第15話 紐の長さは寿命の長さ 前編
「兄貴、馬車がきましたぜ」
「おう」
おれは足元に置いていた荷物を担ぎ、乗るべきそいつが目の前でとまるのを待つ。
おれたちは四人組の冒険者パーティーだ。
このドルグ・ゴルドレッドをリーダーに、ギジェルモ・キンテロ、サルバ・シドレ、ディエン・ランドンの四人。
全員肉体派でまともな魔法は誰も使えねえが、たいした問題じゃねえ。足りねえ分はその都度現地調達するか他のパーティーと組みゃあいいんだからな。
パーティー名は、ゴールドレッド団。
イカすだろ?
おれの名であるゴルドレッドのゴルドをゴールドと呼んで金と赤、誇り高さの金と激しさの象徴である赤をパーティー名にするというまったくおれらしいハイセンスな命名だぜ! もちろん隊章も金と赤で全員鎧に貼りつけてる。
このパーティーを結成してからはまだ四年だが、冒険者なんてのは三年生き延びて一人前、十年続けば大ベテランっていわれるくらいだからな、今年で十六年目になるおれはもう、自分でいうのもなんだが英雄の域に達しちまってるな! ワハハ!
そんな大ベテランパーティーであるおれたちが次に向かう場所は、シュデッタ王国トヴァイアス伯爵領バリザード。
最近なにかと噂のあの町だ。
今までいた国に飽きて拠点を移そうと東へ移動してるときにちょうどその噂を聞いたため、かなり早く現地入りできそうだ。新興都市や新発見のラビリンスなんてのはどれだけ早く手をつけて他のやつらと差をつけるかがその後の活動に大きく影響するからな、実力だけじゃなく運までいいってのはやはり、おれは天に愛されてる証拠だぜ……!
次なる冒険を想像して胸の内を熱くしていると、バリザード行きの乗合馬車が目の前で停止した。
重種馬二頭立てで簡易的だがちゃんと屋根のついた十二人乗りの箱馬車か。こんな田舎町にしちゃあなかなかやるな。三十分ごとに二台ずつ走ってるというが、まだまだこれから増えていくんだろう。
なんせラビリンスをエサに冒険者を呼び込んでんだ。それに、中心となってるのがあの悪名高きバリザード、しかも商工会をブッ潰して新しい方針で町を栄えさせようってことらしいから、時間が経てば経つほどこの乗合馬車は大賑わいを見せることだろうな。
ぶっちゃけ、おれらは馬車なんかに頼らず歩いてったほうが早いんだが、今まで乗合馬車なんて乗る機会がなかったし、それにバリザードまで一人たったの二ゼノっつうから一度試してみようと子分どもから提案されたわけだ。
おれらの他にも待ってる客は何人かいる。しかしここまで歩いてきてわかったがバリザードの西のほうはあまり栄えてないから東や南ほどの需要はないんだろうな。
おれたち四人は到着した一台目の馬車に荷物を担いで乗り込んだ。
全員この一台に収まるってのに、他の客どもは二台目のほうに乗りやがった。
まあそうだろうよ。どこに行っても武器をもった汚ねえ冒険者と進んで乗り合わせようなんて思うやつはいねえだろう。お陰でこっちは十二人乗りを四人で貸し切れるから、むしろありがたいこった。
「あんたがた、冒険者だね」
乗り込んですぐ御者のじいさんがそういってきた。
「見てのとおりだ」
「ないとは思うが、なんかあったときはお願いしますよ」
「おう、任せとけ」
護衛のない馬車が冒険者を乗せた場合、有事の際にはそいつが護衛となって戦うのがどこでも常識となってるからな。
「料金は先払いか?」
「いえ、降りるときで構いませんよ。そのときそこの箱にお願いしますわ」
「そうか」
「冒険者ってことはバリザードでしょう。泊まるなら
「そういやこの馬車に看板がついてたな」
「商売熱心な人たちなんで。それじゃ、出発しますぜ」
御者の合図で馬が歩き出した。
血塗れ乙女亭……ああ、聞いてるさ。
仕切ってた商工会を皆殺しにして叩き潰し、新たな支配者となったヤバい連中だってな。なんでもヴァンパイアをも従えてこのへんの裏社会勢力すべてを敵に回して暴れ回ったとか……
へへッ、面白いじゃねえか。
そんなヤベえ町に未踏破のほぼ新品ラビリンスつき……
これで燃えねえのは冒険者じゃねえ!
バリザードでもおれたちの名を轟かせてやるぜ。
このおれ、ドルグ・ゴルドレッドとゴールドレッド団の名をな!
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