天動説の人々
現代の人間で、天動説を冷ややかに見ないものはいないだろう。
利益やプライドのために古い知識に固執し、真実を受け止められないおろかな人達。そんな風に感じるものは少なくないはずだ。
天動説が間違っていると解りながら、それを否定出来ない学者もいただろう。しかし、多くの人間は、今まで当たり前の事実と信じていたものが、根本から覆されることを受け入れられなかった者が殆どだろう。
現在、相対性理論が間違っているという人がいたら、それを信じる人が何人いるるだろうか。
アインシュタインの相対性理論は言うまでもなく、現代科学の金字塔である。この金字塔を基礎として建てられた理論は山ほどある。相対性理論が間違っているとなったら、これら無数の科学や理論までも瓦礫と化してしまうだけでなく、常識自体も灰燼に帰してしまう。
世界は一丸となってその人を糾弾するだろう。
話は変わるが、科学者や研究者たちに多額の給料や高額な研究機材の購入費を出しているのは、企業や国の省庁が大半だ。
彼らスポンサーは、純粋に自己利益のために出資している。当然のことだ。
だから、大学や国の機関の科学者や研究者、技術者はスポンザーの利益になる研究を強いられる。少なくとも「自分が好きな研究もしていいですよ。でも、利益になる研究もしてくれないと、お金出せないよ」というのがスポンサーの本音だ。
そして、科学者達もそんなスポンサーの意向を忖度する。
これが今も昔も変わらない「儲かる科学」だ。
相対性理論が否定され、それに関わる研究や理論が水泡に帰してしまうと、不利益を被る権力者や有力者がたくさん出来てしまう。だから、科学者達はその理論を猛烈に攻撃するだろう。
それが合っているか、間違っているかが問題なのではない。スポンサーを失い、地位と名誉と資産を失うことが問題なのだ。
高名で学位も高い学者たちがアンチ相対性理論を集中攻撃したら、一般の人々はどう思うだろう?
勿論、相対性理論は間違ってなどいない、と主張するだろう。
有名な博士たちがそう言っているのだから、間違いないと。
でも、相対性理論を本当に理解している人はどの位いるだろう。
私が高校の時に先生から聞いたか、大学の時教授から聞いたのか忘れたが、その「先生」は、特殊相対性理論と一般相対性理論を本当に理解できる人は世界でも二三人の人だろうと言っていた。
E=mc2(エネルギー=質量×光速の二乗)という公式は知っているが、それがどういう方程式によって成り立っているか、その方程式の意味と有効性は何なのか、と云うことになると我々は全くわからない。専門の数理物理学者でない限り、これ以外の方程式は全く知らない。
つまり、「だって、皆が正しいっ言ってるから正しいに決まってるじゃん」ということだ。
そう考えると、中世に天動説を支持した多くの一般民と我々は大して変わりない。
相対性理論を例に取り上げたのは、ちょっと大胆だったけど、「我々が当然常識」と思っていることを否定されても、我々は受け入れられないのだ。
特に多くの専門家や学者がそう言っている時は尚更だ。
我々はいつだって、ガリレオを馬鹿にして、糾弾して、背教徒だとなじった、中世の多くの人々と同じになる素養は十分に持っている。
柔軟で優秀な頭脳を持っていれば、そんなこともないのだろうけど、優秀な頭脳を持っている人は少ない。
せめて柔軟な姿勢を保つことだけは志していきたい
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