第4話 超能力と異能力

 地面にその巨体を埋めていた生物狩りインダスは突然の出来事に動揺を隠せなかった。


 久々に地に這いつくばった屈辱を噛み締めつつその疑問を解消すべく、のっそりと起き上がりドスの効いた声で問いただす。



「小僧、先ほど冥土に送ってやったはずだが?」


「いやぁ、オレもうっかりしててさ。『異能力本気』出すの忘れてたわ」


「異能力……だと」



 異能力。世界12箇所にある巨大コンピューターによって一括管理されている超能力とは全く異なる性質を持つ能力。


 その多くは世の中の物理法則すらも無視しており、未だに発現条件が不確定であるため一種の病気として扱われているのだが……



「やっぱ医者に聞くより経験を積んだ方がいいな、コレ」


「小僧、お前は自分の異能力を制御できると言うのか?」


「いや、完全開放って訳じゃないけど。でもある程度のコツは掴んでるぜ」



 会話をしながらも起き上がり、臨戦態勢を取り始めた生物狩りを見て唯斗も改めて拳を握り直す。


 口元からしたたり落ちる血液で作った水たまりの上で軽くステップを踏む。



「「いやああああああああっ」」



 両者の咆哮が、気合いが、拳がぶつかる。


 丸太に小枝をぶつけたような構図だったがその軍配は小枝の方に上がった。


 丸太は小枝にぶつかった瞬間にその動きを止め、小枝の進行方向。遥か後方に弾き飛ばされていた。



「ぐああああああああああああっ」



 生物狩りは自慢の片腕をひしゃげさせながらバランスを崩し、広大で近代的な街の広がるガードレール下に転げ落ちてゆく。



「……っしゃあ…………なんとか勝てたか」



 勝利の雄叫びならぬ呟きを残した唯斗は、膝を折りその場に倒れ伏す。


 夜の帳は未だ上がらず。


 されども、はじめの不気味な静寂を静謐せいひつに書き換えた此度の小さな英雄、薬袋唯斗は満足げに笑みを浮かべて深い眠りへと落ちていった。




 薬袋唯斗 16歳

 ・超能力名『粒子視認マイクロウォッチャー

 ・異能力名『独立領域』\発現条件『瀕死の重症』

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