第2話
「この男がわ、私のスカートが捲れたのを見たのよ‼︎」
「だ、だからわざとじゃないしそもそも目を逸らしたし…。」
野次馬が集まる中同じ様に騒ぎを見に来た環は、渦中の2人を交互に見つつどうもないただの言い争いだと早々に切り上げようとした。
「なっ…このU-15のEUリーグ女王であるアリシアから目を逸らすなんてなんて無礼な…これだから武術家は‼︎」
「そんな横暴な‼︎」
「アリシア…ん?『
名乗られた名前に振り返り、野次馬を掻き分けてアリシアに近づく。
「ちょっ、な、何よ貴方は⁈」
「うわ、本物じゃん。何しに来たんだホント…。」
「そっくりそのまま今の貴方に返すわ。大体誰なのよ。」
明らかに不機嫌そうなアリシアは、先程下着を見てしまったらしい男子生徒を睨みながらもこちらを一瞥し、その豊満な胸の上に手を組んだ。
「ああ、通りすがりのJPリーグ王者だから気にしないで。」
「へっ⁈じゃ、じゃあ貴方が『
「丁寧に紹介有難いけれど今は『
態度を一転させたアリシアは、男子生徒を睨みつける事すら忘れこちらを向いて手を握ってくる。嬉しそうに飛び跳ねる彼女の二つの暴力装置から目を逸らしつつ握手に応じていると、辺りはU-15の覇者2人に対し別の意味でざわつき始めた。
「てかなんで暴力聖女がここに?」
「勿論それは留学よ‼︎貴方を倒して私は真の覇者になるの。」
「へぇ…。」
「ちなみに来てるのは私だけじゃないわ。EAから『猛虎神速』、USAから『
「大まかな所上層が入れ替わって居づらくなったのか打倒僕って感じなのは想像ついた。」
環の言葉に対しアリシアは苦笑で返した辺りその通りという事らしい。これ迄担ぎ上げて来た強者達を権力だけで即座に転落させる事は世間的に無理がある。となると、公式戦無敗の極東王者を倒すといった何かしらの名目を立てて国から追い出されたのだろう。
「あのさ、盛り上がってる所悪いんだけど…。」
「あら、まだ居たの?すり潰されたくなかったら消えなさいゴミ虫。貴方に時間を割いて貴重なタマキとの語らいを無駄にしたくないの。分かったらその辺の女子の下着でも見て来なさい。私のをこれ以上見ようとするなら本気で殺すわよ。」
「いや、だからそれは事故であって故意では無いからっ‼︎」
2人の会話に水を差す形で先程の男子生徒が声をかける。その様子から察するにどうやら弁解をしたいらしい。
「つまり、刻印の無いゴミ虫は見たくも無い私の下着を見た上で鼻の下伸ばしつつ冤罪を申し出ようとしてる訳?断罪するしか無いわね。」
激昂したアリシアの体に6対の羽を模った刻印が浮かび上がる。その瞬間から周囲に濃密な魔力が集まり、大気が震え始めた。
「ちょっ、待って⁈そう言う訳でもなくて…っ‼︎」
「言い訳無用‼︎」
正に一触即発。直ぐにでも魔術を行使出来る姿勢に入ったアリシアに対し、慌てふためきながらも構えを取る男子生徒。その様子を2人から離れた環は見つめていると、突如2人の間に爆音を響かせながら何かが飛来した。
「おいおい、粋が良いねぇ今年の新入生も。だけどちょーっと場所弁えようぜ?」
立ち上がる土煙の中から長身の男が現れる。どうやら彼が横槍を入れた本人で間違いないのだろうが、ヒートアップしているアリシアの目の前に現れるのは例え魔術師であっても危険である。
「けほっ…けほっ…ッ⁈な、何なのよ次から次へと…ッ‼︎」
「何ってそりゃお前。暴走した新入生を止めるのは教師の役目だろう。そう思わないかい?アリシア・セラフィ。」
ゆっくりと彼女の元へと歩き出した男が指を鳴らすと、集中して居た魔力が霧散し消えさった。その様子に驚いている環に気付いたのか、にっこりと笑みを浮かべて手を振り始めた。
「やぁやぁ、そう言えば総帥君も今年から高校生だっけ。U-15の決勝ぶりだねぇ。」
「…あぁ、なるほど。その節はお世話になりました。ラディ先生。」
環が頭を下げると、気にするなとばかりに肩を叩いてきた。そして再び2人の方へと向き直すと
「そんなに喧嘩したいなら入学式の後に好きなだけ訓練所が開いているんだ。そこで決着をつけると良い。」
とだけ言い残し、爆音を立てて地を踏み抜き空の彼方へと飛んで行った。
「な、何者なのあれ…。」
「ああ、あの人はラディ・フィールマン先生って言って強化魔術と分解魔術を得意とする魔術拳士だよ。」
呆気にとられていたアリシアに正体を説明すると、2秒程目をぱちくりさせた後驚愕の表情を浮かべラディの飛んで行った方向を見つめていた。
と言うのも、ラディ自身元LoMの10位と言う輝かしい成績があり、『
やがて、怒りを有耶無耶にされ消化不良を起こしていたアリシアが男子生徒にガンを飛ばしたり一方的に暴言を吐きまくっているのを眺めていると入学式開始30分前を知らせるチャイムがなった。当然、今から殴りかかる訳にもいかないアリシアは「後でそっちの教室に行くから覚悟しなさい‼︎」と言い残し、同情の眼差しを送る環を連れて学内へと入っていった。
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