出会い 2

 人混みを何とか乗り越え下足にたどり着いた私は、急いで自分のロッカーを探した。

 この学校の下足はロッカー式になっている。小学校などで見られるような木で出来た靴がむき出しになっているものではなく、ちゃんと一つ一つに扉がついていて、ご丁寧なことに開かないようにと暗証番号のつけられるダイアル式の鍵までついている。

 中に教科書などを入れて、いわゆる置き勉をしている生徒が大半だったりと、その見た目通り使い勝手はかなり良い。どちらかと言われれば、私は学校に教科書は置いて帰らないタイプだ。それ故持って来なければならない曜日は、カバンが嘘みたいに重くなり肩が痛くなり、苦労することが多々である。おまけに忘れ物をしたら友達に借りに行かなければならないし、最悪の場合、教科の先生に怒られる始末。

 そういう時に、いつも学校に教科書を置いて帰っている人が羨ましくなったりする。なんて言ったって下足まで降りれば忘れ物をしても取りに行けるのだから。

 だがそれでも私は置き勉をするつもりはない。そんな私はきっとバカ真面目とでも呼ばれるカテゴリにでも区別されるのだろう。

 そんなどうでもいいことを考えながらロッカーを開いて、外靴から上靴へと履き替える。

 おっと、これ以上怜奈を待たせるわけにはいかない。

 そう思い立ち上がり、教室へと続く廊下へ出ようとした際に、見知らぬ男子生徒に勢いよくぶつかってしまった。

 少しよろめきはしたが、先程の突進に比べれば全く大したことはない。

 体勢を戻してぶつかった相手を見やる。だが私はその後視線を逸らせて急いで怜奈の待つ廊下へと走った。

「ご…ごめんなさい!!」

 男子生徒に背中を向けて走ると、ようやく怜奈の姿が見えた。遅い!と言わんばかりに私に手を振りかけてくる。

「遅かったね?なかなか見つけられなかった?」

「まあ、そんなところかな」

「なら良かった。もう朝から足疲れたし、早く教室入ってのんびりしようよ」

「そうだね」

 私たち新二年生は本校舎の三階に教室が並べられてある。上は一年生、下は三年生の教室がある。

 教室に入ると既に座って喋っている生徒が何人もいた。私と同じように廊下が渋滞を起こす前にと、予め早く登校していたのだろう。黒板に掲示された新しい座席表を二人で眺める。

 見覚えのある名前や、初めて見る名前がずらりと書かれていた。

 私は一番廊下に近い列の一番後ろで、怜奈は教卓を正面から見て、左隣の一番前、つまり教卓の左隣の座席だった。

 自分の座席に着くと、あからさまに私を羨む顔で睨みつけてきた。確かに先生がすぐ側で授業をするというのは、少し居心地悪い感覚があるのは否めない。

 怜奈の周りは男子ばかりだったが、怜奈は割と誰とでも仲が良く話せるので、その点に関しては不満はなさそうだった。

 一方私は、周りは女子しかいない。更にそれらは学年の中心と言っても過言ではない立ち位置にいる。私は特に目立つわけでもなく大人しい性格をしているので、正直苦手な配置だ。別に嫌いとかいうことではないのだけれど、なんとなく話しかけづらいので苦手ということなのだ。だけど先生と会話する機会は怜奈に比べれば少ない。そう思うと多少ではあるが気が楽になった。

 するとある程度整理を終わらせた怜奈がこちらの状況を察してくれて、わざわざ私の席まで話しかけに来てくれた。


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