いなばの白うさぎ
結城藍人
いなばの白うさぎ
昔、
ある時、白うさぎは川を渡ろうとしましたが、前にあった橋がありません。すると、そこに大勢の人足がやってきました。台風で流された橋をかけ直すためです。
人足の頭が人数を数えようと点呼を始めましたが、誰も並ばずに好き勝手に番号を言うので、まったく数が分かりません。また、三より大きい数字が言えない人足もいます。
それを見た白うさぎが言いました。
「川の中に対岸まで一列に並んだらオイラが数えてあげるよ」
それを聞いた人足頭は人足全員に向かって、川を横切るように一列に並べと命令しました。
人足が一列に並んだのを見て、白うさぎは言いました。
「それじゃ数えるよ。一、二、三、四、五、六……」
人足の頭を踏み台にして数えながら、白うさぎは対岸に向かいます。
「……九十八、九十九、百! 全部で百人だったよ~」
そう言いながら対岸に飛び降りようとした白うさぎを、最後の人足が捕まえました。
「待て、お前は俺たちを数えるのをダシに川を渡ったな?」
「え、ええ~? 別に騙してないじゃん! ちゃんと数は数えたんだし!!」
白うさぎは抗議しましたが、人足たちは聞き入れません。
「ふてえ野郎だ、こらしめてやる!」
そう言うと、白うさぎの上に全員でのしかかっていきました。百人もの大柄で屈強な人足が、どうやって小さな白うさぎの上に全員でのしかかることができたのか作者にすら分かりませんが、とにかく全員にのしかかられてしまった白うさぎ。
哀れ、のしイカのようにぺっちゃんこ……とはなりませんでした。百人が退いてみると、その下からピンピンした元気な姿で出てきます。
「な、なんで平気なんだ!?」
思わず問いただした人足に、白うさぎは胸を張って答えました。
「百人乗っても大丈夫♪」
いなばの白うさぎ 結城藍人 @aito-yu-ki
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