終章 阪城公大
阪城公大 ①
最初から違和感はあったのだ。
彼女からルーズリーフを受け取った時も。
彼女が素直に悩みを打ち明けてくれた時も。
彼女に旧知の間柄のように名前で呼ばれた時も。
出会って間もないのに、彼女は俺に
気さくで誰とでもすぐに打ち解けられる、社交性に長けた女だと思っていた。それは事実なのだろう。だが、いくら人付き合いが良くても、俺と彼女の距離が縮まるのはあまりにも早すぎた。加えて、誰の目から見ても綺麗な容貌で、性格に何ら歪みのない彼女が、俺のような冴えない男に妙にこだわる理由が不明瞭だった。学もなく、口下手で、夢や目標もなければ、富も財もない俺と、友人関係を築くメリットなど何もないのに。
一歩引いてみれば、彼女の異様さに気づけたはずだ。しかし、彼女の無垢な笑顔にすっかり陶酔し、懐疑を怠った。
これまで深く考えないようにしてきた彼女の違和感の正体は、『呪い』の二文字である程度納得できた。俺と彼女のとの間に、何らかの因縁があったのだ。
ここではっきりさせよう。もう、理不尽な不幸に遭わないために。
そして、彼女が俺に抱いている不可解な想いを解消するために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます