第2話PN仙狐
現在俺は、ある少女二人に精神を抉られたのである。
片方は幼馴染である祈咲 大和。もう片方は見知らぬ少女、仙璃 弧羽千と名乗り、いきなり現れ、俺のWeb小説のPNを言った。
そして俺の小説を面白くないと断言しきった少女……そしてその後下駄箱で合流した大和も、イキイキしながら面白くない♪と告げた。
ある日の朝の事である。
俺は朝、何気なく机に置いてあるPCへと向かい、Web小説を開いた。
メールボックスを見ると、一通のメールが届いていた。
そのメールは俺の憧れであるPN《ペンネーム》”仙狐”という人からだった。
俺は焦ってそのメールを開く。
そのメールには、こうつづられていた。
~仙狐~
初めまして。仙狐と言います。貴方の小説を拝見させて頂きましたが、異世界ファンタジーを主としてかいているようですが、よく内容が伝わって来ません。
それに有名な作品のインスパイアなどが多くあり、あなた自身の小説を書いているとは思いませんでした。
長々と申し訳ありませんが端的に言うと、面白く無かったです。ですがあれです。諦めたらそこで試合終了です。諦めないで頑張ってください。
以上憧れの仙狐さんからのメッセージはダメ出しでした……あと有名な作品の名言を持ってきただけでした…。
見知らぬ少女に言われ、幼馴染に言われ、さらに憧れの作家にまで面白くないと言われるなんて……
「こ、こんなことって───」
──あまりにも酷いとは思はないか?
だが、昨日二人に面白くないと言われ、今一度自分の作品を読み返してみようと思い、読み返してみた。
あらゆる異世界ファンタジーを参考、楽しみとして見ていた俺としての感想は──
──面白くないじゃないか。
その一言で終わりを告げた。
書いている時は面白い、楽しい、そう思っていても、書き終え、公開し、読み返してみると、色々な悪点が浮き出てくる。
そして出てくる最後の感想は
「つまらない」
この一言だけだ。
今書いているものだった読み返してみたら大して面白いものではないのかもしれない、これから書くのも面白くないのでは?といった不安や絶望に押しつぶされるかもしれない。
頭の中では今の状況を一変する事を考えず、悪い方へと持っていっている。
だがここで一つ、Web小説サイトを閉じたPC画面に気になる点が一つあった。
それは、メールだった。
特に誰とも共有していないこのPC。だが、メールボックスには”1”としっかり右上に書かれていた。
恐る恐るメールを開こうとすると……
ピンポ~ん
下から大和がチャイムを押す音がした。
そのまま大和は「いるんでしょー」と言ったがメールの方が気になる俺はその声を無視した。
しかし、鍵は閉めてあったはずだったのだが、何故かガチャりと鍵の開く音がなり、ドンドンと俺のいる部屋へと振動が伝わってくる。
そして遂に……
「慎也君、学校行こーか♥」
「お断りさせて頂きまぁ!?」
──お断りさせて頂きます。
最後まで言う前に何故か腹に激痛が走り、倒れ込んだ。そして大和は気絶寸前の俺の首根っこを掴みズルズルと引きずっていった。
そのまま大和に連れられ俺はメールを見れず学校へ行く羽目となった。
学校への通学路では「学校めんどくさいね~」とか、「シンヤさん」だとか、色々と日常会話が飛び交っていた…?シンヤサン?
ふと後ろを振り返ると、そこには昨日公の場で俺の小説を「面白くないです!」と言ったあの少女、仙璃 弧羽千がちょこんとこちらを見つめ立っていた。
「おはようございますシンヤさん、小説の方は進んでますか?」
デリカシーがないのか、昨日面白くないです♥と言った相手に対し、小説は進んでいるか?と聞いてくる。
でらぼぅめい進んでるわけねぇだろぅ!と心の中でツッコミ、仙璃には普通に答えた。
「昨日あんな人の多い所で面白くないと言われたんだぞ……それも二回。そんな事があって手が進むと思うのか?」
「いや知りませんよ、面白くないのは本当のことですし。というかあれだけ有名作品をインスパイアして面白く出来ないのは逆に天才と呼ぶしか他ないかと……」
あはは♪この雌はどこまでも俺の精神を抉る様な言い方をしてくれるなぁ♪
だが本当のことなので言い返すことの出来ないおらは俯きながら「ごもっともです……」と言っている俺を見て大和は腹を抱えて爆笑していた。
なんだろう、俺の小説を面白くないと言った時から大和は前よりイキイキして、よく笑うようになった。
俺の面白くない小説の事をずっと聞かされてストレスでも溜まってたんだろうかと思うと少なからず罪悪感が俺の心に現れる。
しかしだが俺の小説の話聞いてて笑うこと少なくなるってそれを知った俺が笑顔を失いそうだよ?
今まで笑っていた大和は、「はぁ~」と言いながら笑い涙を拭いていた。
そして、大和は仙璃の方へ行き、笑いそうになりながら仙璃へ向かって言う。
「ねぇねぇ、慎也君の小説面白くなさすぎて逆に面白いよね」
「あっ、確かにそうですね……そう考えるとシンヤさん、貴方の小説は面白いです」
ぐっと親指を立てながらこちらを向く仙璃は非常に腹立たしかった。
そしてやはり大和は腹を抱えて笑っていた…
そして俺はといえばそろそろ面白くない弄りに苛立ちを感じ少しばかり怒りを込めた感じで言った。
「仙璃さんよォ、俺に色々と言ってくれるけどお前は小説書けるのかよ?」
「私ですか?貴方と同じサイトで書いてますよ?というかつい先日あなた宛にメッセージを送ったはずでは?」
なんと!俺と同じサイトで書いてると!?是非拝見させてもらおうではないかと思い俺はPNを尋ねた。
「PN何?お前の小説俺読みたいんだけど」
「あ、”仙狐”というPNです。あのサイトでは結構有名だと思いますよ?自分で言うのは何ですが書籍化もしてますし……」
……?
俺、弟子入りします(仮) 烏丸 ノート @oishiishoyu
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