第2話 新たな人生
混ざる。混ざる。
混濁と沈みかけた意思は引き戻され、異質な何かが私の意識と同化するように混ざり合う。
ぐちゃぐちゃ、ぐちゅぐちゅ、ぐにゃぐにゃ。
目も見えない。口で言えない。耳が音を拾わない。臭いがわからない。全ての感覚がない。
安心感。……なのだろう。ぬるま湯に浸かり身体を預ける感じに近い。
不意に私でない何かが完全に繋がった。
『ふぃ~。調整完了♪ き、こ、え、て、ますか~』
身体中に響く元気な女の子のような声。
と、言われても喋れないし……
『あ、大丈夫みたいです♪ 頭の中で話すイメージでお願いしまぁ』
え、お、うん。……あの、ここは何処であなたは誰ですか?
『ワタシはスライム妖精の亜種族件魔王様の遊び友達のティといいますよ♪ お見知り~、で、ここは……う~ん。準備部屋かな?』
準備部屋……。
『そんなことより。おめでとう。新たな人生だよ♪』
見えないはずなのに女の子が両手をあげてはしゃいでいるのが見えた気がする。そんな女の子が色んな雑誌を広げた。
イメージで言うと黒い画面にいきなり大量の雑誌が……それも現世で言うロリータファッションを中心にした雑誌が展開する。何故か見える。
それとは別に可愛らしい女の子、長い黒髪にたれ目で愛想のいい笑顔。貫頭衣を着ていて両手をブンブンとふっている。振る反動で背中の透明な羽が小さく揺れる。
『姿はワタシが作ったから可愛く着飾って。ワタシ達の冒険を始めよ♪ ゲームでいうあれだよぉキャラ設定。よろ~』
……なんでロリータファッション?
『可愛いじゃん。ねー』
女の子のキャラが腰を前に軽く前にだし、両手を後ろに回している。カワイイ。
これはなんなの、て、これじゃ伝わらないね。
すると女の子はその場をくるりと回る。
『ワタシ達だよ。可愛いでしょ。造るのに何時間考えたことか。だが、悔いはない!!』
右手を握りこぶしにする少女。
カワイイ(思考停止)
私はロリータファッションを眺め少女に白を基準にコーディネートした。
すると意識が少女にうつる。
生前と違う姿に自己嫌悪になると思ったけど、どうやら私はどうとも思わなかった。
『さぁ、魔王様に会いに行こう♪』
私は人を辞めたらしい。そんなことを考えながらなぜか前にある大層立派な扉を開いた。
魔王の勇者 林 木森(はやし きもり) @Saharasan
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