第八章 発覚5
ユンバイさんの屋敷を捜索した結果、そこで丞相との繋がりが次々に発見された。丞相は解任、投獄され、裁きを待つ身となった。
その丞相が国のお金を横領し、私物化していた事件は、すぐに大きな波紋となって国中に伝わっていった。
そして、新たな丞相として、リューフォンさんが就任した。
リューフォンさんは丞相就任後、ただちに行動を開始した。各地に査察団を派遣し、そこの役人が不正が行っていないかどうか、厳しく取り締まるよう命じた。
また、今回の件で丞相の不正に関わったものたちには厳しい処分がくだされ、王宮にはびこっていた悪しき膿は、すごい勢いで一掃されていった。
そんな喜ばしい情報を伝え聞き、わたしは嬉しかったが、それでわたしの心にかかった暗いもやが消え去ることはなかった。
「フェイロン……」
心に浮かんでくるのは、最後に見たフェイロンの疲れたような笑顔ばかり。
彼の今後のことを考えると、わたしはどうしようもなく不安だった。
宮中で私的に人を殺めることはあってはならないことだ。その罪は重く、今までの事例ではほとんどの事件で、下手人側に死罪か終身刑が適用されてきたらしい。
その話を聞いたわたしは、それこそ卒倒しそうになった。
どうにか彼を助けてあげたい。
彼を逃してあげたい。
わたしはそんな思いにかられながら、部屋で悶々とした時を過ごした。
そして夜になり、リーシンがわたしの元へとやってくると、飛びつくように彼に懇願した。
「お願い! フェイロンを助けて! 彼を殺さないであげて!」
わたしの必死の懇願に、リーシンは困ったような表情を浮かべていた。
「お前の気持ちはわかるが、あいつの罪を許せば、この国の法の力を弱めることにも繋がる。罪は罪としてきちんと裁かなければならんのだ」
「だけど、フェイロンは親の仇を討ったと言ったわ。そこに情状酌量の余地はないの?」
「それは考慮の余地はあるかもしれんが、それで刑がそれほど軽くなるとは思えん。よくても長い獄中生活が待っているだろうな」
「そんな……」
「まあ、おれもやつのことを不憫に思わなくもない。親を殺された恨みは深かっただろう。仇を討ちたいと思うのも無理はない。だが、昔年の恨みを晴らした結果、自分が不幸になってしまってはなにも浮かばれん。それに、元を正せばそんな役人の横暴を許した国のあり方に問題があったのだ。……その責任の一端はおれにもあるのかもしれん」
そう言ったリーシンの瞳には、静かなる怒りの炎のようなものが燃えて見えた。それは行き場のない怒りを、彼自身の内に溜め込んでいるかのようだった。
「まあ、おれもできるだけのことはしてみよう。……お前を悲しませたくはないからな」
彼のその言葉に、わたしは複雑な思いを抱いていた。
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