頭を下げて着席する。その流れに乗ってクラスのランク下位の者から順に自己紹介を始めていき、残るはクラスの上位10人となった。
「さて、残りは化物揃いの10人ってとこか。じゃ、順番にどうぞ。」
「しかと了解。某は武極戦2位の剣術家。
髪を後ろで結った男子生徒が頭を下げる。その腰元には制服に不釣り合いな二本の刀があり、常に左手を鯉口に添えた姿勢のまま静かに着席した。
「武極戦はLoMの武術版だ。その二位と言うのは中々素晴らしい。魔術と違い武術は相性ではなく腕だ。今後も精進すると良い。次。」
「はいはいっ、アルヴェイド・アリスター。ドイツのGEリーグ覇者で『
屈託のない笑みを浮かべた好青年が手を振りお辞儀をして着席する。その様子を胡散臭そうに見ていたその前の女子生徒が立ち上がり
「…USAリーグの覇者。『魔導迷彩』、『幻影』。名前はメイナ。メイナ・ディロン。」
短く済ませた。
「それじゃ次は私か。リーグ未所属。『神隠し』の
リーグ覇者達が連なる中1人だけ未所属と言うのが気になった環達が振り向く中、舞花本人は気にした様子もなく首を鳴らし挑発的な笑みを浮かべたまま座り込む。その様子に何処か本気の樺音と似た雰囲気を感じた所で視界が遮られた。
「LoMJPリーグ2位。
「はぁ…。君は相変わらずなんだね。後なんで男子の制服着てるんだ。」
じっとりと環だけを見つめながら口元を緩め、殺意を剥き出しにしている男装した焔丸の視線から逃げる様に背を向けつつラディに視線を送ると、彼も諦めろと言わんばかりに苦笑していた。
「さて、残るは今年の4強か。君達は隠していてもどうせバレるから得意魔術や流派を教えてくれ。設備を壊さない程度なら実践しても良いぞ。」
こちらを見たラディはそのまま机をずらし空間を作る。と言っても教室内の為然程広い空間とは言えないが、1番場所を取るだろう環が見せるくらいのスペースは確保されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます