4 はじめてのハイハイ
お腹も満腹になったところで、今後の行動をどうしようかちょっと考えてみる。
といってもできることは限りなく少ないんだけど。
①美少女の私は、探索に出て食料や水を難なく確保する。
②親や仲間が帰ってきてくれる。
③
うん。
③は絶対に回避しないといけないなぁ。
生後二日で人生…じゃなかった、モン生? をあきらめたくないし。
普通に考えたら②がベストなんだろうけど……帰ってくるかどうかわかんないんだよねー……
というか、仮に帰ってきたとしてもソレが親なのか仲間なのかの判別が正直つく自身がない。
仲間だと思って近寄った瞬間、バクリ! なんてのは御免である。
警戒してても、まともに動けないからあっさりピチューン! しそうなのが悲しいところ。
ゲームだと、BADEND見たさからわざと死亡したりする派だけど、リアルはリセットできないんだから無理。
仮に運よく
フラグじゃないよ?
昨日は運よく襲われたりすることはなかったけど、ここはたぶん森のど真ん中だ。
回りを見渡しても草、木、土、ときどき花ぐらいしか見えない。
幸いなのかどうかはわからないけど、私の生まれた場所はぽっかりと木々が生えてなくて日当たり良好。
ゲームのパッケージとかでよくあるほらアレ……「鬱蒼とした森の中で聖なる剣が突き刺さった場所だけ日がさしてる絵」みたいな感じだと思ってくれればわかりやすいかな?
残念ながら、あるのは聖剣じゃなくて割れた卵と、ドロドロの地面と、全裸のモン娘幼女だけなんだけども。
ともかくちょっとした陽だまりみたいになっていて、外的から身を守れそうなのは卵の殻ぐらいしかない。
卵の殻って防御力いくらぐらいだろ……「ぬののふく」よりは上だと思いたい。
けど、自前の「うろこのよろい」の方が防御力高そうだなぁ。
実験するつもりはさらさらないけど。
とりあえず……②を選択するには色々リスクが高すぎる。
だから①を選ぶか……って言われても。
……自殺行為にしか思えないんだよねー。
何がいるかわからない、何が起こるかわからない森の中を全裸で当てもなく探索する。
……いや、間違いなく自殺行為だよ……
ゲームや小説の中ならいざ知らず、リアルに森の中を動きまわって探索したくはない。
主人公達はよくズンズン探索できるなぁと思う。
まぁやってくれないと物語的に面白くはないんだけどさ……
私はリアルなのでやりたくはない……けどずっと此処にいたって、助けがくる可能性は低い、ついでに水も食料もない……となると……
③が一番現実っぽい……
あーッ! だめだめ! 考えてたら余計不安になってきたっ。
ぶるぶると首を振って嫌な選択肢を吹き飛ばす。
とりあえず生き残るためにはまず、動けないことにはどうしようもない。
ヨツンヴァインまでは動けたんだ、まずはハイハイで動けるようにならんと、逃げも隠れもできやしない。
よしっ! と気合を入れて、昨日のことを思い出しながらヨツンヴァインフォームへチェンジ。
コツさえ覚えてしまえば、ここまでは難なく…なん、なく……なん……
……………………シャーーーオラァ!!
で、できたぜ。 よゆーっすわ!! ……はぁ……はぁ……
地面がぬかるんでなかったらもっと早くできたね!
本当だよ!?
言い訳はとりあえずここまでにして……こっからが本番だ。
前に進むには……手を前に……前に……
……………………や、やべっ! こっわ!! これこっわ!!
バランスを崩すとすぐ頭から倒れそうでものっすごいこわいっ!
匍匐前進なら寝転んだままだから余裕だけど……視線に高さがつくと落ちそうで想像以上に怖い!
ただでさえヨツンヴァインしている手足が震えてるのに、恐怖心がさらに震えを加速させてるみたいで立ってられない。
震えに負けて手足をゆっくり崩して寝そべる。
途端にくる安心感にほっと一息。
ぐぬぬぬぬー……ハイハイぐらい余裕だと思ったのにぃいいい。
生前のリハビリ訓練でも、手足を動かす運動の一環としてヨツンヴァインからのハイハイをさせてもらったことがある。
だから動かし方はわかるから、絶対すぐできると思っていた……
けどアレは、誰かが身体を支えてくれてるっていう安心感があった。
けど今回はソレがない。
全部自力でやらんといけないのだ。
地面は泥。
別に転んだってたいして痛くはないっぽい。
高さだって、せいぜい数十センチだ。
だけど……想像以上に踏み出すのが怖かった。
………うぬぬぬぅ……けど、ハイハイでビビってたら二足歩行なんて……夢のまた夢だっ。
そもそも、やらないと……絶対生き残れない……
ハイハイが怖くて人生あきらめました。
なんて恥ずかしくて死んでも死にきれないわっ!!
無理やりやる気を引き起こして再びヨツンヴァインの姿勢へ。
今度は滑ることなくスムーズになることができた。
……あとは一歩踏み出すだけ……できる。大丈夫……やらなきゃダメなんだから……
高鳴る心臓。
何度か深呼吸をしたあと、ゆっくり……少しずつ右手を前にずらしていく。
そのたびにバランスが崩れて落下する恐怖に襲われるけれど、大丈夫大丈夫やればできるできる気持ちの問題だ頑張れ頑張れ……と、心の中でファイヤーマンの応援を連呼。
こけないようにバランスを取っていると、自然に左足も前に出てきて……よしっ!
このままぐっと体を前へっッ!!
…………う、動けたっ!?とととっとと!!
前へコケそうになり慌てて左手を前に出して体を止めようとする、そうすると自然に右足も動いて……
私は前へ進んでいた。
う、うおおおおっしゃあああああああ! でーーきたぁぁぁあああああ!!!
身体が前につんのめらないように手足を動かすとぐんぐん体が前に動く。
ぐんぐん体が前に動いて…動いて………って、どやって止まるのこれ!!?
ごしゃっあっ!!! と前方にあった木の幹に顔面をぶつけて停止……
…………痛い…けど…進めたからいっか……ぐふっ。
ハイハイマスターまではまだ少し時間がかかりそうだけど……。
とりあえず一歩前進。
座りこんでぶつけた顔をさすりながら、口元がうれしそうに笑っている気がした。
一度動いてしまえば、不思議と恐怖心が薄れていって……むしろ楽しくなってきて一日中動いていたら、いつのまにか曲がったりUターンもできるようになっている私がいた。
さすがは私である。
いつの間にかあたりも暗くなり、お腹もすいたけれど、今日はもう疲れたから寝ることにする。
……寝てる間に襲われませんよーに……
不安はあったけれど、睡魔には勝てず……ぐっすり寝た。
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