第8話:一つ終わればまた別の問題が

 「ゴーレム、ですか?」


 俺こと常葉の言葉に首を傾げるエルフの族長さん達。

 どうも話が噛み合わないような?


 「その、ゴーレムとかいうのはどういうものなのでしょうか?」 

 

 そう尋ねてくるので説明した所驚かれた。

 どうも、こちらの世界ではゴーレムに相当する代物がないらしい!いや、ゴーレムって言葉自体は俺達の世界の言葉だからないって可能性はあったけど、まさかゴーレムに相当する自動で動くもの自体がないと言われるのはさすがに想定外だった。


 「あってもおかしくないと思ったのですが」

 「いや……考えてみたら当然かもしれん」


 俺のぼやきに答えたのはティグレさんだった。

 どういう事かと周囲の視線が向く中、ティグレさんが言うには。


 「まず忘れちゃいけないのが自己判断だな」


 周囲の状況、森だったり平地だったり或いは沼地だったり。それぞれの場所ごとに移動方法や移動速度は異なる。

 それを自己判断しながら突破していくのもあるし、或いは敵味方の識別だってそうだ。

 どういう相手を攻撃し、どういう相手を攻撃しないのか?

 敵味方識別装置なんてものもあるが、ではそれを奪われたらどうするのか?そもそもそういうものは作れるのか?

 

 またそうかと思えば、命令系統だってある。

 どこまで自己判断させるのか。

 いちいち指示を出すなら、どうやって指示を出すのか。

 敵軍の真っ只中に突撃させた連中に大声で指示出した所で聞こえはしないだろう。


 「という訳で、ゴーレムと一口に言うが一体一体に人並みの自己判断能力がないと色々厳しい訳だな」

 「そうか、ゲームとは違いますよね……」


 ゲーム『ワールドネイション』の中でなら違った。

 戦うのは自分と相手、敵か味方の二勢力だけで指示にした所でウィンドウを開いて、指示を出せば良かった。

 移動にしたって沼地などに入れば移動にペナルティといった状態で示され、隊列が乱れたりする事もない。

 けど、現実では訓練された軍人さん達であっても、同士討ちの危険性は常にあるし、起こる。移動にしても一人の乱れが全体に波及しかねない。指示にしたって、今は無線で各自が通信を受ける事が出来るがそれが妨害されたり、敵地へ潜入したりしていて下手に無線で指示を受けたりする事が出来なければ?

 

 「おそらくそうした高度な自己判断が可能なゴーレムって奴が作れなかったんだろうな」

 「なるほど、もしくは作れたとしても高すぎたとかですかね?」

 「それはあるかもな」


 もし、作れたとしても一台作るのに馬鹿高い費用がかかっていたら誰も主力になんてしないだろう。

 人を鍛えて兵士にした方が遥かに安上がりなら、そっちを選ぶのは当然だ。

 待てよ、そうすると……。


 「俺の作るゴーレムってその辺どうなるんでしょう?」

 「そうだよなあ……」


 ティグレさんも分からないらしく、どこか困ったような表情になってる。

 虎の顔じゃあるけど、猫さんにも表情豊かな猫さんもいれば割と顔に出ない猫さんがいるようにティグレさんの顔は結構表情豊かな部類だと思う。


 「まあ、やってみるしかないんじゃね?」

 「ですね」


 ちなみにこの間、カノン以下四名はずっと沈黙していた。

 紅とユウナは直前に常葉が用意した様々な森の恵みである果物にかぶりついていたし、咲夜とマリアは下手に自分達が口を出さない方がいいと判断して黙ってお茶をすすっていた。このお茶も事前に常葉が用意したものだったが、植物関連なら何でもありなその便利さに本当に有難がられたものだ。

 そしてカノンは。

 彼が黙っているのは別の理由があったからだが、それはまた次回にて。

  


 

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