6 はじめての探索

 いきなりだけど、私はけっこー頭が良い。

 というか、自慢できるぐらい知識が凄い。

 なにせ体を動かせないから、暇つぶしはもっぱらパソコンとかテレビ。

 知らないことがあるとすぐ調べて、理解できるところまで掘り下げる。

 気になることがあればとことん調べて、派生で新しい知識を見つけていく。

 好きなら知らなくてもいいところまで調べあげて、夢も希望も全部ぶち壊す。

 けど、どれだけ調べても調べても、底が見えない膨大な量の情報。

 最終的には、自分が死ぬまでにどれだけ覚えられるか! なんてアホな目標を立てたりもして……


 結果。家族や友人から「喋るヤッホー知恵袋」と呼ばれてました。

 できればスーパーコンピューターになりたかったわー……


 てなわけで、ことある事に分からないことがあれば聞かれて答えるのが私の日常みたいなもので、それはお兄ぃ達がやっていたゲームの攻略も含まれる。

 上のお兄ぃは、一周目で全イベント、全アイテム取得をきっちりやりたくて、やり残しが無いか気になって中々進めないタイプ。

 下のお兄ぃは、さっさと強くしてクリアしたいのはいいけれど、会話やらなんやらをけっこうな感覚で飛ばすから、何処行っていいのかわかんなくなるタイプ。

 そんなお兄ぃ達の進行状況を逐一覚えて、何処で何のフラグが立ってないとか、調べ忘れてる箇所があるとかの指摘が私の仕事みたいなもんだった。


 そんな私だから、探索は得意のようなもの。

 しかも、身体が元気に動く今なら人に頼らず調べることも容易。

 あと、視力も格段に向上してるから暗くたって全然平気、大丈夫。


 探索! らっくしょーじゃない!



 ……と、思ってた時期が私にもありました……ぐふっ。



 まず始めに、行く手を遮るのは背の高い草。

 ……いや、大人だったら膝まであるかないか程度かもしれない。


 けど私は幼女。

 しかもヨツンヴァイン。

 緑の壁にしかみえない。


 ま、まぁ森の中なんだから当然草が生えてるのは当たり前。

 ジャングル探索していたテレビや動画だと、もっと鬱蒼とした箇所を歩いていたのを知っているし、こうなるのは想定内だよ。

 こんなのは草を刈って道めばいいだけなので問題はない……と思ってたら刈る道具がない。

 ……い、いや、私には自前の鋭い爪があるじゃん。

 こんな草くらいバッサバッサ刈り取ってやればいい。

 シャキーーン! と爪を出していざ刈ってやるのぜー……と意気込んだはいいけど、両手は身体を支えるアーンド歩行で使用中。

 そ、それでもまぁ、片手ぐらいは振れるバランスは取れるから無問題……とおもってたけど何故か上手く刈れない。

 猫が草にじゃれついてるみたいに、倒れては戻って倒れては戻ってを繰り返す草ども。


 え? 草刈りってこんなムズイもんなん?


 動画だともっと簡単にバッサバッサ刈ってたイメージがあるんだけど……

 私の爪が悪いのか、やり方が悪いのか……まぁどっちも悪いような気がするけど。

 あきらめず草めがけて手を振るけれど、結果はあんまり変わんない。


 もう一度いうと、私の知識量はすごい。

 けど、経験できたこと、したことは限りなく無い。


 ち、ちくしょうめぇぇぇえええ!!


 改めて、経験値の無い自分の不甲斐なさが悔しかった。

 あざ笑うかのように、風に吹かれてざわざわ音をならす草ども……


 じょ、上等だこのやろー! 私の進行を遮れるもんなら遮ってみろよぉ!


 ヤケクソ気味に草壁に突貫!

 うべっ! ちょ、口にはい……にがっ!! べっぺっ!! 

 擦れてこちょばい…ってか痛っ!! 擦り切れた!! 絶対どっか擦り切れた!

 あーーーー! 目に入りそうで前みれないんですけど!! 暗いっ!? ここドコォ!?

 今思えば、止まってバックすればいいのに……この時はもうワケがわかんなくなってとにかく前に突き進んでいた。


 結果。

 急な坂道になっていたのに気づかず足を滑らせる私。

 転ぶ私。

 転がる私。

 止まらない私。

 ガササッ!! っという音とともに何処かへ飛び出した私。

 草が擦れる感覚がなくなったので目を開けると、飛び込んでくるのはきれいな青い空と、何処までも深く大きな森を見渡している私。

 そして浮遊感からの……落下感。


 …………ぴぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!


 崖から飛び出した私はそのまま重力に従って落ちていく。


 生後三日で…転落死…!?

 

 ソリャナイヨオオーーーー!!

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