秋
夜中に公園へ向かう。
もう通い慣れたこの道だが、知らず知らずのうちに変わっていたことがある。
公園で一人になりたくて通い始めた場所だが、いつしか彼女に会うために公園に向かっていた。
僕は彼女を拠り所にしていた。彼女と話す時間を。
けどそれは恋愛感情とかではなくて、心のそこから一緒に居たい。
そう思っているだけだった。
公園にたどり着くと、彼女はもう来ていた。
ビールを上げて軽く揺らして、僕を見ている。
僕は軽く挨拶すると、今日あったことを話す。
彼女は、適当に相槌をうつ。ふーんとか、あーとか、そんなレベルの事。
次に彼女が今日あったことを話す。僕も適当に相槌をうつ。
ふーんとか、あーとか、そんなレベルの。
ふたりとも話し終えて少し間があった。
「ずっと夜ならいいね」
ふと彼女が言った。
「そうですね」
このそうですねにはたくさんの思いが詰まっている。
一生を一緒に居たい、ってレベルまで来ているのだ。
だけどそれを友達同士のままでなんておかしなこと認められるはずもない。
「毎日夜が来てくれるだけ幸せですね」
僕は遠くを見ながら言った。
「そうだね」
このそうだねにはどれくらいの思いが詰まっているのだろう。
彼女の考えていることすべてが知りたかった。
「私さ」
彼女がそっと口を開いた。
盲目の老人が杖を使わずに恐る恐る歩くような、そんな不安そうで弱々しい声だった。
「嫌われたくないんだよ」
僕は返事しなかった。
「友達でいたいね、ずっと」
少し黙ってしまった。
彼女は遠くを見ていた。
「そうですね」
彼女は泣いているようだった。月明かりと街灯に照らされて涙が光っている。
「僕はずっと友達で居たいと思ってます」
一瞬黙ってすぐに彼女は口を開いた。
「一生仲良くしようね」
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