俺、弟子入りします(仮)
烏丸 ノート
第1話才能は無かったようです
最初は、ただなんとなく、やることも無く始めてみようと思ったWeb小説への投稿。
Web小説で開催される大会?みたいなのから小説家になった人もそう少なくはないと思う。
だから俺も小説家を目指してみようと思った。
1月のある日。俺は部屋で小説を書き上げていると、下からピンポーンと、チャイムの音が鳴った。
「はぁ~い」
ピンポンピンポンピンポンと、返事をしたら酷くなって返ってきた。
聞こえなかったのかな……
俺は、書き上げた小説を投稿し、「はぁ……」とため息をつきながら階段を降りて玄関へと向かった。
「はいは~い、どなたですかー」
ガチャりとドアを開け、目に入ったのは制服を着た女の子だった。
「今日から学校でしょ!慎也君も準備しないと」
あぁ、どうしよう……今日から学校なのか
──何がどうしようなのかと言うと、現在俺の身に起こっている事である。
俺、葛城
「え、あ、学校って今日からだっけ?」
幼馴染、祈咲
「またまた小説書いてて宿題やってないんでしょ……」
「ごもっともです……」
また、というのは夏休みも俺は小説を書き続け投稿し続け、夏休みの宿題を3分の1くらいしかやってなかった。
「あぁ……早めに来てよかったよォ~、前科あるもんねぇ……慎也君」
早めに来た…と言われ俺は時計を見た。
時刻は午前六時三十分だった。
学校へは徒歩20分程度のところなのだが、俺が宿題をやってないと感ずいた大和は相当早めに来てくれたらしい。ありがたい事だ。
俺は大和を家に入れ「ありがとう」と礼を言いながら答えを移した。
宿題も終盤に入ったところで大和は小説の話題を持ちかけてきた。
「で、今回はいい感じの出来たの?小説」
「ん?そうだな~今回のはいつものより完全に面白いと思うぞ」
俺は、いくつかの大会に幾度と無く挑んで来たが、どれも一次予選通過ならずの小説ばかりだった。
しかし今回はかなりの自身を持って面白い作品ができたと言える。
断定は出来ないが一次予選はかなり高確率で通過するであろう作品だ。
「ふぅん、ジャンルは?」
「異世界ファンタジーだ」
「そうなんだ」
大和は自分で注いできたお茶をずずっと一口飲み、口を止めた。
そのまま俺の宿題が終わるまで沈黙が続いた……。
宿題を終えた俺は、学校へ行くべく準備を始めた。
ケータイ、宿題を持ち俺と大和は家を後にした───。
学校も終わり、俺は家へ帰ろうと下駄箱へと向かっていた。
その途中──
「貴方……”シンヤ”ね?」
「ん?おぉ、確かに慎也だけど?」
誰だこの美人さんは……
その少女は、俺をキッとした目で俺を睨みつけていた。
なにかしただろうかと考えに考えたが特に思い当たる節もなく、俺はそーっと帰ろうとした。
が──
「ちょ、なんで帰ろうとするんですか!?」
「いや、なんか睨まれてるだけで何もしてこないから用ないのかな~?って思って……」
「に、睨んでなんていません……よ」
「そーかい……」
俺は小さく溜息をつきながら「じゃあなに?」と、問うた。
しかし彼女は俯き《うつむ》喋る気配は無かった…。
「用ないなら俺帰るから、色々とやることあるし」
まぁ主に小説とか小説とか小説とか小説とか小説とかなんだけどな。
それに丁度今新しい異世界ものが書けそうなんだ、早く帰りたくてたまらない。
だがしかし───
「や、あのっ………ちゃ、ちゃんと用事があって貴方に会いに来ました…」
「はぁ……だからなんですか、喋ること忘れちゃいましたか?というか名前は……?」
「わ、たしの名前は仙璃
あぁ、うん、知らないなぁ。
仙璃さんは俺が「あぁ、そうですか」と答えるとすぐにこう続けた。
「貴方は、Web小説で最近、いいえ今朝新作『異世界転生物語』という小説を投稿しましたね?それに関して少し言いたい事が……」
……なぜ知っている?
俺のPNは”シンヤ”だ、ただ漢字をカタカナに直しただけ、だがそれだけで俺を探し出すなんて無理に決まってる……。
ここで俺は、こいつが俺を呼び止めた時の状況がフラッシュバックする。
あいつは俺のことを”慎也”の発音ではなく”シンヤ”の発音で呼んでいた。
かなり焦っているが、俺は冷静に、仙璃さんに聞く。
「あぁ、確かにそれは俺が書いたやつだけど……なぜそれを知っているんだ?」
「そ、それは、企業秘密です…」
怖いよ……どーやって調べたのか怖いよ。隠すとこが特に怖いよ。
だがしかし、仙璃さんは俺の小説を見て言いたい事があると言ったのだ。
それはどんな事でもいい、悪いところでも、いい所でも教えて欲しい……次書くのに参考にしたい!
だがやはり現実は冷酷であった。
仙璃さんが口にしたのは悪い所の指摘でもなく、いい所の褒めでもなく、こう言い放った。
「貴方の作品……ま、ま……全く、面白くないんですよぉぉぉお!!」
彼女が言い放ったのは、ただの否定であり、指摘ではなかった。
そして、彼女は言いたい事だけいい、「さようなら」と、ぺこりと頭を下げ、そのまま走り去っていった。
俺はその場で膝をつき、頭の中であのセリフが駆け巡る。
面白くないです……と。
そのまま手を付き、俺は頭の中でこう叫ぶ──
──俺の小説は面白くなかったのかぁぁぁぁぁあ!!!
と。
俯きながら俺は下駄箱へ行くと、そこには大和が立っていた。
「さっきの話、聞いたよ♪」
何故かスッキリしたような顔で、俺に喋りかけてくる。
そのまま大和は続けて話す。
「さっきの子が言ってた事、その通りだと思うよ♪」
…………大和は傷ついた俺の心に、さらに槍を刺し、俺を撃沈させた。
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